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2010/05/16

ユゴーの不思議な発明(BOOK)

先日、マーティン・スコセッシの次回作として驚くべき作品が発表された。

Hugo   
児童文学である
。しかも3D作品として製作されるという。巨匠が長年温めてきた遠藤周作原作の「沈黙」の映画化を後回しにしてまで(今回は製作開始ギリギリのところまでいったのに!)取り組まざるを得なかった本作「ユゴーの不思議な発明」とはいったいどんな作品なのだろうか。

それは子供向けにしてはあまりに分厚いハードカバーだった。全部で600ページ近くある。しかしすべてが文字ばかりというわけではない。文字ページが続いたなと思ったら、続いてページをめくるや、イラストのつぶてが矢継ぎ早に挿入されていく。まるで映画の絵コンテのよう。つまり本作は時おり鮮やかに言葉を消滅させ、絵がその語りを代弁する瞬間を数多く有しているのだ。

舞台は1931年のパリ駅。構内の時計を管理する少年ユゴー・カブレには秘密があった。彼の部屋には壊れたカラクリ人形が一体。それは机に向かってペンで何かを書きはじめる態勢のまま止まっている。ユゴーはいつの日かこれを修理し、人形がいったい何を描くのか、この目で見たいと願っている。そのためには人形のからくりを研究し、足りない部品をどこかからか調達しなければならない。今日もおもちゃ屋でヒョイと手を伸ばしてはお目当ての部品の詰まったおもちゃをポケットへ、と思ったら、店主に腕を掴まれ。。。

はじめのほうは幻想的なファンタジーなのかと思っていた。けれど、中盤から愕然とした。こ、これは・・・映画だ!原作を彩る最重要のエッセンスとして「映画の誕生」が用いられているのだ。なるほど、舞台がリュミエール兄弟のお膝元のパリなのも納得だ。それに、本作にはあの映画監督までもが、象徴的な映画写真と共に登場する。そもそも後に映画監督と呼ばれた人たちは、それ以前にどんな職業に従事していたのか。どういう発想で映画のトリックが生まれたのか。これはあくまでフィクションだが、そこに発露している想いはおそらくその原風景と変わるまい。

そして期せずして、物語の展開には、スコセッシが創立したWorld Cinema Foundationの理念があふれ出す。世界には今にも倉庫の片隅で人知れず腐敗した貴重なフィルムが数多く存在する。それらを保存し、修復するのが彼らの掲げる最重要課題だ。本作のクライマックスにも。。。おっと、これ以上はネタばらしが過ぎる。

少なくとも本作は3Dの質感に打ってつけだ。立体的に映し出されるパリの街並みと、数多く登場する機械仕掛け。それからあの名作映画たち!もしかすると、リュミエールの『列車の到着』や、ハロルド・ロイドの有名な宙ぶらりん場面、はたまた映画史上もっとも有名な「月の顔」さえも新たな3D体験として享受できるのかもしれない。今から完成が楽しみだ。

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