« 2010年4月 | トップページ | 2010年6月 »

2010/05/31

イージー・ライダー

映画の新しい時代は、轟音と共に始まった。

Easyrider_5
冒頭、何機もの旅客機が男たちの頭上を越えていく。その耳をつんざくエンジン音はまるでギターのチューニングのようで、事を成し終えた彼らがようやくバイクにまたがって走り出すと同時に、ステッペン・ウルフの"Born to be Wild"が雄々しくもその映画のタイトルを告げる(既存の曲を劇中で使用したのは本作が最初期と言われている)。

ストーリーは単純だ。メキシコで手に入れた最高のコカインを密輸入して大金をせしめた男たちがアメリカ大陸を西から東へと横断して謝肉祭をめざす。その途上で出逢う人々はさながら“時代”の代弁者たちだ。ヒッピーの集落、田舎町のカーニバル、マリファナをふかしながらの焚き火、自由の意義、人々の視線、そして恐怖と怒り。景色はめくるめく変貌を遂げる。赤茶けた荒野は少しずつ緑を獲得し、徐々に水分(潤い)を宿し、流れる楽曲は抒情性を増していく。

60~70年代のアメリカン・ニュー・シネマの台頭において、カメラは据え置かれることを望まず、むしろ煮えたぎる感情に自ら肉薄することを求めた。この国の時代性を、そして隠された真実を率先して剥きだそうと試みた。何の因果か、その中心に、ピーター・フォンダ(製作・主演・脚本)と、数々のコカイン騒動でダメージを受け映画業界を引退しようとしていたデニス・ホッパー(監督・主演・脚本)が居た。途中で思わせぶりな登場を果たすジャック・ニコルソンの姿があった(彼のキャラクターもまた最高なのだ)。そしてクスリ漬けで収拾がつかない現場に愛想を尽かし去っていく人々も大勢いた。まさかこれが世紀の大傑作として歴史に名を残すことになるなんて誰が想像しただろう。

Easyrider_4
かつてインディアンとカウボーイが死闘を繰り広げたという荒野を、2台のバイクがひた走る。アクセルとブレーキの切り替えみたく次々と視点の切り替わる編集が独特のリズムを刻みだす。ときおり陽光がカメラに乱反射し、神々しいまでの輝きにふたりの姿が呑みこまれる。また時として、映画が必要以上に前のめって、次のシーンが慌ただしく迫り出してくることがある。まるで付与された“未来”が、現在に向かってルール無用の乱入を繰り返すかのようだ。

これらの手法は公開から40年以上経った今なお観る者を惹きこむ。というより、僕には彼らが、『アバター』とは全く違うやり方で同時代性を浮き彫り(立体化)にしようと模索していたように思えてならない。

デニス・ホッパーが死した翌日、この映画を観ながら幾たびも武者震いに襲われた。そしてクライマックスのとんでもない幕切れには、それが何度めの観賞であったにせよ、必ずと言っていいほど打ちのめされる。どんどん上昇していく魂のごときカメラワークが指し示すものは、果たして昇天か?それともグッド・トリップか?でもこの日ばかりはデニス・ホッパーの冥福を祈らずにいられなかった。

ただし劇中では「神なんて嫌いだぜ!」なんてセリフも登場するのだけれど。

この記事が参考になったらクリックをお願いします。

デニス・ホッパーによる音声解説&メイキング映像付き。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

全米興行成績May28-30

先週までの復習は各自こちらで行ってください。

【May.28-30 weekend 推計

01 Shrek Forever After (→)
02 Sex and the City 2
(-)
03 Prince of Percia: The Sands of Time (-)
04 Iron Man 2 (↓)
05 Robin Hood (↓)
06 Letters to Juliet (↓)
07 Just Wright (↓)
08 Date Night (↓)
09 MacGruber (↓)
10 How to Train Your Dragon (↓)

■5月の最終月曜日といえば、アメリカはメモリアル・デイ(戦没兵追悼の日)。この週末に当て込んで、木曜より封切られたのが『セックス・アンド・ザ・シティ2』だ。製作費も前作の6500万ドルから1億ドルへと大幅アップ。観客の90パーセントが女性という本作の週末興収は金土日の3日間で3210万ドル、初日を含めた4日間では4630万ドル。これは3日間で5680万ドルを売り上げた前作(トータルでは1億5260万ドル)に比べるとかなり物足りない結果だ。

■というわけで、SATC2は初登場2位となった。代わりに首位を飾ったのは、先週に引き続き"Shrek Forever After"。前週の39%落ちの4330万ドルを計上し、累計を1億3310万ドルとした。

■3位には『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』(拙ブログのレビューはこちらをご覧ください)。推計興収は3020万ドル。最近のSFアクション大作のなかでは結構センス良く撮られていて、『グラディエーター』と『パイレーツ・オブ・カリビアン』のごった煮のようなデジャブ感の多さ(弱点)も含めて、僕は意外と好きでした。さて、製作費2億ドルを回収できるか?

■4週目の『アイアンマン2』(拙ブログのレビューはこちら)は興収1600万ドルと勢いを削ぎ、累計を2億7460万ドルとした。3週目の『ロビンフッド』は1030万ドルを売り上げ、累計は8300万ドル。どちらも製作費は2億ドルと言われている。

■なお、圏外では『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネの最新作『ミックマック』が4館で公開。アベレージは12,000ドルを越えており、『シュレック』『SATC2』のアベレージが9000ドル台であることからも、この数字の高さ=劇場の賑わいぶりが伺える。日本では9月公開。

この記事が参考になったらクリックをお願いします。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/28

ぼくのエリ/200歳の少女

昨年、イギリスで観て衝撃を受けた北欧ホラー。まったく、こんな映画と出逢ってしまうと、他の凡庸な映画群が陳腐に思えてくるから困る。海外の批評家にはこの作品を年間のNO.1に挙げる人も少なくない。そのレビューも「衝撃的。そしてなおかつ、心をえぐられる繊細さに満ちている」という点で共通している。

Lettherightonein_2 
原作はヨン・アイヴィデ・リングヴィスト著「モールス」(←リンクは拙ブログのBOOKレビューに飛びます)。彼は今回、自らの手で本作の脚本をも手がけている。

この映画の新しさは、まずその主人公が12歳の男の子というところにある。学校でいじめられ、両親は離婚。やり場のない感情を、彼は孤独にナイフを木に突き立てることで紛らわせる。そしてふと人の気配に気付く。後ろのジャングルジムに女の子が立っている。「エリ」と名乗る彼女の正体は、ヴァンパイアだった。。。

スウェーデンの真っ白な雪景色の中に血しぶきが飛ぶ。時おり目を覆いたくなるような残酷な描写も登場する。しかしすべては12歳という繊細な年頃に寄り添い、一貫して狂おしいまでの美しさに満ちている。まさにダーク・ファンタジーと初恋メロディの合わせ技。そこにやはり、雪に閉ざされた空間がもたらす北欧独自の人間性が色濃く刻まれている。

Let_the_right_one_in_2
原題は"Let the Right One In"(正しき者を招き入れなさい)。すでに大詰めを迎えているハリウッド・リメイクのタイトルは"Let Me In"。『クローバー・フィールド』のマット・リーヴスが監督を務めており、オリジナルで“パパ”と呼ばれる人物を、リメイク版では『扉をたたく人』のリチャード・ジェンキンスが演じている。これは非常に面白いキャスティング。シンプルな物語を重層的に膨らませる重要な役だけに、彼のアプローチが楽しみだ。

日本では7月公開。これは見逃さない方がいい。

この記事が参考になりましたらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/27

高慢と偏見とゾンビ(BOOK)

ナタリー・ポートマンが製作・主演を務め、『スリー・キングス』『ハッカビーズ』のデヴィッド・O・ラッセルが監督を務める形で映画化が進みはじめた本作。
Pride_and_prejudice_and__zonbies_2
マッシュアップ小説というのだそうだ。あるいはハイブリッド小説とも。

要は、ヒップホップ音楽などでよくみられる「オリジナル楽曲をそのまま用いた上に、新しいフレーバーをまぶす」手法を、かの有名なジェーン・オースティンの名著「高慢と偏見」の頭上にも炸裂させてやりました、的な暴挙に出てしまったわけだ、この著者セス・グレアム・スミスという男はっ!

言うまでもなく原作の著作権は既にフリー。つまり、私もあなたもグレアムにも、この題材を自由にいじくって遊ぶ権利がある。あとがきによると、本作は約8割を原文のまま使用し、そこに「ゾンビ」のフレーバーをまぶして出来上がったという。舞台は18世紀、英国の田舎町。その全土は奇病の恐怖にさらされていた。それにひとたび感染すると、次第に身体が腐敗し、生きた屍となって人間の生血を求め彷徨い歩くようになる。そして今日も、その病原体を保持したゾンビ軍団が集団となってダンスパーティーを襲う・・・。

そこで敢然と立ち向かうのが、ベネット家の5人姉妹だ。父の教育方針で、中国の山奥でかの高名な少林派のペイ・リュウ師匠の厳しい訓練に耐え、いまやすっかり男顔負けのストイックなゾンビハンターとなった彼女たちが、いとも簡単に屍どもを撃退する。そんな中、次女エリザベスは、高慢な紳士にして戦士ミスター・ダーシーに惹かれていることを意識しはじめ。。。そのような精神的な弱さに直面するたびに、己の身体に不名誉の七つの傷を刻み、その血を滴らせる始末。

とにかく、意図はからきし分からんが、男尊女卑の世の中で彼女らは乙女として甲斐甲斐しく振舞いながらも、一方で残虐極まりないなほど最強なのである。この一つの身体にアンビバレントな性質を持ち合わせたキャラクターたちが、恋にも、武術にも、生き生きと青春街道をひた走る。

ちなみに先日、セス・グレアム・スミスの新しい著書が発売されたのだが、そのタイトルは"Abraham Lincoln:Vampire Hunter"。タイトルがすべてを言い表しているが、つまりはリンカーンが政治を司りつつも、ヴァンパイア退治に奔走する、という。そしてこれが店頭に並ぶよりも早くも「ティム・バートン&ティムール・ベクマンベトフが映画化権を取得」というニュースが報じられた。アニメーション映画『9<ナイン>』でもコンビを組んだ彼らは、本作でも製作に徹するらしい。

ともかく、本にも映画にも、マッシュアップ&ハイブリッドの時代がやってきたようだ。

この記事が参考になりましたらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/26

あの夏の子供たち

映画人にとっては他人事とは思えない、かなりシビアな物語だ。

Leperedemesenfants
パパは映画会社の社長。映画の配給のほかに、ワールドワイドな映画製作も手掛けている。北欧では一筋縄ではいかない奇才が撮影を必要以上に長引かせ、韓国からは新作スタッフが大人数でロケハンにやってくる。刻一刻と変わりゆく製作状況。その逐一が彼のもとへ報告される。だから四六時中、携帯は手放せない。初めの方こそ敏腕社長のように見えた彼だが、どうやら経営は火の車らしい。資金繰りもうまく行かず、その場しのぎでなんとか明日へと希望を託す。彼を突き動かすのはもはや映画作りの理念のみ。。。

うーん、映画人たちが自ら描き込む“映画作りの現場”ゆえ、その徐々に首を絞められていく感覚はあまりに生々しく痛々しい。

そんな彼も自宅に戻れば善き父親だった。娘たちが彼を出迎えてくれる。その屈託のない天使のような笑顔が彼に活力を満たしてくれる。本作は、父親と娘たち、そして母親の目線に交互に寄り添うことによって、たとえ厳しい現実に身も心も削られるストーリーであろうとも、なんとかその視座を真夏の陽光、子供たちの笑い声、無邪気さゆえのファンシーな世界観へと傾け、観客の目を巧みに惹きつけていく。

