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2010/06/18

闇の列車、光の旅

南米大陸にはまだまだ語り尽くせぬ物語が眠っているようだ。『闇の列車、光の旅』は遥かホンジュラスからアメリカまで、列車の背中に運命を託した青年と少女の長い長いロードムービーである。

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心を鷲掴みにされるとはこのことだ。多くのロードムービーは解放感にあふれ、旅や出逢いの醍醐味に満ちている。しかしここでは息苦しくひしめきあった命がけの脱出劇が刻まれている。

暴力が蔓延し、貧困が生活を圧迫し、未来の展望はなかなか見えてこない。そんな暗闇のトンネルをささやかな閃光が貫くように、一本の列車がゆっくりと走り抜けていく。車内、車外にはおびただしい数の乗客たち。皆それぞれに新生活を夢見て決死の旅に身を捧げている。誰かが言う。「無事に目的地までたどり着くのはこの中の5パーセントにも満たないだろう」。そこには家族と共に故郷を後にした少女の姿があった。そして地元のギャング団から追われたひとりの青年の姿も。ロミオとジュリエットのごとく出逢ったふたりの距離は、いつしか少しずつ縮まっていくのだが。。。

『シティ・オブ・ゴッド』や『そして、ひと粒のひかり』を彷彿とさせる“激しさ”と“静謐さ”が絶妙な匙加減で登場人物の運命を彩っていく。米国内でも不法移民の問題が度々取りざたされる中、キャリー・ジョージ・フクナガ監督は実際に列車に乗り込み、人々と言葉を交わして共に旅をし、その生々しい現実を脚本に落とし込んでいったという。

そしてもう一方のギャング団についても入念な取材を重ねた。実在する組織をモデルに、その統治形態やネットワーク、敵対組織との抗争の模様についても。その期間、約2年。この執念が実ったかどうかは作品を観れば一目瞭然。フクナガ監督はサンダンス映画祭でも監督賞を受賞し、その名を一気に世界へと知らしめた。ちなみに、お気づきのとおり、彼は日系アメリカ人だ。そして本作はガエル・ガルシア・ベルナル&ディエゴ・ルナらのサポートのもとアメリカとメキシコの合作として製作された。国境なんてモノともしない。映画の製作過程からして、これはとてつもないロードムービーだったのだ。

日本で暮らしていると、本作のような暮らしにはとてもじゃないが想像が及ばない。この映画を知ることで、知らない世界にまたひとつ手が届いたような気がする。それはあくまでバーチャルな体験でしかないのだが、少なくともキャリー・フクナガ監督のような新たな才能の出現により、これらの地域の人々と世界中の観客とが映画という針で穴をあけたような“視点”を介して繋がった。これはひとつの達成と言えるのだろう。

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