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2010/06/23

アデル/ファラオと復活の秘薬

表現者たる者、家庭を持つと作風が大きく変わる。彼らが自分の仕事ぶりを子供にも観てもらいたいと願うのは当然のことで、そうなれば内容も下手にテーマを深刻化させた問題作よりは、子供にも充分楽しんでもらえるストレートなものがいいに決まっている。勇気や愛情を散りばめた冒険ファンタジーはその打ってつけのジャンルといえるだろう。

そしてこの男、リュック・ベッソン。近年大量生産される彼のプロデュース作品は銃火器や麻薬といった危険な要素でハリウッドのアクション領域をどんどん浸食していったが、どうやら「お父さんの仕事だよ」と自慢できる監督作として『アーサーとミニモイ』シリーズのほかにもう一本、金の鉱脈を発見した模様。それが、『アデル/ファラオと復活の秘薬』だ。

Adele_poster_2
きっと子供たちも少し大きくなったのだろう。『アーサーとミニモイ』に比べると大人も充分に楽しめる要素に満ちている。なおかつベッソンが辿ってきた軌跡が少なからず表出しており、それは“カッコいいヒロイン”であったり、パリの観光大使を自認するかのような各名所の惜しみない登場といった面々に集約される。

舞台は20世紀初頭。女性冒険家アデル・ブラン=セックがエジプト王家の墓を目指すのには理由があった。とある事故により意識を失ったままの双子の妹を救うべく“復活の秘薬”を探しているのだ。立ちはだかる追手を交わし、燃え盛る炎の中を決死の脱出。ちょうどそのころ、ルーブル美術館では展示品の卵が孵化し、中から飛び出した怪鳥がパリ市民をつぎつぎとエサ代わりについばむ異常事態が発生。怖がる市民。頭を抱える警察。ファラオと恐竜、なんの接点もないふたつが結びつくとき、アデルはひとつの大きな賭けにでるのだが。。。

この映画に影響を与えたハリウッド映画を挙げなさいと問われれば、誰もが制限時間を充分に残して、『インディ・ジョーンズ』『ナイト・ミュージアム』『ジュラシック・パーク』『ハムナプトラ』と答えるだろう。まるでファミリー映画のデパートだ。それほど本作はこれまでハリウッドに一極集中してきたものを「フランスでも作れるんだよ」と軽々と見せつける。しかもハリウッド作ならではの胃もたれしそうなチカラ技をあえて回避し、わざとストーリーをあっちこっちへと飛ばして、そのパリ市内&エジプトを右往左往する語り口によって独特のリズム感を生みだしていく。

これは自身が様々なジャンルを横断し、その撮り方をマスターしているからこそできる所業なのだろう。トータルすると随分とやわらかな、そして自由な空気に満ちた映画に思えた。手に汗にぎる興奮よりも、思わず笑ってしまう賑やかさに彩られている。

そして、これが重要な舞台となるルーブル美術館。

Paris_2

この中で巻き起こる一大事が視覚的にも楽しいんだな、これが。

ルーブルといえば、有名(悪名高い?)なのは中央にみえるガラス張りのピラミッド。『ダ・ヴィンチ・コード』でもこれについて陰謀めいた裏事情が語られるが、観客はこの『アデル』で更なる驚愕の設立理由を目の当たりにすることになるので、お楽しみに。

ほかにも、本作には今年のカンヌで監督賞を受賞したマチュー・アマルリックが俳優として登場するのだが、観客の10人に8人は彼の存在に全く気づかないのではないか(僕も資料を読むまで分からなかった)。ぜひ目を皿のようにしてご覧いただきたい。

*こうしてブログ更新しているさなか、リュック・ベッソンの新たな監督作についての情報が飛び込んできました。彼は『エネミー・オブ・アメリカ』『ダイハード4.0』のデイヴィッド・マルコーニと共に執筆したタイトル未決定のラブストーリーを自らの手で監督する模様。今年の9月よりロンドン撮影開始。今度は子供らに「愛」について教える気なのかな。。。

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