Anonatsu02_4
本作に人生の答えを求めても何も出てきやしないし、ましてや本作は不況を生き抜くための応援歌などでは一切ない。悲劇は確実に、突如としてやってくる。家族はそれに耐えねばならない。どうにかしてでも、涙をこらえて、必死に生きていかねばならない。

正直、後半の展開には眩暈がした。81年生まれの女優出身監督ミア・ハンセン・ラブはなぜこんな物語を描こうとしたのか?前後半でストーリーに破たんはないか?そしてこのラストはラストに成り得ているのか?次々と疑問が溢れ出す。

そして、笑っても、怒っても、哀しんでも、結局はこの映画の放つ不思議な磁力に惹かれてしまう。本作の魅力はそこなのだ。事態は何も進展しないのに、絶望と同じくらい、希望の息吹を感じる。結果として本作は、昨年のカンヌで「ある視点」部門の審査員特別賞に輝いた。

僕にはこの映画が、すべての映画人たちの遺言であり、なおかつ、その意志を受け継いだ新しい世代の覚醒のように思えてならなかった。

あの、髪をチュルチュルさせた長女は、いつの日か、自分の手で映画を撮ろうと思い立つのではないだろうか。そしていま私たちがこうして目にしている『あの夏の子供たち』こそ、成長した彼女が撮り上げた自伝的作品なのではないだろうか。。。フィクションとは分かっていても、この深い余韻は観賞後の深読みを誘う。

この記事が参考になったらクリックをお願いします。

よくぞこんな映画を日本に届けてくれました!『あの夏の子供たち』を配給するのは、クレスト・インターナショナル。最近では『サン・ジャックへの道』『夏時間の庭』など、珠玉の、そして実に変化球の効いた家族映画を丁寧に配給・宣伝する手腕が印象的です。この手のジャンル好きなら、こういう配給会社名で映画を探してみるのも効果的かも。
****
TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

パナヒ監督、釈放

イラン当局は国際的に評価の高い映画監督のジャファール・パナヒ氏(49才)を釈放した。テヘラン市内の刑務所に2ヶ月半のあいだ拘留されていたパナヒ氏のために支払われた保釈金は約20万ドルと見られており、なおかつ検察側により革命裁判所へ起訴状が提出され、後日、出廷を余儀なくされる可能性がある。

Panahi
パナヒ氏はイランにおける厳格なイスラム戒律や政治システムを告発する内容の映画作りで知られ、今回の拘留も昨年6月の大統領選に関する新作映画を準備していたという容疑によるもの。今年の3月1日に家族と共に自宅で身柄を拘束され、間もなくして家族は釈放されたものの、彼だけはその後も拘束され続けた。また最近では弁護士や家族との面会を求め、1週間以上にわたりハンガー・ストライキを続けていた。

続きを読む "パナヒ監督、釈放"

| | トラックバック (0)

2010/05/25

北野武著「全思考」より

Zensiko
北野武の頭の中は理系の発想に満ちており、脚本を書いているときにも、まるで因数分解を解いているような気分に囚われることがあるそうだ。その具体例について、著書「全思考」(幻冬舎)ではこのように明示されている。

「殺し屋と銃をx、警官をabcdeとする。
普通の銃撃戦を数式で表せば、こうなる。
ax+bx+cx+ex
これをxで括ったら、どうなるかと考えるわけだ。
答えは次の通り。
x(a+b+c+d+e)
映画の表現に直せば、こういう感じになる。
最初のシーンで、銃を持った殺し屋が、道の向こうから歩いてくる。
通りには、警官隊が隠れている。
次のシーンは、その通りを去っていく殺し屋の後ろ姿だ。
通りのあちこちには、aからeの警官が死んで倒れてる。
一発も弾を撃つシーンはないんだけど、こういうやりかたでも、
銃撃戦と殺し屋の腕を表現できるわけだ」

なるほど!と思った。というのも、最新作『アウトレイジ』(拙ブログのレビューに飛びます)は、まさに殺し合い、潰し合いの因数分解だったからだ。この映画はそれ以上でもそれ以下でもない。

カンヌで賛否両論にさらされたとき、とある海外レビューに「結末に驚きが欠ける」という言及を見つけた。確かにそう感じる人もいるだろう。でも、北野武と同じく因数分解が好きな人ならば、最後に手にする答えが単なる無味乾燥な数式でしかないことを知っている。むしろ、ああでもない、こうでもない、と地道に歩を詰めていく過程にこそ、その喜びが詰まっているはず。

さて、この映画、日本でどう受け止められるんだろう??

この記事が参考になったらクリックをお願いします。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/24

全米興行成績May21-23

先週までの復習は各自こちらで行ってください。

【May.21-23 weekend 推計

01 Shrek Forever After (-)
02 Iron Man 2
(↓)
03 Robin Hood (↓)
04 Letters to Juliet (↓)
05 Just Wright (↓)
06 MacGruber (-)
07 Date Night (→)
08 A Nightmare on Elm Street (↓)
09 How to Train Your Dragon (↓)
10 Kites(-)

■ドリームワークスの人気アニメシリーズ第4作目にして最終章と言われている"Shrek Forever After"(4とforeverをかけてる)が気を吐いた。先週の水曜から公開中の本作は週末の3日間(金・土・日)で7,130万ドルを計上し、興行成績NO.1を獲得。

■しかしながら当初の予測「1億ドル越え」には遠く及ばない数字で、これまでのシリーズ作品と比較しても、『1』が4238万ドル、『2』が1億800万ドル、『3』が1億2160万ドルとシリーズ続編中で最も低い出だしとなった。ちなみに『3』&『2』はアニメ映画オープニング成績においても史上1、2位を占め、3位に映画版『シンプソンズ』がきて、第4位が今回の"forever"となる。

■ここで言われているのが、劇場チェーンAMCによる入場料20ドル問題。3D&『シュレック』ブームにあやかってどこの劇場も3D上映に対して追加料金を取るのが通常となっているが、AMCはニューヨークの一部の劇場にてIMAXシアター用の入場料金を「大人20ドル」に設定。これに批判が広がった。消費者の批判が原因かどうかは明らかにしていないが、AMC側はその後「料金設定に間違いがあった」として、17ドル~19ドルの範囲内での料金に設定しなおしている。本作の3D観賞率は全体の6割にとどまる。

■なお本作の製作費は1億3500万ドル、マーケティングの世界展開には1億6500万ドルかかっているという。

■3週目の『アイアンマン2』(拙ブログのレビューはこちらからどうぞ)は興収2,660万ドルで2位へダウン。累計興収は2億5100万ドルに達している。2週目の『ロビンフッド』は1870万ドルを稼ぎ、10日間の累計を6610万ドルとした。日本では12月の公開を予定。

■6位に初登場の"MacGruber"は80’sの人気TVドラマ「冒険野郎マクガイバー」を「サタデーナイトライブ」用にパロディ化したコントを映画化したもの。興収的には410万ドルと不発だが、製作費も1000万ドル以下の低予算と言われ、最初からあまり大失敗はありえない企画のようだ。

■10位の"Kites"はラスベガスが舞台のボリウッド産ロマンティック・アクション。全米208館というボリウッド映画史上最大の規模にて封切られ、興入は100万ドルと低いながらも、ボリウッド映画が全米ボックスオフィスTOP10入りするのは初めてのことだという。上映時間は130分。

この記事が参考になったらクリックをお願いします。

それにしても「冒険野郎マクガイバー」だなんて、ひさびさに名前を聴きました。。。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

カンヌ授賞式

以下、授賞式で起こったことを時系列で書き起こしています。

●司会は開会式に続き、クリスティン・スコット・トーマス。

●審査員ジャファール・パナヒの席は舞台上に空いたまま(イランで投獄中ゆえ)。9日間、ハンガーストライキを行っている。スピルバーグの「カンヌ映画祭は映画を守るための要塞である」という言葉を紹介。

●短編部門のプレゼンターはアトム・エゴヤン&ミシェル・ロドリゲス

●短編パルムドール "Barking Island"by セルジュ・アヴェデキアン アニメーション作品。

●カメラドールのプレゼンターはエマニュエル・ベアール&ガエル・ガルシア・ベルナル

●「必要なのは自由と欲望。欲望があるから監督は第一作目を作るのです」(ベアール)「映画の未来は明るいと思います」(ガエル)

●カメラドールは"Ano Bisiesto(うるう年)"byマイケル・ロウ

●「それではカンヌのサスペンスにピリオドを打ちたいと思います」との表現で、クリスティンが審査委員長のティム・バートンを招く。ふたりの紹介により、審査員がひとりずつステージへ登場。バートンは審査員を「2週間過ごした素晴らしい家族」と表現。

●審査員賞。プレゼンターはアーシア・アルジェント。結果は"Screaming Man"。チャドの映画。マハマット・サレ・ハルーン。「私の国はほとんど何もない。砂漠の国だ。そんな中で映画を作るのなら、それは日々の料理のように作るべきだと思いました。」

●監督賞、プレゼンターはクリステン・ダンスト。結果は、マチュー・アマルリック"Tournee"「とても感動的な瞬間、家に帰ってきたようだ。17歳のとき私はここでカメラの裏側でアシスタントをしていた」

●脚本賞はイ・チャンドンの"Poetry"。「主演のユン・ジョンヒさんに感謝したい。この主人公はいわば、彼女と共に作り上げた。彼女がいなければ始まらなかった。」

●女優賞のプレゼンターはギョーム・カネ。結果はジュリエット・ビノシュ。"Certified Copy"。「このようにアッバス・キアロスタミ、あなたと一緒に仕事出来たのは本当にうれしいことです。あなたの見つめるカメラは、私の中の女性を引き出してくれた。美しい冒険。最初から最後まで喜びをもたらしてくれたことに感謝したい」。ジャファール・パナヒのネームプレートを手にして「アーティストであることが罪であるという国にいるあなた。来年はあなたにこの場ににやって来てほしい」。

●男優賞のプレゼンターはダイアン・クルーガー。結果は、「通常のようにはいきません。受賞者は2人です」とティム。一人目はハビエル・バルデム"Biutiful"。「作品なしにこの賞は無い。手掛けたイニャリトゥ監督に感謝。本当に素晴らしい監督。そしてぺネロぺにも、愛しています」。二人目は"Our Life"のエリオ・ジェルマーノ。

●グランプリ(次点)のプレゼンターはサルマ・ハエック。受賞作は"Of Gods and Men"by グザヴィエ・ボーヴォワ。5本目の長編。

●『マトリックス』のセリフを借りれば、「すべてに始まりがあり、おわりがある」。それでは最後の発表に移りましょう。

●パルムドールのプレゼンターはシャルロット・ゲンズブール。受賞作は"Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives"(前世を想いだせるブンミおじさん)。タイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督。「まるで別の世界からここへやってきたような気がする。撮影には3年半。タイの映画史ではじめてのこと。とても重要な瞬間です。審査員のみなさんにキスを。とくにティム・バートンさん。あなたの髪型、大好きです。観客の皆さんにも。。。そしてタイの幽霊や妖精たちにも感謝したい」「30年前、両親が私を小さな村の小さな映画館に連れてってくれた。スクリーン上に何が映し出されているのか理解するには私はまだ幼すぎました。あの頃に比べ、少しは映画が何たるか分かるようになりましたが、それでも私にとって映画はいまなおミステリーです。でもだからこそ我々はこうやって世界中から集い、皆でそのミステリーを分かち合っているのかもしれません」。40歳の映画作家。2004年には『トロピカル・マラディ』でカンヌ審査員特別賞を受賞。

