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2010/05/11

グリーン・ゾーン

“ジェイソン・ボーン”シリーズの最強タッグ、再び。本作は“ジェイソン・ボーン”シリーズの続編ではないものの、そこで培った手法や息遣いを更に進化させた戦争アクションであり、アメリカ主導で突入したイラク戦争で「大量破壊兵器はなかった」という結論に至るまでに“ありえたかもしれない物語”を付与したリアリティに満ちたフィクションでもある。

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先に事実に触れておいた方がいいだろう。本作は全米公開時に大コケした。製作費1億ドルの大作なのにもかかわらず、米国内だけでカバーできた興収が3500万ドル。世界興収も累計8000万ドル未満にとどまっている。

この結果に関係者は大いに落胆したという。作品が当たらなかったから、というよりは、批評家や各メディアにより作品の評価は高く保証されていたのに肝心の観客が振り向いてくれなかったからだ。ここにはまず「イラク戦争モノは当たらない」とする消費者傾向がそのまま反映され、なおかつ3月中旬の全米公開当初はオスカーを獲得した『ハート・ロッカー』が旋風を巻き起こしている時期でもあり、「第2の戦争モノ」など眼中にも入らなかった、と言えるのかもしれない。(『ハート・ロッカー』も歴代オスカー受賞作の中では最低興収を記録していると言われている)

作品の評価は時流やジンクスを越えられなかった。だが製作者らにとってもこれが厳しい戦いとなることは初めから分かっていたはずだ。それでも切り込まざるを得なかったのはそのキャリアをジャーナリストとして始動させ、世界の紛争地域を取材してきたポール・グリーングラスの条件反射とも言える決断にあったのだろう。つまり、この戦争を描かずには前に進めなかったのだ。

グリーングラスと言えば映像の仕事はもとより、執筆の仕事でも英国諜報部の極秘事項に迫った書籍を出版し、見事に発禁処分を食らったりもしているツワモノである。そんな彼が時流やシンクスにひるむわけがない。

Greenzone

彼の語り口はいつも被写体と受け手とのあいだにある壁を取りはらい、観客をこれまでにないほどの臨場感へと突き落とす。ドキュメンタリー・タッチの社会派サスペンス『ブラディ・サンデー』『ユナイテッド93』、それにアクション映画に革命を起こした『ボーン・スプレマシー』&『ボーン・アルティメイタム』(リンクはすべて拙ブログ記事へ飛びます)。どちらも臨場感は群を抜き、たとえ作りものであろうとも、そこに醸しだされる真実の空気を活写しようとする気概が感じられる。まさに『グリーン・ゾーン』はそれらのドキュメンタリー+アクションを融合させた迫真の映像になり得ている。現代の最重要映像作家のひとりに数えられる彼の最新作でけに、観て損は無い。

ただし、すべてにおいてグリーングラスの肩を持つわけではない。『ユナイテッド93』や『ハートロッカー』で撮影監督を務めたバリー・アクロイドの映像はクライマックスのチェイスなどでかなり手ブレが激しく、臨場感は充分すぎるほど伝わるものの、やや目が疲弊する。“ジェイソン・ボーン”シリーズの撮影監督オリバー・ウッドならばこれに巧く対処できたのではないだろうか。

また未だに混沌の続くイラクにおいて、その映像は見事であるものの、どこかプロット的な技巧が先行してしまうきらいがあり、かねてより映像から感情を呼び覚ましてきたグリーングラスなだけに、今回は意図せずしてあらかじめ決められていた着地点を踏んでしまった感が否めない部分もある。戦争モノを描くにあたってのこのジレンマは今後も検証されていかねばなるまい。

何はともあれ、本作もやはり時代の影響を強く受けたアクションに仕上がった。時代の求める映像がここにあろうと、なかろうと、今後の戦争orアクションを語るのに欠かせない一本であることに変わりはない。

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