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2010/05/01

ブライト・スター

試写前、会場には映画のサウンドトラックが流れていた。小鳥のさえずり、遠くから聞こえる鐘の音、そこに手のひらを重ね合わせるかのように音楽が、そしてジョン・キーツの詩がやさしく響いてくる。この、くしゃみでもしようものなら、すべてが崩れてしまいそうな繊細な構築物、スピリチュアルな空間。。。

幕が開いてもその触感は変わらないどころか、ますます研ぎ澄まされた。昨年のカンヌで絶賛されたジェーン・カンピオン監督作『ブライト・スター』は、まさに魂の浄化ともいうべき至福のひとときをもたらしてくれる。

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舞台となるのは19世紀初頭のロンドン郊外、ハムステッド。美しい草花に囲まれた風景の中で詩人ジョン・キーツと、その恋人ファニー・ブローンが出逢い、互いを想いあう日々を描く。ベン・ウィショー(『パフューム』の主演)の演じるキーツは貧しい中で身を削るようにして創作活動に打ち込み、紡ぎだす一言ひとことによって読者を酔わせては、その一方で新刊を評論家に酷評されたりもする。その姿は60年代のモッズ期のミュージシャンをも思わせる。対するブローンは手先の器用さを武器に、自分の衣服やドレスをいかようにも仕立て上げる才能を持つ。現代風に言えば“自立する女性”だ。

そんなふたりが、この悠久の時が流れゆく自然の中で、さもそうなることが自然の摂理でもあったかのように、心を通い合わせ、愛を奏でる。その姿が、言葉を廃しても映像だけで意味が繋がっていく。まさにジョン・キーツの詩の世界を、そのまま音と光と愛情とで翻案したかのよう。目で見る、物語を楽しむ、というのではなく、心で感じる映画ということができるかもしれない。

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もともとジェーン・カンピオンはこのように詩情あふれる映像造型が得意な人だが、まさかこれほどまでとは思わなかった。上映中、ずっとテレンス・マリック作品のようだと感じていた。それほどの陶酔感。そしてやはり子役の使い方が巧いのだ。劇中に登場する女の子の表情を写し鏡にしてこそ、キーツ&ブローンの愛情が崇高で無垢なるものに思えてくる。

英国最高の詩人と称されるキーツは、結核を患い、25歳の若さでこの世を去った。

そして「ブライト・スター」という詩が残った。それはブローン宛てに書かれた愛の詩だった。

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