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2010/05/17

ビルマVJ 消された革命

VJといっても、ヴィデオ・ジョッキーのことではない。

Burma_vj_2   
それはヴィデオ・ジャーナリストのことだ。

安価で高性能なハンディカムや携帯電話のカメラ機能を駆使して誰もがジャーナリストになれる時代。軍事政権が市民の言論を弾圧するここビルマ(英語読みすると“バーマ”)では彼らの暗躍こそが、その実態を世界へ伝える貴重な情報パイプラインとなる。

誰もが口を閉ざしていたこの国で、2007年、ついに僧侶たちが立ち上がった。いつもは平和的とされる彼らが率先して集団となり、おびただしい数で道を覆い始めた。「ビルマで何かが起き始めている」世界のニュースがその報を伝え、そこには常にVJたちが撮影した映像が添えられていた。彼らは現地で撮影したフッテージを衛星回線を使って隣国へと送り、そこでネットワークを束ねる代表者の手によって世界中へ発信されていたのだ。

やがて僧侶の広げた輪に市民も加わり、街道には多くの声援が贈られるようになる。明らかに空気が変わろうとしていた。この生の映像が伝える高揚感。そして市民がアウンサン・スーチー女史へ寄せる聖母にも似た想い。それは平和的なデモのはずだった。しかし軍政はここに武力を投入。実弾の使用により脆くも人が崩れ落ちる。日本人ジャーナリストも犠牲となった。そして彼らなりのやり方で闘い続けるVJたちの身にも危険が及び、ひとり、またひとりと消息を絶ちはじめる。

Burmavj_filmstill1
このドキュメンタリーを構成するあらゆるフッテージが、まさに命がけで撮られている。彼らが魂をすり減らしながら記録した映像を僕らはどのような表情で見つめればいいのだろう。感動?怒り?それとも無力感?そのいずれかは分からないが、本作を見ながら、とめどなく涙があふれてきた。そこには映像の、圧倒的な迫力が存在した。世界中の観客が関心を寄せ、ビルマの未来に想いを馳せるに値する確実な磁力が存在した。

本作はアカデミー賞のドキュメンタリー部門にもノミネート。しかし結果的に『ザ・コーヴ』に惜敗を喫した。こういう言い方はイルカたちに対して申し訳ないが、コーヴとこれとでは題材の次元が全く異なる。まあ、そうした差異を踏まえたうえで勝敗を決めるのが賞の特性というものなのだが。。。両者とも事実を扱っているだけに、映画とはいえ、これに優劣をつけることには気が引ける。つまりはぜひ、どちらもご覧いただきたい。共に昨年のドキュメンタリー界を代表する作品であることに変わりは無い。

ちなみにこれはウィキペディアにも記載されていることだが、“ミャンマー”とは当地の軍事政権が89年に定めた国名であり、この正当性を認めないアメリカ、イギリス、オーストラリア政府やBBC、CNNをはじめとする各マスコミ、人権団体などは依然として"Burma"を用いている。対して日本の外務省は“ミャンマー”を用い、“ビルマ”を用いるマスコミも少ない。

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