↓この記事が参考になりましたら、クリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

カンヌ後半戦

いよいよカンヌも終幕間近。マスコミや批評家の星取りとは全く違う結果が出るのがカンヌの常。昨年も酷評&ブーイングを浴びたラース・フォン・トリアーの"Antichrist"が女優賞を獲得したりもして一筋縄ではいかないが、後半戦で注目されている3本に注目してみよう。

●グザヴィエ・ボーヴォワ監督の"Of Gods and Men"。

Of_gods_and_men
アルジェリアの山中に暮らす7人の修道士たち。いつしか政情は不安定になり、それでもそこに留まる事を選んだ彼らは、1996年、変わり果てた姿となって発見された。これは彼らが死に至るまでの間にどのような生活を送っていたのかを描いた人間ドラマであり、なおかつ、この国でイスラム教徒とキリスト教徒とが互いに寛容の精神にのっとり暮らしていた日々を描いた普遍的な物語でもある。

マイク・リーの"Another Year"と共に「もっともパルムドールに近い作品」とも噂されている。

●韓国の文化大臣を務めたこともあるイ・チャンドンの"Poetry"。

Poetry
孫と暮らす女性が“詩”を習い始めたことから、これまで気付かなかったささやかな日常の中に喜びや輝きを見出すようになる。そんな矢先、彼女自身に“老い”という変化が生まれ・・・。直視したくない現実にまなざしを向け、そこに映画的瞬間を見出していくイ監督の手腕は『シークレット・サンシャイン』『ペパーミント・キャンディー』『オアシス』に続き、絶賛されている。

●『桜桃の味』でパルムドールを受賞したアッバス・キアロスタミ監督の"Certified Copy"はトスカーナを舞台にした男女のラブストーリー。

Certified_copy_5
マスコミのスクリーニングではブーイングも出たと聞くが、その反面、高評価を叩き出す批評家もいるとか。 "Poetry"と並び女優賞に近い作品とも。

↓この記事が参考になりましたら、クリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

二度目のローラーガールズ

映画はお客さんのもとに届くことで初めて作品として完成されるものであるから、自分が心奪われた作品の公開初日には出来るだけメイン館に足を運ぶことにしている。そうやって生の反応に触れることで、自分が気付きもしなかった反応に気付かされる点も数多い。

そして今回向かったのは、『ローラーガールズ・ダイアリー』。

Whipit_2 
本作についての詳しいレビューは拙ブログの記事をご覧いただくとして、僕はこれが完璧な映画だとは露ほども思っていない。しかし、そうでないがゆえに無性に惹かれるものがあった。洗練されすぎていない美徳というか、技術よりも気持ちで勝負しているというか。その真っ直ぐなひたむきさに惹かれる。そういうことって、よくありますよね?

日比谷にあるTOHOシネマズ シャンテでの第2回目の上映は、まずまずの客足だった。そしてこの土地柄のせいか上品な中年層が非常に多い。スポ根というジャンルと客層とが合致しているのかどうか多少不安だったが、この映画は最後の1ページで嵐の後の静けさのごとく、母と娘の関係性に爽やかな落とし所を持ってくるのだった。この点だけ取ってみると、確かに客層と合致している。

ちなみにエレン・ペイジはずっとSTRYPERと書かれたTシャツを着ている。これは92年に解散したへヴィメタ・バンドで、最近になって再結成してはいるものの、この主人公が同時代に彼らの楽曲を聴き込んでいるとは思えない。この矛盾がまた、母娘の関係性を示す上で重要なアイテムとなっていく。

Whipit1_2 
ボーイフレンドに「それ、ストライパーだよね?」と聞かれた彼女はこう答える。

"Yeah ! 80's christian heavy metal. I mean in the name of jesus we rock !"(そうなの、80’sのへヴィメタなの。キリストの名のもとにロックするのよ!)

つくづく凄い文化だなと思う。この映画もどこか80’sっぽいような。

↓このブログが参考になったらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/22

パーマネント野ばら

ふと、菅野美穂の主演映画なんて何年ぶりだろうかと考えた。そう、『DOLLS』以来だ。だから8年ぶりになる。それだけの時間が空いたからなのか、スクリーンに映し出された菅野はかつての印象を消し去り、観客にこういう路線の演技でいくのだろう、という予測を立てさせない。そもそも本作『パーマネント野ばら』自体が、沖合に浮かぶブイのように飄々と物語の波間に身を揺らす。

それは高知の海辺にある田舎町の物語。結婚生活に終止符を打ち、幼い娘を連れて出戻ってきた“なおこ”は、母の営む美容室“パーマネント野ばら”で手伝いを続けている。いちおしのメニューは「パンチパーマ」。常連のおばちゃんたちも皆パンチが効いている。かつての親友たちも、それぞれに幸福なのか悲惨なのか分からない人生を背負って精一杯生きている。そんな中、なおこは高校教師の男性と新しい恋を育み始めるのだが。。。

『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』、『クヒオ大佐』と一筋縄ではいかないファンタジーと狂気と現実のせめぎ合い&崩壊を描いてきた吉田大八監督が、西原理恵子の原作漫画を透き通るような光のバランスで映像化。なおこの吹けば飛ぶような繊細な主観とその周囲のドタバタとが僅かに趣を異にし、やや後者に強引さを感じるのだが、その奇妙な温度差についてもラストになってようやく演出の意図が判明する。

映画の中心にいると信じていた自分(観客)の立ち位置が、俄かに主軸とずれていたのを知る瞬間、遠く離れていても実は案外近いかもしれないひとつの世界について想いを馳せた。そしてつくづく思う。物語とは、哀しみとは、希望とは、いつ、どこで発生するものか皆目分からないものなのだ、と。

↓この記事が参考になりましたら、クリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/21

赤ちゃんをも魅了する"Babies"

地元密着型の映画館に足を運ぶと、大声や騒音を出してもOKな"Big Scream"上映を見かけることが多々ある。そのほとんどは赤ちゃん連れのママさんたちが子供をあやしたり、授乳したりしながら気兼ねなく観賞するためのものだが、とはいえ、親も子も揃って楽しめる作品ってのは案外少ないものだ。

その点、現在アメリカで公開中の赤ちゃんドキュメンタリー"Babies"はまさに打ってつけのプログラムと言える。

Babiestrailer
先日お伝えしたように、溜息が出るほど可愛らしい予告編の力も相俟って、公開されるや否や“母の日”を挟んで密かなブームとなった本作だが、興収的にはそれほど爆発的なヒットを飛ばしていないにしても、ひとつ確かなのは、日ごろあまり映画館へ足を運ばないお客さんがこの映画には格別の興味を抱いているらしいということだ。

AP通信の記事によると、現在、上に掲げたような"Big Scream"上映が全米各地で開催されているという。中には地元の赤ちゃん用品店などがスポンサーになるケースも多い。何よりも微笑ましいのは、本作が幼子たちにとっての記念すべき“映画館デビュー作”となっていることだ。上映中もスクリーンを食い入るように見つめ、自分よりもやや小さい赤ん坊が巨大縮尺で映写される姿を指さして、「だー」とか「あー」とか、いちいち反応するのだそう。なんて可愛らしい。。。

これよりもうちょっと年長さんになると、今度は自分の見知っている生活との差異に関心がいくようだ。世界4つの地域に生まれ落ちた赤ん坊たちをフィーチャーしながら紡がれる本作だが、たとえばモンゴルの赤ちゃんがタライで水浴びしていると、背後からヤギが忍び寄り、ちゃっかり水を飲んじゃったりもする。誰も動じない。さもそれが日常の風景であるかのようだ。

Babies_3
また、ナミビアで暮らす赤ちゃんはオムツなど装着していない。あちらは子だくさんなので、時には年長の赤ん坊が年少の赤ん坊の面倒を見る場面に出くわすこともある。

そして客席でこういう場面に心奪われている幼子の中にも、親の妊娠によって近々お兄ちゃんになったり、お姉ちゃんになったりする子がいるわけである。赤ちゃんが赤ちゃんを見つめる。このメタ赤ちゃん学によって、彼らが生命の尊さ、兄や姉としての責任感について何か感じ取ってくれれば、と願うのは親として当然の想いだろう。

ちなみに、本作の劇場公開にあたってのレイティングは"G(誰でもOK)"ではなく、"PG"(親の指導が必要)。理由としては"Cultural and maternal nudity throughtout"とあるが、これをあえて明記するのは野暮な気もする。。。

けれど年長の子の親たちは、上映中の我が子の様子から「ああ、これは上映後、質問攻めにあうだろうな」と直感するという。妊娠、出産、それぞれの国の文化や風土、はたまた男女の身体の違いについて。。。これらの素朴な質問に曖昧に返すよりは、何らかの指針を持って真摯に答えてあげた方がいいのだろう。そして親子で観賞する際には初めからその態度を明確にして臨んだ方が良いのかもしれない。

つまり、結局はレイティングの示す通り、“親の指導が要求される映画”と言えるようなのだ。

↓この記事が参考になりましたら、クリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/19

孤高のメス

医療ドラマである。1989年、とある地方の市民病院に赴任した医師が、脳死状態の患者から肝臓移植を行うことを決意する。それは2009年に脳死臓器移植法が成立する、まだ20年も前のことだった・・・。

主演が堤真一だからか。あるいは成島出(本作の監督でもある)と加藤正人のコンビが脚本を担っているせいか。上映中、ずっと文字通りの“クライマーズ・ハイ”を味わっていた。あの映画とおんなじだった。いま、ここで、自分がその渦中に飛び込み、一体となって突き動かされている臨場感。映画は水を打ったかのような静けさなのに、その下部ではドクドクと血流が脈打ち、あらゆる細部へと情熱を行き渡らせている。

それも見せ場となる舞台は手術室なのだ。ほんの数人のスタッフに囲まれ、堤真一が人命への慈しみと敬虔なまでの使命感を眼光に宿しながら、精確に人体を切り分けていく。そのディテールに目を見張った。かつてここまで人体を詳述した映画があっただろうか。やがて臓器が露わとなり、変色部への血流が止められ、卓越した裁縫、あるいは手品師のごとき手際の良さで悪化部が取り除かれていく。どのシーンにも一切の誤魔化しは無い。なぜなら、この映画の作り手たちはおそらく、手術シーンや人体内部にリアリティを付与することによって、彼らなりに生命に対する最大限の慈しみや尊びを表現したかったに違いないから。

この想いが派生し役者の血流にまで行き渡ってこそ、堤真一の手に、いま、ひとりの患者の生命が担われているという“重み”が生じることになる。あの肝臓を持ち上げたときの、生まれたばかりの赤ん坊を取り上げるかのような確たる重量感は、たとえ映画というバーチャルな体験であったとしても、生涯忘れることはないだろう。

そして彼の一挙手一投足に遅れを取るまいと、意識を集中させ一体となって動いていくチームの面々。まるで『クライマーズ・ハイ』の新聞編集部が、今度はこの手術室に蘇ったかのようだった。彼らもまた、ひとつの細胞同士から成っており、それが団となって臓器のようにうごめく存在なのだから。

