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2010/04/15

オーケストラ!

冒頭から驚いた。フランス映画だと聞いていたのに、響いてくるのはロシア語じゃないか・・・?僕はどう間違ってロシア映画を観に来てしまたんだろう。。。

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いや、フランス映画で正しかったのだ。前半の舞台がロシアなだけ。ソ連時代に天才指揮者として名を誇ったアンドレイは、とある事件をきっかけにその座から引きずり降ろされ、いまや劇場の清掃人となっていた。今日も大ホールのリハーサル風景を遠くから臨み、あの頃を思い出して手を左右に漂わせる。

そんな彼に千載一遇のチャンスが到来。たまたま清掃中だった部屋のFAXが一枚の文書を吐き出したのだ。それは劇場専属オーケストラへの出演依頼。それも公演地はフランス・パリ。アンドレイはすぐさまその文書を持って逃走し、かつての仲間たちを前に驚きの構想をぶち上げる。「もうこんな生活は耐えられない。俺たちで楽団をつくり、乗り込もう!」

かくしてアンドレイの挑戦は、散り散りになったかつての楽団員ひとりひとりの消息を尋ねるところから始まる。いまや様々な職に就いて何とか生き延びている彼ら。タクシー運転手や党の幹部、ユダヤ系の商人、ポルノ映画の音響担当までいる。ほかにも資金集めにギャングや企業家などを引き込み、寄せ集めオーケストラは瞬く間に個性であふれかえる。この展開、どこかで見覚えがあるなと、ふと思い至ったのが、『七人の侍』だった。ジャンルは全く違うが、負け組の逆襲といい、仲間集めといい、骨格となる部分は大いに共通する。ひとつ違うのは彼らは刀でなく楽器で、ハートで聴衆をぶった切るところか。

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まあ、そんなこんなで、ようやく後半、パリへ!ここでもいろいろと問題がてんこ盛りで、楽団員があまりにむちゃくちゃなので、さきほどの『七人の侍』的な惹きの良さも薄れてしまうのだが(いや、それでこそのオリジナリティなのだ)、ここで登場する重要人物こそ、ソロ・バイオリン奏者アンヌ=マリー。

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いつも映画を観る前は資料を読まないので、「どこかで観た覚えが・・・」などと思ってたら、ああ、メラニー・ロランではないか。前作とあまりに違うので驚いた。彼女はフランス国立管弦楽団のヴァイオリン奏者のもとで3ヶ月間の訓練を経てこの役に挑んだという。

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もちろん、この『イングロリアス・バスターズ』の画像のバックで流れていたような、デヴィッド・ボウイは流れない。ラストを飾るのはチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.35」だ。それも12分間の(映画としては異例ともいえる長めの)短縮バージョンとして、これが見事にアレンジされている。かつてエド・ハリスがタイトル・ロールを演じた『敬愛なるベートーヴェン』では交響曲第9番「合唱」付きの初演が8分間に短縮され、これもなかなか見ごたえがあったが、本作もそれに負けないほどの感情のうねりと回想とプロローグさえも盛り込んで、クラシック・ファンの心をつかむ演奏シーンに仕上がっている。

でも、何よりもうれしいのは、エンターテインメントの骨格として、どんな政治体制に翻弄されようとも決して挫けない、崇高な芸術家魂を迸らせていることだ。それらは綺麗ごとではなく、なりふり構わず、ただひたすらにがむしゃらなもの。どのキャラクターもそうやって真剣に生きているからこそ、観客はその姿に思わず笑ってしまうのだろう。人を本当に笑わせることの根底には大きな感動こそ必要なのだと、改めて教えられた。

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