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2010/06/03

マイ・ブラザー

たかがハリウッド・リメイク。しかし不思議な感慨に襲われた。トビ―・マグワイア、ナタリー・ポートマン、ジェイク・ギレンホール。彼らの顔はいつもと同じなのに、その内側から放出される人格はまったく違って見えたのだ。

Brothers_2

ベースとなるのは、北欧のスザンネ・ビア監督作『ある愛の風景』。このシンプルかつ重厚な骨格が、舞台をアメリカに変えても、驚くべき精度で機能している。

妻と娘を残し戦地へ旅立った兄が消息を絶った。残された家族の悲しみを癒すべく、デキの悪い弟は懸命にフォローしようとする。徐々に彼になつき始める幼い姪たち。そして義姉。ふたりは仄かな愛情で包まれはじめていた。そこへ飛び込んできた、兄の生還の知らせ。彼は本当に帰ってきた。以前とはすっかり心を豹変させて・・・。

かねてより「似ている!」「見間違える」と言われ続けてきたトビ―とジェイク。彼らが兄弟役を担うだけでも夢のキャスティングなのだが、そこに極めつけ、父親役としてサム・シェパードが名を連ねる。彼らの奏でる父子の和音&不協和音もじっくりと沁みわたる。

そして、子供劇団での演出キャリアを持つベテラン監督ジム・シェリダンは、『イン・アメリカ』で実証済みの卓越した子役演出を、本作でも炸裂させる。これには本当に驚いた。トビ―、ナタリー、ジェイク、それにサム・シェパードをもってしても太刀打ちできないほどに幼い姉妹たちが魅せる。それも小手先の巧さではなく、真に迫った表現力で、観客の魂を震わせる。とくにお姉ちゃん役の子は神がかり的だ。

もう一点、ジム・シェリダンといえば『父の祈りを』、『ボクサー』でも描いた母国アイルランドの闘争史を想起せずにいられない。本作にU2の楽曲が使用されていることからも、ここで扱われるアフガニスタンの戦争に、シェリダン自身はもっと普遍的な意味での憎しみ合い、殺し合い、そしてそれによって豹変していく人間の心を刻み込もうとしたのではないだろうか。

リメイクとは、オリジナルの再生産ではない。オリジナルに新たな価値を付与することである。その点においてジム・シェリダンは雇われ監督としてではなく、あくまで自身の作風の延長線上にこの映画を配置した。魂を失ったリメイクや続編映画が大量生産される昨今、この手腕に対してとめどない畏敬の念が溢れた。

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