« SRサイタマノラッパー2 | トップページ | ハート・ロッカー再訪 »

2010/04/03

月に囚われた男

10年とは言わない。ものの数年後、本当にありえそうな未来―。

Moonfilmposterduncanjonessamrockw_2
地球の資源がとっくに枯渇した時代、月に埋蔵されるエネルギー源をめぐり、ひとつの企業が大規模な採掘事業に着手する。
そして数年後、いまや作業は機械化され、月に滞在する現場の人間はたったひとり。順調に思えたその孤独な単身赴任だったが、3年の任期切れまであとわずかという頃、思わぬ事態が彼の周囲を覆い始める。。。

英国では「09年最大の収穫」とも謳われた異色のSFミステリー。監督のダンカン・ジョーンズに関して「デヴィッド・ボウイの息子」という肩書が必要なのはもはや日本くらいなものかもしれない。

アメリカのSF映画に比べ、イギリスのそれらは製作費の少なさから観客の目線をそらすかのように、妙に哲学的になったり、宇宙船内を真っ白に染め上げて細部の粗を飛ばしたり、逆にどーでもいいところにリアリティを持たせたりする。キューブリックの『2001年 宇宙の旅』などはその典型だが、つまりはこの国にはそんな独自の陣地戦でもって特異なSFジャンルを開拓してきた歴史がある。

しかしそれにしても静かだ。このSFは静謐すぎる。なにしろ主なキャストがサム・ロックウェルただひとり。MoonあとはHAL2000を想わせるロボットが登場(ケヴィン・スペイシーが声を担当している)。思わぬ助演男優ぶりを発揮する。

シンプルなんだけどストイックに未来を見据えた斬新なストーリーラインが魅せる。サム・ロックウェルのシュールなひとり芝居は痛々しいやら、哀しいやら。いくつもの伝説的SF作品へリスペクトを捧げたディテールの凝り方も楽しい。それにミニチュアとCGを絶妙に融合させた月面でのメカニカル・シークエンスは、現実と虚構のちょうど中間域の、可愛らしいミニカーがひた走るような感覚が目を楽しませる。

おそらく本作のタイトルでレビューを検索したところで、物語の核心に迫っているものはほとんど見つからないはずだ。この映画の魅力に憑りつかれると、中盤くらいで明らかになる謎について誰もが口を閉ざし、まだ観ぬ人々へ「知りすぎない方がよい」と告げずにいられない。それが本作を賞賛する最良の方法に思えてしまうのだ。

ちなみに本作の原題は"Moon"。邦題の『月に囚われた男』には、監督の父デヴィッド・ボウイの主演作『地球に落ちてきた男』へのオマージュの意味が込められています。

↓この記事が参考になったらクリックをお願いします



TOP】【レビュー】【TWITTER

|

« SRサイタマノラッパー2 | トップページ | ハート・ロッカー再訪 »

【地域:英国発】」カテゴリの記事

【宇宙で逢いましょう】」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/137483/47976461

この記事へのトラックバック一覧です: 月に囚われた男:

« SRサイタマノラッパー2 | トップページ | ハート・ロッカー再訪 »