ずっと魂が浄化されていく気分にさらされていた。実は試写中に一人、いびきをかいて寝入ってしまう人がいたのだが(そんな人はどこの試写にだっているが)、面白いことに誰も彼を咎める者はいなかった。たとえば学生時代にオールナイトで観たタルコフスキーがそうだったように、『孤高のメス』においても緊張感と安らぎにも似た静謐さが表裏一体に存在する瞬間がある。あの手術室には確実に同種のα波が漂っていた。なぜだろう。まさか本当に都はるみ(!)の効力なのだろうか。

↓この記事が参考になりましたら、クリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/18

カンヌ前半戦

カンヌ映画祭も約半分が過ぎ、徐々に今年の収穫とも言うべき作品の名前が上がり始めているようです。各紙の評価を概観したところ、現在までのフロントランナーはこの3者か。

●カンヌ最高賞受賞作『秘密と嘘』や『ヴェラ・ドレイク』など質の高い人間ドラマを生み出してきた英国人監督マイク・リーは、"Another Year"で初老夫婦とその息子、そして友人を見つめた1年の月日を紡ぎだす。
Another_year

それぞれに仕事を辞め、さて平穏な生活を始めようかという佳き夫婦。だが、彼らのもとには呑んだくれて自暴自棄になった女友達が上がり込んできて、彼らもそれに引きずられるように翻弄されていく。。。と、実にシンプルなストーリーラインだけれど、そこにいぶし銀の職人技を見せつけるのがマイク・リーの本領。リーと気心の知れた、ジム・ブロードベントをはじめベテラン役者陣がまた素晴らしい、とのこと。

ほんのささやかな仕草にも心掴まれ、平凡な人々の孤独や哀しみを慈しみ深く掬い取った作品に仕上がっているそう。

●マハマット・サレ―・ハルーン(Mahamat-Saleh Haroun)が紡ぐ中央アフリカ、チャドの物語"A Screaming Man"は、タイトルとは裏腹に、寡黙で美しくも切実な作品に仕上がった。

Screaming_3   
内戦の続くこの地に建つ高級ホテルで、プール専属のインストラクターとして働く60代の男アダム。やがて彼は解雇され、後任として彼の息子が就くことになる。落胆と憤慨が入り混じり、ついには戦火の迫る中で息子を政府軍の兵士として送り出すアダム。そうして自分は元の仕事に返り咲いてしまう。この決断が後に彼を苦しめるとは知らずに。。。妻が浴びせる「あなたは変わってしまった!」との言葉に「ちがう!世の中が変わったんだ!」と答える姿が印象的だ。たしかに彼は最初から何一つ変わっていないのかもしれない。

●『バベル』(←拙ブログのレビューに飛びます)でカンヌ監督賞を受賞したアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥの最新作"Biutiful"も評価が高い。

Biutiful
ハビエル・バルデム主演の本作は、バルセロナの闇社会を舞台に死にゆく父親の物語。不法移民を斡旋する商売に手を染める彼は、一方で死者と心を通わせる力も持つ。2人の幼い子供、精神に病をきたした妻、彼を頼る大勢の移民たち。彼は善き人間だが、完璧ではない。いつしか自らの死期を悟った彼は、残された時間の中、人として、父として、何らかの答えを手にしようともがくのだが・・・。

今回は長年組んできたギジェルモ・アリアガの脚本ではなく、複数のエピソードが同時進行する形式も取っていない。しかし各紙のレビュアーが口を揃えて言うのは、これまで以上に多様なテーマが入り組んで、この“たったひとりの主人公”の心の中を複雑に席巻しているということ。ほとんど説明的な描写がなく、観客には物事の詳細が与えられないまま、ほぼ印象によって推測していくしかない。

その方法論が、かねてよりイニャリトゥの言う「映画とは、人間の感情を伝えるべきもの」という指針を踏襲し、心を揺さぶる全体像を手にしている。会見で彼は、「これまでの作品で最も希望のある映画。何よりも“許し”がある」と語っている。

●北野武監督作『アウトレイジ』については拙ブログのレビューをご覧ください。

↓このブログが参考になったらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/17

ビルマVJ 消された革命

VJといっても、ヴィデオ・ジョッキーのことではない。

Burma_vj_2   
それはヴィデオ・ジャーナリストのことだ。

安価で高性能なハンディカムや携帯電話のカメラ機能を駆使して誰もがジャーナリストになれる時代。軍事政権が市民の言論を弾圧するここビルマ(英語読みすると“バーマ”)では彼らの暗躍こそが、その実態を世界へ伝える貴重な情報パイプラインとなる。

誰もが口を閉ざしていたこの国で、2007年、ついに僧侶たちが立ち上がった。いつもは平和的とされる彼らが率先して集団となり、おびただしい数で道を覆い始めた。「ビルマで何かが起き始めている」世界のニュースがその報を伝え、そこには常にVJたちが撮影した映像が添えられていた。彼らは現地で撮影したフッテージを衛星回線を使って隣国へと送り、そこでネットワークを束ねる代表者の手によって世界中へ発信されていたのだ。

やがて僧侶の広げた輪に市民も加わり、街道には多くの声援が贈られるようになる。明らかに空気が変わろうとしていた。この生の映像が伝える高揚感。そして市民がアウンサン・スーチー女史へ寄せる聖母にも似た想い。それは平和的なデモのはずだった。しかし軍政はここに武力を投入。実弾の使用により脆くも人が崩れ落ちる。日本人ジャーナリストも犠牲となった。そして彼らなりのやり方で闘い続けるVJたちの身にも危険が及び、ひとり、またひとりと消息を絶ちはじめる。

Burmavj_filmstill1
このドキュメンタリーを構成するあらゆるフッテージが、まさに命がけで撮られている。彼らが魂をすり減らしながら記録した映像を僕らはどのような表情で見つめればいいのだろう。感動?怒り?それとも無力感?そのいずれかは分からないが、本作を見ながら、とめどなく涙があふれてきた。そこには映像の、圧倒的な迫力が存在した。世界中の観客が関心を寄せ、ビルマの未来に想いを馳せるに値する確実な磁力が存在した。

本作はアカデミー賞のドキュメンタリー部門にもノミネート。しかし結果的に『ザ・コーヴ』に惜敗を喫した。こういう言い方はイルカたちに対して申し訳ないが、コーヴとこれとでは題材の次元が全く異なる。まあ、そうした差異を踏まえたうえで勝敗を決めるのが賞の特性というものなのだが。。。両者とも事実を扱っているだけに、映画とはいえ、これに優劣をつけることには気が引ける。つまりはぜひ、どちらもご覧いただきたい。共に昨年のドキュメンタリー界を代表する作品であることに変わりは無い。

ちなみにこれはウィキペディアにも記載されていることだが、“ミャンマー”とは当地の軍事政権が89年に定めた国名であり、この正当性を認めないアメリカ、イギリス、オーストラリア政府やBBC、CNNをはじめとする各マスコミ、人権団体などは依然として"Burma"を用いている。対して日本の外務省は“ミャンマー”を用い、“ビルマ”を用いるマスコミも少ない。

↓このブログが参考になったらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

全米ボックスオフィスMay.14-16

先週までの復習は各自こちらで行ってください。

【May.14-16 weekend 推計

01 Iron Man 2 (→)
02 Robin Hood
(-)
03 Letters to Juliet (-)
04 Just Wright (-)
05 How to Train Your Dragon (↓)
06 A Nightmare on Elm Street (↓)
07 Date Night (↓)
08 The Back-Up Plan (↓)
09 Furry Veangeance (↓)
10 Clash of the Titans (↓)

■中世の義賊がハイテク男に闘いを挑んだ今回の興行バトル。

Robiniron
■『アイアンマン2』が先週末比約60%落ちの推計5300万ドルを売り上げ週末興行成績V2を達成。依然として4390館というかつてない規模での上映が続き、そのアベレージは12,072万ドル。北米での累計は2億1200万ドルとなり、現在までの世界興収は4億5700万ドルに昇る。(拙ブログのレビューはこちらからどうぞ)

■先週カンヌでお披露目されたラッセル・クロウ&リドリー・スコットの5度目のコラボレーション作『ロビンフッド』は当初の予測よりも低い3710万ドルに留まった。これは『グラディエーター』(興収1億8767万ドル)のオープニング興収3481万ドルをやや上回り、『アメリカン・ギャングスター』(興収1億3000万ドル)のオープニング4360万ドルには及ばない。なお、最近のクロウ出演作『ワールド・オブ・ライズ』、『消されたヘッドライン』の興収はそれぞれ3700万ドル、3900万ドル。

■『ロビンフッド』の製作費は1億5500万ドルと言われている(実際は2008年に撮影が始まり、途中に脚本の直しなどで製作が遅れたことなどからも、製作費はこれを上回るのでは、との見方が強い)。北米での1館あたりのアベレージは10,594ドル。観客層は3分の2が30代以上、56%が男性なのだそう。

■シェイクスピア劇をエッセンスに据えたラブ・ロマンス"Letters for Juliet"は1380万ドル、クイーン・ラティファ主演のバスケ・ロマンス"Just Wright"は850万ドルのスタートとなった。1位、2位が男性映画なだけに、3位、4位は見事なまでに“チック・フリック”ですね。

■8週目の『ヒックとドラゴン』は累計2億780万ドルに達した(拙ブログのレビューはこちら)。3週目の『エルム街の悪夢』は累計5610万ドル、"Date Night"は累計8670万ドルに。いよいよ圏外ギリギリとなった『タイタンの戦い』は累計1億6015万ドル。

この記事が参考になったらクリックをお願いします。

今回のリドリー・スコット版『ロビンフッド』、ケビン・コスナ―&モーガン・フリーマンが共演したケビン・レイノルズ版と『グラディエーター』を足して2で割った作風という噂は本当だろうか。。。?

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/16

マイク・リー監督のコメントより

少々気難しいところもある英国のマイク・リー監督。カンヌの記者会見では質問への回答を拒否する場面も見受けられたそう。でもすべての答えはこのコメントにこそ込められているような気がするのです。

Mike_leigh_2 

"I would suggest the film doesn't, as it were, have solutions, as you say it, simply I hope raises feelings to have about how we deal with life."

