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2010/06/28

アウシュヴィッツ

これまでの流れはこちらをご覧ください。

あー、すみません、昨夏にアウシュヴィッツを訪問したときの記録が、途中で中断(挫折?)しておりました。「今年の夏に行こうかと思ってるんですが」とメールくださったNさん、ありがとうございました。あなたのおかげで再びきっかけを取り戻すことができました。

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アウシュヴィッツ博物館でもっとも衝撃的な展示物とされるものに、アウシュヴィッツ解放後に見つかったおびただしい数のトランク、メガネ、義足、人形、髪の毛がある。

ガラス板一枚に隔たれてフロアの大部分を覆い尽くしたそれらの品々が、かつて収容者から奪い取られたものであることは言うまでもなく、そのほとんどの持ち主がここから生きて帰れなかったであろうことを考えると、ガラスの向こう側がほんとうに時が止まったかのように見えてくる。で、ただ圧倒されているうちにどんどん神経が麻痺してくるんですね。気がつくと、「あれ?オレ、なにも感じてない?」という具合に。自分が生きてきた環境とあまりに違いすぎて、もう想像力がまったく追いつかない。映画の抒情的な音楽も、効果的なカット割りも存在せず、ここにはただ死の象徴が、死の時間が横たわっている。

肝心の展示物は写真撮影不可だったが、公式ホームページ(←直で画像一覧に飛びます)にてその模様を確かめることができる。

薄暗い展示室から外へ出ると、真夏の強い日差しが容赦なく降り注ぐ。すかさず日蔭を探すと、そのポジションはこんなところだったりもする。

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まるで生と死の境界線に立たされたような心境になった。

次にツアーが向かった先は、懲罰室や独房などがある棟。死のブロックと呼ばれている。コルベ神父が他人の身代わりになって刑を受け、餓死していった監獄もここにある。アウシュヴィッツ内を歩いていると、ところどころで花束やメッセージが手向けられている光景に出くわす。きっと誰かが命を落とした場所か、あるいはその方々にゆかりのある場所なのだろう。

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その棟の真横には「死の壁」があった。囚人らが銃殺された場所である。隣接する囚人棟の窓には覆いが施されている。これは銃殺の風景を見せないためだ。しかしどう視界を封じても銃声は容赦なく聞こえてくると思うのだ。囚人らが聴覚のみで想像する死の瞬間は、目で見る以上に恐ろしいものではなかっただろうか。この「覆い」というアイディアは果たして“優しさ”なのか、“残酷さ”なのか。あるいはそのどちらでもない、単なる機能上の簡素な仕組みでしかないのだろうか。

もう少し近づいてみます。

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「死の壁」は献花が絶えない場所として有名。同じ館内ツアー参加者の中にも花束を手向ける人が見受けられた。

しかし、ここでよくよく考えてみると、”銃殺”ということは、まだ“人間扱い”されていたことを意味する。そう、収容所も年を経るにしたがって”絶滅収容所”の様相を強くしていった。いかに効率よく生命を奪い、人種を絶滅へと追いやっていくかが冷徹につきつめられていく。

ふと、ガイドが「見えてきましたよ」と言う。皆がいっせいに顔を上げる。すると、木の茂みの狭間に一本の煙突が顔を出した。

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ついにアウシュヴィッツ博物館内の見学ツアーも終盤である。

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かつて看守らが口にした有名な言葉に、「お前たちがここを出ることがあるとすれば、あの煙突からだ」というのがある。入口は小さい。あまりの炎天下に顔を紅くさせ、足元もおぼつかなくなってきた僕らは、一列になってヨタヨタとこの施設へいざなわれていく。恐らくここを訪れたことのある人たちは、自分らの姿をかつての囚人たちにダブらせるのではないか。幸い現代となっては僕らを激しく叱責する看守もいなければ、殴ったり蹴られたりすることもない。70年近く前に広がっていた日常風景は、いまこうして”巡礼”というかたちで繰り返されているのだった。

内部は写真撮影不可だった。薄暗闇の中にロウソクが灯され、だだっ広い空間が広がっていた。その仄かな灯りがひとりひとりのツアー参加者の神妙な表情を浮かび上がらせる。

再び外に出るとあまりの眩しさに目が追いつかず立ちくらみに襲われた。そして真っ先に僕の視界に飛び込んできたのは、いま見てきたものからは想像もつかないくらいに気持ちよく晴れ渡った青空だった。

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こうやって僕ひとり、上を向いて空の様子をカメラに収めていると、アメリカ人らしいイントネーションのオジサンが近づいてきて、同調するみたいに頷きながら、

「うん、青すぎるよね。。。」

と呟いたのだった。

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アウシュヴィッツ博物館の見学はこれで終わった。しかしツアーはこれだけではなかった。あとは自由参加だ。無料シャトルバスに乗り込み、2キロほど進むと、ビルケナウ収容所に到着する。よく我々が目にし、耳にする「アウシュヴィッツ収容所」のイメージはむしろビルケナウのほうかもしれない。そこは気の遠くなるほど広大な、いわば死の野原だった。

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