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2010/06/30

ガールフレンド・エクスペリエンス

いわゆる”チェ・ゲバラ”2部作の興行的な失敗により、しばらく精神的に落ち込んでいたとされるスティーヴン・ソダーバーグ。こんな時、彼は原点回帰で自分の呼吸を整えるかのようにアーティスティックな作品を送り出してきた。

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ニューヨークを拠点に活動する高級コールガールが主人公だ。顧客はウォール街などで働くビジネスマンが多く、彼らの言動には先の金融ショックの影響が見て取れる。ただお金になるからというのではなく、何かカッチリした自分の理念を持って生きているようにも思えるこの女性。彼女の目線を通して、働くことの意味やお金の価値、人生の意味、貨幣を媒介に手に入れる愛の真偽といったものが“時代の空気”と共に浮かび上がってくる。ただし具体的なストーリーとしてではなく、あくまで静謐な映像美に漂う空気として。

ソダーバーグの映画にはかなりとっつきにくいところがある。が、そのとっつきにくさも彼が一部のファンから熱烈に愛されてやまない理由であることは『セックスと嘘とビデオテープ』以来おなじみだ。分かる人にしか分からないこの信号を、映像表現を介してキャッチ&リリースしつづけているかのような、この監督と観客の共存関係。

ただし『ガールフレンド・エクスペリエンス』から僕が感じたのは、ソダーバーグが明らかに悩んでいるということだった。ここで描かれるコールガールに、彼は恐らく自分自身を重ねている。観客をエンタ―テインすることは愛を交わすことにも等しい。でもそれがただの気持ちのいい表現だらけの快楽になっていないか?媚びになっていないか?押しつけになっていないか?映画監督たる者、観客のフラストレーションを快方へと向かわせる行為者でしかないのか?でも主人公(コールガール)の姿には彼女なりの生き方、闘い方、プライド、流儀が垣間見える。“満足させる側”としての葛藤が、『チェ』のあとだからこそ、より痛々しく、リアルに透けてみえてくる。

きっとこの主人公も「職業は何ですか?」と聞かれれば「アーティスト」と答える気がする。本作はそのまま現代におけるアートの定義としても問題提起をはらんでいるのではないか。

ちなみに、冒頭の場面で男女が“さきほど見た映画”について語っている。なにか架空の映画なのかと思っていたら、賞を受賞したとか、ワイヤーの上を渡るとか、ヤルのかヤラないのかどっちなんだ、とか。。。ああ、『マン・オン・ワイヤー』のことですか!

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