この映画はよく言われる“解決法”など指し示してはくれません。私がただ願うのは、本作が「いかに人生と向き合うか」を見つめるために、感情を高めてくれることです。

カンヌのコンペ部門に出品されている"Another Year"は、四季の移り変わりを通して中年男女の愛と孤独、そして彼らが失い、かつ変わりゆくものについて描いた作品だそう。今回も人生の紆余曲折に翻弄されるごく“普通の人々”に視線を注ぎます。

96年に『秘密と嘘』でパルムドールを手にした彼だけに、今回も注目が集まっています。

**********

↓このブログが参考になったらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

ユゴーの不思議な発明(BOOK)

先日、マーティン・スコセッシの次回作として驚くべき作品が発表された。

Hugo   
児童文学である
。しかも3D作品として製作されるという。巨匠が長年温めてきた遠藤周作原作の「沈黙」の映画化を後回しにしてまで(今回は製作開始ギリギリのところまでいったのに!)取り組まざるを得なかった本作「ユゴーの不思議な発明」とはいったいどんな作品なのだろうか。

それは子供向けにしてはあまりに分厚いハードカバーだった。全部で600ページ近くある。しかしすべてが文字ばかりというわけではない。文字ページが続いたなと思ったら、続いてページをめくるや、イラストのつぶてが矢継ぎ早に挿入されていく。まるで映画の絵コンテのよう。つまり本作は時おり鮮やかに言葉を消滅させ、絵がその語りを代弁する瞬間を数多く有しているのだ。

舞台は1931年のパリ駅。構内の時計を管理する少年ユゴー・カブレには秘密があった。彼の部屋には壊れたカラクリ人形が一体。それは机に向かってペンで何かを書きはじめる態勢のまま止まっている。ユゴーはいつの日かこれを修理し、人形がいったい何を描くのか、この目で見たいと願っている。そのためには人形のからくりを研究し、足りない部品をどこかからか調達しなければならない。今日もおもちゃ屋でヒョイと手を伸ばしてはお目当ての部品の詰まったおもちゃをポケットへ、と思ったら、店主に腕を掴まれ。。。

はじめのほうは幻想的なファンタジーなのかと思っていた。けれど、中盤から愕然とした。こ、これは・・・映画だ!原作を彩る最重要のエッセンスとして「映画の誕生」が用いられているのだ。なるほど、舞台がリュミエール兄弟のお膝元のパリなのも納得だ。それに、本作にはあの映画監督までもが、象徴的な映画写真と共に登場する。そもそも後に映画監督と呼ばれた人たちは、それ以前にどんな職業に従事していたのか。どういう発想で映画のトリックが生まれたのか。これはあくまでフィクションだが、そこに発露している想いはおそらくその原風景と変わるまい。

そして期せずして、物語の展開には、スコセッシが創立したWorld Cinema Foundationの理念があふれ出す。世界には今にも倉庫の片隅で人知れず腐敗した貴重なフィルムが数多く存在する。それらを保存し、修復するのが彼らの掲げる最重要課題だ。本作のクライマックスにも。。。おっと、これ以上はネタばらしが過ぎる。

少なくとも本作は3Dの質感に打ってつけだ。立体的に映し出されるパリの街並みと、数多く登場する機械仕掛け。それからあの名作映画たち!もしかすると、リュミエールの『列車の到着』や、ハロルド・ロイドの有名な宙ぶらりん場面、はたまた映画史上もっとも有名な「月の顔」さえも新たな3D体験として享受できるのかもしれない。今から完成が楽しみだ。

↓このブログが参考になったらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/15

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を

昨年のカンヌに出品されたジョニー・トーのハードボイルドな逸品がいよいよ公開。

Vengeance_2 
冒頭から凄惨な銃撃で幕を開ける。被害者はマカオで暮らす幸福そうな家族だった。幼い息子ふたりに、夫、そしてフランス出身の妻アイリーン。。。いや、彼女にだけはまだ息があった。瀕死の状態でなんとか生き延びていたのだ。

一連の報に触れ、フランスより初老の男が渡ってくる。彼の名はコステロ。集中治療中の我が娘アイリーンを前に復讐を固く誓う。その手順もちゃんと心得ていた。ひょんなことで知り合った3人組の殺し屋に仕事を依頼し、そこに彼が加わることで4人組が成立。チームの誕生を祝福するかのように昼食が始まる。料理の腕を振るうのは他ならぬコステロだった。「本業はシェフなんだ」と彼。だが一方で、銃を触らせると驚くべき手際の良さで処理する側面も併せ持つ。はたして彼は何者なのか?そして、この復讐劇の末に待つ結末とは。。。?

これは名目上、『ザ・ミッション/非情の掟』『エグザイル/絆』に続くノワール・アクション3部作の最終章だという。ストーリーや登場人物の関連性は曖昧だが、いつも通りのあっと驚く趣向を凝らしたアクションと、いい年こいた男たちがちょっと遅めの修学旅行に出かけるかのような無邪気な友情が描かれる。

02vengeance_2
銃撃×任侠×ピクニック×記憶喪失×運動会×雨降り。。。カンヌの観客を熱狂させたいつも通りのジョニー・トーの流儀が炸裂する一方、幾度も彼の作品に触れてきた人なら少なからず察知するであろう違和感もある。何にも増してアクションの組み立て方が違う。それもそのはず、フランス出資による今回の映画製作ではトー監督に「事前に脚本を完成させること」が義務付けられたという。ご存じの方も多いだろうが、香港映画の現場では原則として脚本が存在しない。以前、『ブレイキング・ニュース』や『エグザイル』に出演しているリッチー・レンに話を訊いたが、彼曰く、「トー監督の現場では、毎朝現場に行くとその日に撮影する分のセリフのメモを手渡される。俳優が前もって映画の全体像を把握するのは不可能なんだ」。

でもさすがに今回の国際コラボでそんなやり方は通じなかった。育ってきた言語や文化の違うスタッフ&キャストが集えば、それだけ入念な設計図(脚本)が必要となる。ジョニー・トー作品の今後を占う試金石とも言うべき本作ゆえ、やはりこれまでのどんどん膨張していくアクションとは違った、コンパクトでまとまりのいいプロットが先行する。これもまたジョニー・トー作品のひとつのかたち。相手の土俵の上でもこれだけ立ちまわれるのだ。

次回作はリーアム・ニーソン、オーランド・ブルーム、チョウ・ユンファが揃い踏みするそうだが、きっと更なる国際化の可能性を引き出してくれることだろう。

↓このブログが参考になったらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

イタリア激震のドキュメンタリーがカンヌで上映

カンヌの特別上映枠で、イタリアの女性監督サビーナ・グザンティによるドキュメンタリー"Draquila:L'Italia che trema(Italy Trembles)"が披露された。評判は上々。スタンディング・オベーションまで飛び出したという。

本作は2009年4月6日にラクイアで発生し300人以上が犠牲となり、8万人が家を失った大地震を扱っている。が、“激震”の意味するところは他にもある。グザンティ監督は本作で全身全霊を込めてシルヴィオ・ベルルスコーニ首相を糾弾しているのだ。曰く、「ベルルスコーニはドラキュラである」と。

要はこうだ。

地震発生前、首相は女性問題を取りざたされ、国民の間では支持率が低迷していた。その絶体絶命のタイミングでラクイアに災害が降りかかり、その対応によって世間の目をそらし、なんとか人気を回復させた。しかし現状を見よ。首相が約束した新しい住居の建設は進んでいないし、市民は倒壊の恐れのある住居に足を踏み入れることを禁じられ、ラクイアの復興は依然として目処が立たず瓦礫の山の状態でゴーストタウンと化したままだ。そして首相と防災局長官との間にはキナ臭い絆も噂され。。。

グザンティ監督は地震直後のラクイアの状況、市民の焦燥、それに関係者のインタビュー映像を加えながら、首相の欺瞞をひとつひとつ明らかにしていく。

この映画の告発に対する反応だが、もちろん政府は大激怒。文化相は「これは紛れもないプロパガンダだ!」として今回のカンヌ参加をボイコットした。一方、先週より封切られた本国では、物議の煽りもあって予想以上の大ヒットを記録しているという。

↓このブログが参考になったらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/14

『ウォンテッド』より

Wanted
Acting for five minutes like Janice(the boss) doesn't make all our lives miserable is the hardest work I'll do all day.

いい上司を持って幸せという演技は、たとえ5分でも耐えがたい
(上司に接する5分間、彼・彼女が社員の日常をみじめにしているのではないように演じるのは、一日中直面せざるを得ない最もハードな仕事だ)

ウェズリー・ギブソン

↓このブログが参考になったらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

パリより愛をこめて

タイトなアクションの詰まった『96時間』でスマッシュヒットを飛ばした監督ピエール・モレル&脚本リュック・ベッソンのコンビが、間髪いれずに新たなアクションを起動させた。前作ではリーアム・ニーソン演じる主人公が中盤からパリへ殴りこんできたが、今回は完全にパリのみが舞台となる。

さぞや大ヒットを飛ばすことだろう、と期待して全米ボックスオフィスの結果を眺めこんでみた。が。。。今回はかなりの不発だったようです。2月公開ながら、いまだ世界の興収を合わせても製作費の5200万ドルをカバーできていない。うーん、なにか重大な失敗をしでかしてしまったのだろうか???

Frompariswithlove_3

とまあ、観る前から半分“駄作”と踏んで臨んでしまった自分がいたのも事実だ。最初の方のややもたついた展開にも「ああ、やっぱりね」と何度もニヤついた。辛口を気取ってどんな欠点をも見逃さないぞという気分で95分をやり過ごした。そして出た結論は。。。これ、軽~く見る分には意外と面白い!

ジョナサン・リース・マイヤーズ演じる大使館員にはCIAエージェントとしての裏の顔がある。聞こえはカッコいいのだが、でも実際に回ってくる仕事は車のナンバープレートを取り換えたり、盗聴器を仕掛けたりと地味なのばっか。「もっとスゴイ仕事くださいよ~、オレ、ぜったいやりこなしてみせますから!」と必死でアピールする彼。その数日後、願いは叶った。携帯電話の指示では「すぐに空港へ行け」と言う。「お前のパートナーがやってくる。ふたりで任務を遂行せよ」と。

そこで出逢った相手こそ、このオッサン。

2010_from_paris_with_love

コイツが出てきた瞬間にすべてのツジツマが合った。なぜ全米で沈没したか。それはジョン・トラヴォルタがあまりに濃すぎるキャラだからに決まってる。普段の容姿&演技でも濃いのに、本作ではなぜかスキンヘッド!これじゃあ『バトルフィールド・アース』並みじゃないか。みんな予告編やポスター見ただけで胃もたれして、心の中で「ムリ!ムリ!」と叫んだことだろう。

でもオッサン、がんばった。リース・マイヤーズだけだと単調だった流れが彼の登場でグングン勢いを増して暴走特急のように転がっていく。観光客の絶対に訪れないパリの危険地帯を、アジア系からアラブ系まで世界地図をめぐるみたいに西へ東へと大忙し。飛び散る弾丸。築かれる死体の山。もう『ブロークン・アロー』や『フェイス/オフ』のジョン・ウー演出をもう一度、ってな感じで、トラヴォルタが巨体をヨイショと浮かせながら、アクロバティックな銃撃戦を繰り広げる。わーこれはジョン・ウーの足元にも及ばないが。。。でも胃もたれを通り越して笑えてきた。そして気持ち良くなってきた。

まあ、確かにツッコミどころは多々あるが、常々バディ・ムービーの楽しさを忘れていた気がする。任務のためなら人殺しも辞さないアメリカ的なご都合主義=ひとつのファンタジーに身をゆだねる楽しさを忘れていた。これはたかが95分の身分相応のアクション映画でしかないが、どこか懐かしい香りさえ漂う。

気軽な「パリ裏街道の旅」と捉えればそれなりに楽しめるはず。間違っても『007/ロシアより愛をこめて』と比較しないで。タイトルで意識はしていても全くの別物だから。

007

↓このブログが参考になったらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/13

『その名にちなんで』より

数年前、もしかすると『ハリー・ポッター』を撮るかもしれなかったインド出身の女性監督ミラ・ナイール。彼女の渾身の作品にして、インドからアメリカへ渡り住んだ家族の物語『その名にちなんで』(原題"The Namesake")より一言。
Thenamesake_3   

My grandfather always says that is what books are for.
To travel without moving an inch.

