« 闇の列車、光の旅 | トップページ | トイ・ストーリー3 »

2010/06/19

ソフトボーイ

この映画の舞台は佐賀県、牛津の町だという。話は違うが、夏目漱石が留学先の英国で綴った日記にはオックスフォードのことを「牛津」と翻訳して紹介する箇所がある(コーヒーを珈琲、ハリウッドを聖林と表したりするのと同じですね)。『ソフトボーイ』を観た後にあらためて漱石の文章に触れると、彼の言う学術都市がにわかに水色の残像に彩られた風景として浮かび上がってくるかのよう。

本作は水色のユニフォームを着た部員たちが全国大会を目指す映画だ佐賀県内にソフトボール部がひとつも存在しないことに気付いた生徒が、「俺らが作れば全国大会に行ける!」と、やや強引な創部プロジェクトに打って出る。そして実際に彼らは紆余曲折を経てまんまと全国大会へと出場してしまう。これは事実に基づく物語だという。

牛津高校だけに掛け声も独特だ。

「うしづ~~ファイッ!」

「モーッ!」

これまでの人生で一度も何かに全力で取り組んだことのない高校生が、汗と涙と怒号と根性を激しくぶつけあった青春叙事詩。。。あ、それは東宝の『ルーキーズ』だった。これに対して東映はオルターナティブな戦法に打って出た。この『ソフトボーイ』はとてもマイペースな青春スポーツ映画だった。まあ、『ルーキーズ』が全国大会だとすると、『ソフトボーイ』は地方大会、いや草野球大会スケールといったところか。でも、そこにこそチカラ技ではなく日常の延長線上で観客と映画とを出逢わせるリアリティがある。

嬉しいことに、やがて本作は青春とか根性とは全く違った次元のテーマを浮かび上がらせる。つまり、誰もが同じステージで頂点を目指す必要はないのだ。彼らが数多くのスポーツの中から「ソフトボール」を見つけ、選び取ったように、重要なのは、いかにして自分の能力を発揮できるステージを見つけ出すか、ということなのだ。

非常に練り込まれた脚本だなと感心した。足場がなくフラフラ漂っているように思えて、実はこの時代の空気をしっかりと捉え、芯がしっかりしている。『ソフトボーイ』の作り手たちは実は驚くほど足腰の柔軟な敏腕選手たちなのかもしれない。

この記事が参考になりましたら、クリックのほどお願い致します。

-------
TOP】【レビュー】【TWITTER

|

« 闇の列車、光の旅 | トップページ | トイ・ストーリー3 »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/137483/48659445

この記事へのトラックバック一覧です: ソフトボーイ:

« 闇の列車、光の旅 | トップページ | トイ・ストーリー3 »