祖父の口癖は「だから本がある」
居ながらにして旅に出るために

アショケ・ガングーリ(父)

↓このブログが参考になったらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/12

アイアンマン2

俳優ロバート・ダウニーJr.を再起復活させたご利益抜群のヒーロー、アイアンマン。その登場はヒーローの人間臭さがリアリティを伴ってスクリーン上を席巻しはじめた、映画史のターニング・ポイントとなった。

Iron_2   
あれから2年、ダウニーJr.が再びレトロなパワード・スーツに身を包んで帰ってくる。今回のトニー・スターク(=アイアンマン)はかなり調子に乗っている。チョイワルぶりを加速させ、自身のバースデー・パーティーでは招待客の面前でパワードスーツを着たままイチモツをさらけ出そうともする(なんてことだ!)。自身が主催する科学万博やそれにカーレースでも大勢の観衆を圧倒し、煙に巻き、そのセレブぶりを乱用。米議会の公聴会では「私が核抑止力だ!」と高飛車に発言する始末。

確かに今現在、このオジサマ俳優を止められるものなど他にはいるまい。ダウニーJr.とトニー・スタークは前作以上に寸分違わぬリアリティで繋がっているかのよう。しかし彼は気付いていなかった。遥かロシアからもっと上手で獰猛なオジサマが彼の生命をつけ狙っていることを。。。

その男こそミッキー・ローク。まるで『レスラー』の“ザ・ラム”が改心どころか改悪してアイアンマンに戦いを挑んでいるかのような、チョイワルどころか極悪っぷり。最強の敵“ウィップラッシュ”として、縄跳びみたいな紐を両手でビュンビュン振り回すという、いささか洗練さに欠けた攻撃が持ち味だ。これに猫パンチが加われば、ここにもミッキー・ローク=ウィップラッシュという等身大の役作りが成立する。ヒーローもヒーローなら悪役も悪役でスクリーン上と言えども嘘のつけない時代になっているのだ。

Ironman2_3 
事態はいつしか最強のオジサマ旋風に呑み込まれる。俺も、俺もと言わんばかりにドン・チードル、サム・ロックウェル、サミュエル・L・ジャクソンが揃い踏み。むせかえるほどの加齢臭を漂わせながら、ハイテク感みなぎるガジェットVFXを凌ぐ演技バトルが繰り広げる。特にロックウェルに関しては、実は彼も前作で主役候補に挙がっていたことから、アイアンマンに対するネチっこさはひとしおだ。一方、サミュエルの出番は2シーンのみだが、次回作として起動しはじめたヒーロー大集合ムービー『アヴェンジャーズ』の伏線としてスタークを仲間に引き入れようと画策する。このメンツに押され、チードルはかなり影が薄い。

そして、くせものなのはジョン・ファーヴローだ。この映画の監督にして役者でもある彼が、前作以上に自分の出番を用意して暴れている。もうあわよくば俺も次回作でアヴェンジャーズに編入させてくれと主張せんばかりに。しかし誰も口は出せまい。だって彼は製作総指揮でもあるのだから。

John_3
まあ、アフガニスタンの監獄でゼロからロボをこしらえて脱出してみせた前作の圧倒的な面白さに比べると今回のストーリー的に弱めではある。中盤は対戦アクションがごっそり抜け落ち、いささか説明的に陥ってしまう。しかし考えてもみてくださいよ。イケメン若手が大挙出演するシリーズがもてはやされる時代の中で、こんなにもオジサマ方が頑張ってる。なんだかそれだけで満足できる。これはかなり画期的なことなのだ。

↓このブログが参考になったらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/11

"Babies"予告編はやばい

最近、身近な友人たちが出産ラッシュなのだが、日に日に成長していく彼ら親子の姿を重ね合わせながらこの予告編を目にすると、なんだか泣けてきた。まだ日本で公開されるかも分からない赤ちゃんドキュメンタリー"Babies"である。ま、能書きはいいから、とにかくこれ、観てみてくださいよ~!

ナミビア、日本、アメリカ、モンゴルと、それぞれ気候も文化も全く違う地球上の4つの舞台で紡がれゆく赤ちゃんたちの成長記録。予告だけでも壮大な神話を目にしている気分になりませんか?

Babies
全米534館で先週末公開を迎えた本作は、なんと母の日だけでインディペンデント映画としては異例の100万ドルを稼ぎ出したそう。全体の興収ランキングでも9位に食い込む健闘ぶりを見せている。indieWIREの取材に対してフォーカス・フィーチャーズの担当者は「この映画が人々の関心を捉え、母の日のイベントとして観客が劇場へ足を運んでくれたことは想像に難くない」と語り、そのうえでも、かねてより劇場でのリアクションが上々だった予告編の効果を認めている。

映画のクオリティのほどは分からないし、予告編だけは素晴らしかったのに、ってのもよくある事例だけれど。。。とにかく今のところ気になる一作です。

*加筆*
予告編に使用されている楽曲はなんなんだ?というメールを幾つかいただきました。
調べてみるとSufjan Stevens(スフィアン・スティーヴンス)のThe perpetual self, or "What would Saul Alinsky do"というちょっと長めのタイトルの曲みたいです。"The Avalanche"というアルバムの収録曲。

↓この記事が参考になったら押してください

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

グリーン・ゾーン

“ジェイソン・ボーン”シリーズの最強タッグ、再び。本作は“ジェイソン・ボーン”シリーズの続編ではないものの、そこで培った手法や息遣いを更に進化させた戦争アクションであり、アメリカ主導で突入したイラク戦争で「大量破壊兵器はなかった」という結論に至るまでに“ありえたかもしれない物語”を付与したリアリティに満ちたフィクションでもある。

Green_zone_3

先に事実に触れておいた方がいいだろう。本作は全米公開時に大コケした。製作費1億ドルの大作なのにもかかわらず、米国内だけでカバーできた興収が3500万ドル。世界興収も累計8000万ドル未満にとどまっている。

この結果に関係者は大いに落胆したという。作品が当たらなかったから、というよりは、批評家や各メディアにより作品の評価は高く保証されていたのに肝心の観客が振り向いてくれなかったからだ。ここにはまず「イラク戦争モノは当たらない」とする消費者傾向がそのまま反映され、なおかつ3月中旬の全米公開当初はオスカーを獲得した『ハート・ロッカー』が旋風を巻き起こしている時期でもあり、「第2の戦争モノ」など眼中にも入らなかった、と言えるのかもしれない。(『ハート・ロッカー』も歴代オスカー受賞作の中では最低興収を記録していると言われている)

作品の評価は時流やジンクスを越えられなかった。だが製作者らにとってもこれが厳しい戦いとなることは初めから分かっていたはずだ。それでも切り込まざるを得なかったのはそのキャリアをジャーナリストとして始動させ、世界の紛争地域を取材してきたポール・グリーングラスの条件反射とも言える決断にあったのだろう。つまり、この戦争を描かずには前に進めなかったのだ。

グリーングラスと言えば映像の仕事はもとより、執筆の仕事でも英国諜報部の極秘事項に迫った書籍を出版し、見事に発禁処分を食らったりもしているツワモノである。そんな彼が時流やシンクスにひるむわけがない。

Greenzone

彼の語り口はいつも被写体と受け手とのあいだにある壁を取りはらい、観客をこれまでにないほどの臨場感へと突き落とす。ドキュメンタリー・タッチの社会派サスペンス『ブラディ・サンデー』『ユナイテッド93』、それにアクション映画に革命を起こした『ボーン・スプレマシー』&『ボーン・アルティメイタム』(リンクはすべて拙ブログ記事へ飛びます)。どちらも臨場感は群を抜き、たとえ作りものであろうとも、そこに醸しだされる真実の空気を活写しようとする気概が感じられる。まさに『グリーン・ゾーン』はそれらのドキュメンタリー+アクションを融合させた迫真の映像になり得ている。現代の最重要映像作家のひとりに数えられる彼の最新作でけに、観て損は無い。

ただし、すべてにおいてグリーングラスの肩を持つわけではない。『ユナイテッド93』や『ハートロッカー』で撮影監督を務めたバリー・アクロイドの映像はクライマックスのチェイスなどでかなり手ブレが激しく、臨場感は充分すぎるほど伝わるものの、やや目が疲弊する。“ジェイソン・ボーン”シリーズの撮影監督オリバー・ウッドならばこれに巧く対処できたのではないだろうか。

また未だに混沌の続くイラクにおいて、その映像は見事であるものの、どこかプロット的な技巧が先行してしまうきらいがあり、かねてより映像から感情を呼び覚ましてきたグリーングラスなだけに、今回は意図せずしてあらかじめ決められていた着地点を踏んでしまった感が否めない部分もある。戦争モノを描くにあたってのこのジレンマは今後も検証されていかねばなるまい。

何はともあれ、本作もやはり時代の影響を強く受けたアクションに仕上がった。時代の求める映像がここにあろうと、なかろうと、今後の戦争orアクションを語るのに欠かせない一本であることに変わりはない。

↓このブログが参考になったらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/10

全米ボックスオフィスMar.07-09

先週までの復習は各自こちらで行ってください。

【Mar.07-09 weekend 推計

01 Iron Man 2 (-)
02 A Nightmare on Elm Street
(↓)
03 How to Train Your Dragon (→)
04 Date Night  (↓)
05 The Back-Up Plan (↓)
06 Furry Veangeance (↓)
07 Clash of the Titans (→)
08 Death at a Funeral (↑)
09 The Losers (↓) Babies(-)
10 Babies (-) The Losers(↓)

■毎年5月は映画界にとって夏興行開始のゴングと言われる。“母の日”を含む週末には似つかわしくなく、加齢臭すら香りそうなオジサマ・ヒーロー映画アイアンマン2』が、オープニング3日間で推計1億3360万ドル1億2810万ドルを売り上げ、ぶっちぎりで週末興収ランキング首位を獲得。主演のロバート・ダウニーJr.もその人気ぶりを更に更新することとなった。彼のフィルモグラフィーを振り返ると。。。

03_2
■彼がここへ至るまでにはアイアンマン以上の変身の遍歴があったわけだ。

■さてこの『アイアンマン2』は過去最大となる上映規模4380館を擁し、封切前の興収予測では「『ダークナイト』のオープニング記録を抜くか!?」と期待されていたが、フタを開けてみるとそこまでの盛り上がりには至らず。でも高数値であることに変わりはない。この興収は2008年公開の前作(9860万ドル/累計:3億1841万ドル)を余裕で上回り、歴代オープニング記録としても5位に相当(ダークナイト→スパイダーマン3→ニュームーン→パイレーツ/デッドマンズ・チェスト→アイアンマン2)。すでに4月末より封切られた他国の分を加えると、現在までの世界興収は3億2700万ドルとなり、すでに製作費の2億ドルもカバー済み。

■なお、本作は3Dではないにも関わらず、IMAXにおける2D作品のオープニング興収記録を打ち立てた(1020万ドル)。前記録保持者は『スタートレック』(850万ドル)だった。

■これを受けて2位以下は惨憺たる結果となった。先週の覇者『エルム街の悪夢』は2位へダウン。推計興収917万ドル。通常、公開一週目と二週目の週末興収は50%程度の下落を許容範囲とするが、本作に関してはなんと先週比72%落ち。それでも累計では4853万ドルとなり、製作費の3500万ドルを越えている。7週目の『ヒックとドラゴン』は676万ドルを売り上げ3位。累計は2億100万ドルに達した。4位の"Date Night"は興収5300万ドルで、累計8000万ドルに到達。先週と同じ7位にとどまった『タイタンの戦い』は累計を1億5780万ドルとした。

この記事が参考になったらクリックをお願いします。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

ザッツ・マジックアワー

2度のオスカー受賞、現アカデミー協会副会長。。。そんな偉大な父トム・ハンクスの影に隠れ、どう贔屓目に見えても派手とは言えない息子コリン・ハンクス。そんな彼が実生活で“結婚”という名の主演の座に立ったという。お相手は、亡き母と同じ“サマンサ”という名のパブリシスト。これは素直にめでたい。ということで、婚礼を祝して、彼の代表作にして日本未公開作「ザッツ・マジックアワー/ダメ男ハワードのステキな人生」をご紹介。

Thegreatbuckhoward_5

本作でさえもコリンは受け身だった。つまり引き立て役。映画の中での彼は、ジョン・マルコヴィッチ演じる奇術師バック・ハワードの付き人としてアメリカ津々浦々を営業して回る。その大半は田舎町だ。観客も中高年が多い。

このハワードってのがよくわからないやつで、バッタもん臭さをプンプンさせながらも、いざショウが始まると、オールド・スタイルの奇術で観客をそこそこに楽しませ、最終的には拍手喝さいを浴びる。これには舞台袖に控えるコリンも「ほー!」と感心してしまう。「派手さは無いが、それなりに凄い」と。お言葉ですが、それはそのまま、俳優コリンに対する世間一般の評価でもあるんですけど。

Great_buck_2
っていうかマルコヴィッチも、よくぞこんな役を承諾したものだ。彼はときどきこういった変な役、変な演技に好んで身を捧げるところがある。『マルコヴィッチの穴』然り、『バーン・アフター・リーディング』然り。

そんな真偽不明の彼がひとたび催眠術をかけると・・・

Great_buck_howard_2_5
あらら、このとおり???
ますますもって才能の真偽のほどは分からずじまい。
ちなみに本作は、ショーン・マッギンリー監督がその若かりしときに実際に付き人をしていた“とある奇術師”をモデルにしているのだそう。

人には誰でも、ひとつやふたつ、自分の理解を越えた不思議な存在を、不思議なまま残しておきたいという願望がある。幼いころに見つけた謎の洞窟は謎なままで今も変わらず故郷に存在していてほしいし、絶対カツラだと噂されていた高校教師の素の姿など今さら見たいなどとは思わない。魔法は魔法のまま、ずっと効力を保ちつつ、記憶の中で輝き続けてほしい。

本作のマルコヴィッチ&コリンにもそれと同じものを感じる。ほんの束の間、魅了し、魅了された関係性。これは本当に取るに足らない映画だが、油断して見ているとミョーに人生の普遍性に触れる瞬間がある。

Colinandtom_2
本作のプロデューサーを務めたトムも、ちゃっかりコリンの父親役として登場。ずっと伏せ目がちだったコリンの胸中にはどんな想いが去来していたのだろうか。 


↓このブログが参考になったらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/09

『ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式』より

Death_funeral
Life isn't simple, it's complicated.  We're all just thrown in here together, in a world full of chaos and confusion, a world full of question and no answers. Death always lingering around the corner, and we do our best. We can't only do our best, and my dad did his best.

人生は簡単にはいきません。実に複雑です。
誰もがこの混沌と混乱の世の中に生まれ落ちました。
謎だらけでひとつも正解のないこの世界に。
死は常に我々の周りで身を潜めています。
だから我々は精一杯生きる。
それしか術はありません。
父がそうしたように。

ダニエル・ハウエルズ(長男)

↓応援どうぞよろしくお願いします。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/08

ホームレス・ワールドカップ

6月に南アフリカで開催されるサッカー・ワールドカップのことは誰もが知っている。
では、ホームレス・ワールドカップはご存じだろうか?

Kickingit_2 

こんな大会があったなんて全く知らなかった。2001年に発案されたこの大会は各国のホームレス男女によるミニサッカー国際大会である。5月8日より渋谷ライズXにて公開となるドキュメンタリー『ホームレス・ワールドカップ』はその2006年大会の模様を追いかけた作品。48もの国の代表選手500人が南アフリカのケープタウンへ集い己の限界を越えていく様を記録している。

「なぜ、ホームレスにサッカーを。。。?」 おそらく皆がそう思うだろう。その理由について本作はあまり声高に主張しない。言葉で説明するよりも、まずこの過程を見てくれて言わんばかりに、各国のホームレスたちが集団に属しチームプレーに徹することを学び、勝利の喜び&敗北の悔しさを全身で体現する姿を見つめ続ける。

路上で生活するということはある意味“サバイバル”だ。ピッチに立つ彼らははじめ、敵にも仲間にもひどくケンカ腰にあたる。その攻撃性こそ彼らを路上で生きながらえさせてきた原動力といっても過言ではない。しかしコーチたちは「ここではそうはいかない」と言う。

「相手や仲間とやりあっても意味がないぞ!良い試合に徹することを覚えるんだ!」

選手から次第に怒りが消滅していく。対戦相手やチームメイトへの尊敬の念が芽生え始める。そして何より勝ちたい、這い上がりたいと望むようになる。ケニア、アメリカ、アフガニスタン、アイルランド、ロシア、スペイン。。。ピックアップされる代表選手はそれぞれにバックグラウンドが違うが、それぞれのやり方で国家の重みを背中に感じてベストを尽くす。その姿は淡々としていながら、仄かな闘志を感じる。

またもやドキュメンタリー作品が、ほんの小さな壁穴から全く見知らぬ世界を垣間見せてくれた。

↓このブログが参考になったらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/07

ザ・ロード(BOOK)

世界終焉の絶望的ランドスケープを、父子がゆく。。。The_road_2 

原因は分からない。それは突如として巻き起こった。生き残った父と幼い息子は、ショッピング・カートに荷物を詰め込み、まるで子連れ狼のごとく大陸を移動していく。腰元には一丁の拳銃。護身というよりは自殺用だ。あるいは最後のその瞬間が訪れるまでの護身用、と言ったほうが正確かもしれない。ときどき遭遇する人間はみな生き残るために心を捨てた者ばかり。奪い合い、傷つけ、そしてひもじさのあまり人肉を口にする者までいる。そんな中、父は幼子の健気な質問に答え続ける。この子がいなければ父は簡単に人間性など忘却できたのかもしれない。しかしいま目の前には息子がいる。だからこそ彼らは絶望的な世界の中でも“善き者”であり続けようとする。

「ぼくらは火を運んでいるんだ」

この一言が幾度も繰り返される。読者ははじめこの意味が分からないが、彼らの旅を通じて徐々におぼろげながらその意味するところが掴めてくる。これは父から子へと受け継がれていく“生命の授業”と言えるのかもしれない。人間の寄る辺が余すところなく消滅してしまった世界で、人間は何を目撃し、いかに苦しみ、何を神に問いかけ、そして身近な者へ何を伝えていこうとするのか。ずっと父親の視点に肉薄していたはずの語り口がやがて幼子によって牽引されるとき、誰もが本作をただのSF黙示録とは思わないはずだ。これはおそらく、誰もが体験する、とてつもなく身近な物語であるに違いない。

著者は現代の最重要作家のひとりとして数えられるコーマック・マッカーシー。高齢になって授かった幼い息子を見つめながら、ああ、この子が大人になるとき、世界はどうなっているだろうか、と想像しながら執筆にあたったようだ。映画化された彼の作品には『すべての美しい馬』や『ノーカントリー』が挙げられる。そして本作の映画版も昨年全米公開。6月末には日本でも封切られる。父親役にはヴィゴ・モーテンセン。彼の温かくも、息子のためなら冷徹にだってなれる激しさが、観賞後ずっと、心のなかに光と影を遺し続けている。

↓このブログが参考になりましたらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/06

9 <ナイン>9番目の奇妙な人形

あなたの背番号は、何番ですか?
9_movie_2 
アメリカでは2009年9月9日に封切られたこの風変わりなアニメーションがいよいよ日本にも上陸。

きっかけはひとりの男が卒業制作として手掛けた11分の短編アニメーションだった。その独創性とクオリティの高さに魅せられ、ダーク・ワールド大好きなティムール・ベクマンベトフ(『ウォンテッド』『ナイトウォッチ』)やティム・バートンらはすぐさま自らの手で長編映画化しようと考えた。しかしすぐにそれは得策ではないと思い至る。むしろこの30代の新人シェーン・アッカーという才能を世に紹介すべきではないか、と。そうしてベクマンベトフ&バートンが製作として関わる中、ひたすら陰影の濃い長編アニメとして生まれ変わったのが『9 ナイン』である。

目覚めると、世界は滅亡していた。

人類は死に絶え、空には暗雲が垂れこめている。この不気味に荒廃した世界を、自分が何者かもわからない奇妙なキャラクターがトボトボ歩く。胸元には大きなチャック。背中には「9」という謎の番号。

やがて彼は自分と似た造型の仲間たちと出逢う。名前を持たず、互いを「1」から「8」までの数字で呼び合う彼らは、「9」と同じく、生まれつきその数字を背中に宿していた。そしてふと気を緩めると、彼らを狙って恐ろしい機械仕掛けのモンスターらが容赦なく襲い来る。。。

9_2 
確固たるヴィジュアリティに支えられた終末論的な世界観に加え、この戦闘シーンがひとつの見せ場となる。モンスターの動きや仕掛けにも様々な趣向が詰めこまれ、観客が予想だにしない大胆なカメラワークで攻守を描く。彼らは人間ではないゆえ、ボロボロに傷つきながら、なかばぶっ壊れそうになりながらもまだ闘える。その安全装置を解除したようなスピード感と予想不可能性の連続が次第にボディブローのように効いてくる。他のアニメーションとちょっと違うぞという想いが確信へと変わる。

暗黒にうごめく緑色の蛍光色。そのコントラストが『マトリックス』を彷彿とさせる。アクション面では紅一点「7」(VC:ジェニファー・コネリー)の身のこなし&シルエットが『鉄コン筋クリート』のクロと重なって見える。また闘う仲間が9人という設定はまさに「サイボーグ009」のお家芸だが、クリストファー・プラマーがヴォイスキャストを務める爺さんキャラ「1」には、どこか『七人の侍』の志村喬を思い起こさせる佇まいもある。

至るところに過去の名作のエッセンスを感じるが、それが嫌味として照射されることはない。むしろ新人らしい諸先輩たちへの溢れんばかりのリスペクトとして受け止めた。本作もこの先、先人の志を継ごうとする者たちにとっての力強い灯火として輝き続けることだろう。

↓このブログが参考になったらクリックをお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/05

プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂

ゲームが原作、プロデューサーはブラッカイマー。もうこれだけで条件反射的に胸焼けしてしまう人、案外たくさんいるのではないだろうか?

Princeofpersiaposter_3 
ペルシャが舞台なのに肌の浅黒いキャストは皆無に等しいし、使用言語も英語。これはある意味、レンズで偏光された独自のペルシャ。こうやってハリウッドは、歴史上、その手のひらの上に世界を捏造することで世界の中心でありつづけた。その製作過程も含めてひとつのファンタジーが成立していると言っていい。

と、ご都合主義の洪水に溺れそうになりながら、ふと立ち止まって考え込んだ。おかしい。。。これは面白い。『プリンス・オブ・ペルシャ』はよくできているのではないか?あまたの大作が3D公開を決め込む中、歴史の潮流に乗り遅れたみたく2D仕様なのに、である。

幼き日、ペルシャの街で見せたほんのささやかな勇気と度胸が王様の目にとまり、養子に迎えられた主人公ダスタン(役柄上の出自が分かるアクセントにも注目)。数年後、精悍な王子に成長した彼だったが、聖都アラムート陥落の功績を讃えられたのも束の間、とつぜん身に覚えのない父(王)殺しの嫌疑をかけられ、囚われの身だったアラムートのタミーナ王女とともにその場を強行突破して砂漠へ逃亡する。いったい誰が彼に濡れ衣を着せようとしているのか。。。?そして真犯人の目的は何なのか?

Princeofpersia_2

筋肉ムキムキに鍛え上げたジェイク・ギレンホールが魅せる。大方を自らがこなしたというアクションシーンは、ゲーム原作らしく「Aジャンプ」を連打したかのような跳躍に次ぐ跳躍。住居が密集したペルシャの街を屋根づたいに自由自在に飛び交うこのアクロバティックな身軽さが映画の基調トーンとなって幾度も現れる。僕らはこの目くらましのようなシーンにすっかり気を奪われ、あたかも本作が歴史スペクタクルであるかのような錯覚を起こしてしまう。そして中盤からの思いがけなくもファンタジックな展開の数々に、またも魅了されてやまなくなる。

このサブタイトルにもなっている「時間の砂」というファンタジー要素が、この映画2時間分を極上のトリックで包み込んでくれる幸福感。うーん、なるほど!そう来ましたか!

Persia_5
監督は『フォー・ウェディング』『フェイク』『モナリザ・スマイル』や『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』を手掛けた名匠マイク・ニューウェル。ハリー・ポッター役のダニエル・ラドクリフをして「彼ほど声が大きく、なおかつ英国人らしい人はいない」と言わしめるニューウェルが、まさかスペクタクルを手掛け、しかもブラッカイマーと組む時代がくるなんて誰が想像しただろう?

いかにハリウッド化されようともニューウェルらしい美しい映像はいまだ健在だ。そして『ハリー・ポッター』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』、時おり『グラディエーター』さえもブレンドしたかのような香りが立ち込める。もちろんディズニー流に濃度を薄めてはあるのだが。

ここ最近のエンタテインメント系ではかなりの出色の出来。広大な(はずの)砂漠で「偶然の出逢い」が多すぎるのは玉に瑕だが、まあ、全体の時間的配分を考えれば致し方のないことか。米政府によるイラク攻撃がひとつのモチーフとなって投影されている仕掛けもヒネリがあって面白い。

↓おかげさまで少しずつ上昇中です。引き続き応援よろしくお願いします!

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/04

『アバター』より

Quaritch_2

If there is a hell, you might want to go there for some R&R after a tour on Pandra.

この世に地獄があるとしても、パンドラと比べりゃリゾートだぜ。
(もし地獄があるなら、パンドラめぐりのあとにそこで休暇を取りたくなるだろうよ)

マイルズ・クオリッチ大佐

R&R・・・Rest&Recreation 米軍で言うところの保養休暇

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/03

全米ボックスオフィスApr.30-Mar.02

先週までの復習は各自こちらで行ってください。

【Apr.30-Mar.02 weekend 推計

01 A Nightmare on Elm Street (-)
02 How to Train Your Dragon
(↓)
03 Date Night (→)
04 The Back-Up Plan (↓)
05 Furry Veangeance (-)
06 The Losers (↓)
07 Clash of the Titans (↓)
08 Kick-Ass (-)
09 Death at a Funeral (↓)
10 Oceans (↓)

■連休いかがお過ごしですか?全国的に天気は快晴ですが、どんなに行楽の計画を綿密にプランニングしようとも、その日の夢の中までは制御できないのが人間の性質ってもの。そして、全米ボックスオフィスの夢の中には、皆が寝静まったころ、あの男―フレディ・クルーガーが帰ってきたようです。

Anightmareonelmstreet_2
■やはり伝統のホラーは強かった。1984年に第一作目が公開された『エルム街の悪夢』のリブート版が週末興収3,220万ドルを売り上げボックスオフィス・ランキングNO.1を獲得。観客の男女比は半々のようで、25歳以下が60%を占める。マイケル・ベイ製作の本作でフレディ役を演じるのは、『がんばれベアーズ』の不良少年、『リトル・チルドレン』での怪演、そして『ウォッチメン』でも語り部的役割を演じたジャッキー・アール・ヘイリー。それでは変遷をたどってみよう。

Haley02

■先週No.1に返り咲いた6週目の『ヒックとドラゴン』はワンランク・ダウン。推計1082万ドルを計上して累計を1億9,238万ドルとした。世界興収では4億ドル到達間近。本作と『アバター』の興収推移から、「手間暇かけた3D作は封切初期の客足は爆発的とまではいかないが、その分、持続的に人気が続く」ということが言えそうだ。3位には"Date Night"が3週連続でこの順位をキープ。累計は7,360万ドル。1億ドル到達はちょっときついか。

■ジェニファー・ロペス主演のロマ・コメ"The Back-Up Plan"は先週比41%落ち、通常の2週目は50%ほど落ちるのだが、本作は少しだけ粘りを見せた。累計は2,300万ドル。製作費の3500万ドルを完済できるか?興収的には全く芳しくないが"The Losers"も先週比たったの36%落ち。初登場、ブレンダン・フレイザー主演の"Furry Vengeance"は650万ドルの興収しか上げられず、5位。このタイトルだと誰もが壮絶なアクションを期待してしまうが、内容は動物いっぱいのコメディ。

■7位タイタンの戦い』の累計は1億5400万ドル、ついにトップ10を脱落したアリス・イン・ワンダーランド』(12位)の累計は3億3000万ドル目前となっている。なお、週末興収の合計総額は『ウルヴァリン:X-Men Zero』が封切られた昨年の同時期に比べ35%ほど下回っている模様。だが今週末からはいよいよ全米で『アイアンマン2』が封切られる。一転して大嵐となることは確実だ。

この記事が参考になったらクリックをお願いします。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

『バットマン』より

Joker02 I'm only laughing on the outside. My smile is just skin deep.
If you could see inside...I'm really crying. You might join me for a weep.

おれの笑顔は見せかけだけだ。ほんのツラの皮一枚の笑いでね。
その下で、ほんとは泣いてるんだ。きみも一緒に泣いてくれ。

ジョーカー

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/02

ペルシャ猫を誰も知らない

この熱気。無軌道ぶり。そして、純粋なる音楽への情熱。
視覚と聴覚を通して、イラン・アンダーグラウンド・ミュージックの血潮が流れ込んでくる。

Persiancatsposter_2
バフマン・ゴバディの過去の作品を知る人ならば、この『ペルシャ猫を誰も知らない』"No One Knows About Persian Cats"の作風に多少驚くことだろう。なにしろ本作の舞台はテヘラン。ゴバディが出逢った男女ポップス・ユニット(彼らの演奏は超うまいわけではないが、何とも心に響くのだ!)を主人公に、フィクションともドキュメンタリーともつかない不思議な臨場感を持った物語が勢いよく走り出す。彼らは自由の制限されたこの国に別れを告げ、ロンドンで音楽活動を始めようとしている。そして出国の前に偽装パスポート取得と、念願のアルバム制作と、一度きりのコンサートが出来ないものかと画策する。

そのためには臨時のサポートメンバーを探さねばならない。ポップス、ロック、ブルース、ヘビメタ、ラップ。彼らは便利屋のナデルにいざなわれ、テヘランのアンダーグラウンド・ミュージック界をくまなく巡りつづける。

No_one_3

イランは10年前のおおらかさとは比べ物にならないくらいに変わってしまった。いまや音楽活動を続けるのにも当局の許可が必要なのだという。とくにMTVの影響をモロに受けたような軽音楽を演奏しようものなら、それが練習であっても近所の住民にすぐさま通報されてしまう。でもそんな状況でも自らの音楽を追究しようとする若者たちがいる。地下の秘密のスタジオで、防音装備に抜かりなく、すぐに停電する不安定な電力状況にも決してめげない。

そして彼らの音楽と同じく、この映画だって無許可で撮られたシロモノなのだ。バフマン・ゴバディが国を捨てる覚悟でたった17日で撮りあげたヴィヴィッドな音楽絵巻。登場バンドがひとたび音楽を奏でると、テヘラン市内で活写されたむせかえるほどの喧騒がダイナミックに切り貼りされていく。砂埃、ビルディング、大渋滞。どこの国、どこの街でも変わらない空、雲、夕日。それらを一言でMTV風、PV風ということも可能かもしれないが、僕にはその1カット1カットがゴバディからこの街への最後のラブレターとして映った。

この映画のエンディングも画期的だ。スタッフ&キャストのクレジットは下から上ではなく、右から左へと流れていく。それはあたかもすべての人間が横一線に平等であるのを示すかのようで、なおかつ楽譜に息づく音符をも思わせる。つまりは、そのすべてが連なって、映画という唯一無二のメロディーを生み出していたということか。

↓本ブログは皆様からの応援クリックを糧に運営致しております。

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

2010/05/01

ブライト・スター

試写前、会場には映画のサウンドトラックが流れていた。小鳥のさえずり、遠くから聞こえる鐘の音、そこに手のひらを重ね合わせるかのように音楽が、そしてジョン・キーツの詩がやさしく響いてくる。この、くしゃみでもしようものなら、すべてが崩れてしまいそうな繊細な構築物、スピリチュアルな空間。。。

幕が開いてもその触感は変わらないどころか、ますます研ぎ澄まされた。昨年のカンヌで絶賛されたジェーン・カンピオン監督作『ブライト・スター』は、まさに魂の浄化ともいうべき至福のひとときをもたらしてくれる。

Brightstar7304_4
舞台となるのは19世紀初頭のロンドン郊外、ハムステッド。美しい草花に囲まれた風景の中で詩人ジョン・キーツと、その恋人ファニー・ブローンが出逢い、互いを想いあう日々を描く。ベン・ウィショー(『パフューム』の主演)の演じるキーツは貧しい中で身を削るようにして創作活動に打ち込み、紡ぎだす一言ひとことによって読者を酔わせては、その一方で新刊を評論家に酷評されたりもする。その姿は60年代のモッズ期のミュージシャンをも思わせる。対するブローンは手先の器用さを武器に、自分の衣服やドレスをいかようにも仕立て上げる才能を持つ。現代風に言えば“自立する女性”だ。

そんなふたりが、この悠久の時が流れゆく自然の中で、さもそうなることが自然の摂理でもあったかのように、心を通い合わせ、愛を奏でる。その姿が、言葉を廃しても映像だけで意味が繋がっていく。まさにジョン・キーツの詩の世界を、そのまま音と光と愛情とで翻案したかのよう。目で見る、物語を楽しむ、というのではなく、心で感じる映画ということができるかもしれない。

Brightstar2_3
もともとジェーン・カンピオンはこのように詩情あふれる映像造型が得意な人だが、まさかこれほどまでとは思わなかった。上映中、ずっとテレンス・マリック作品のようだと感じていた。それほどの陶酔感。そしてやはり子役の使い方が巧いのだ。劇中に登場する女の子の表情を写し鏡にしてこそ、キーツ&ブローンの愛情が崇高で無垢なるものに思えてくる。

英国最高の詩人と称されるキーツは、結核を患い、25歳の若さでこの世を去った。

そして「ブライト・スター」という詩が残った。それはブローン宛てに書かれた愛の詩だった。

↓この記事が参考になったらクリックをお願いします

TOP】【レビュー】【TWITTER

| | トラックバック (0)

「アクターズ・スタジオ~マット・デイモン編」より

Actorsstucio_2「昔からずっとミッキー・ロークのファンだった。『レインメーカー』で念願の共演が叶ったとき、彼は新人の僕をセット裏に連れ出してこう言ったんだ。『いいか、絶対オレみたいになるな。時間を守り、周囲に対して常に謙虚であれ。俺は若い頃にそれを怠った。。。君はオレとは違って若いんだし、それにいま、凄いチャンスをつかんでるんだよ』」

| | トラックバック (0)

« 2010年4月 | トップページ | 2010年6月 »