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2010/07/31

ナタリーにオファーは無かった?

リメイク版『ミレニアム/ドラゴン・タトゥーの女』におけるナタリー・ポートマンの主演候補脱落については、サンディエゴで開催されたComic-Conで彼女自身の口から発言があったようだ。COLLIDERが掲載している質疑応答によると、

「たしかに原作のシリーズは大好きだけれど、この映画に関して製作サイドから私へのアプローチは全くありません。(オファーがあったというのは)間違ったウワサですね」

なるほど、そうだったのか。ではもうひとつの気になる点。ナタリー・ポートマンが製作・主演を務める映画版『高慢と偏見とゾンビ』の製作ははどうなっているのか・・・?これについてもComic-Conでの発言が理解を助けてくれる。

「私たちはつい先日デヴィッド・O・ラッセルから新しい脚本を受け取ったばかりで、これをさっそく来年にでも形にしたいところ。すごくドキドキしていますよ」

デヴィッド・O・ラッセルは先日「次回作はヴィンス・ヴォーン主演のコメディを撮る」と発表したばかり。これだけ受け取ると「えっ、高慢と偏見はどうなっちゃうの?」と不安がよぎるが、ナタリーの発言を総合してみると、ヴィンス・ヴォーン主演作→高慢と偏見とゾンビという順番になりそうだ。

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『ミレニアム』リメイク続報

世界を驚愕の渦に巻き込んだスウェーデン産ミステリー映画『ミレニアム/ドラゴン・タトゥーの女』。すでに起動中のそのハリウッド・リメイク版についてDeadline Hollywoodが進捗状況を伝えている。

主演男優を『007』シリーズのダニエル・クレイグに定めたソニーピクチャーズ&デヴィッド・フィンチャー監督は、現在、この映画の要とも言える“ぶっ飛んだヒロイン”リスベット・サランデル役を演じる女優オーディションの真っ只中。『スパイダーマン4』の主演選びのごとく複数の候補たちがビデオテスト、カメラテストに臨んでいるわけだが、この日曜日にはダニエル・クレイグ立ち会いのもと、6人の候補者たちがヘアー、衣装、メーキャップ、そしてリスベットを語る上では欠かせないピアスを施したうえで本格的な本読みテストに挑む模様。これはキャスティングもいよいよ最終章に差し掛かってきたということか。

Millenniumなにしろこんなキャラクターなもんで。。。

Deadlineによると、現段階での候補はエレン・ペイジ(インセプション)、ミア・ワシコウスキ(アリス・イン・ワンダーランド)、エミリー・ブラウニング(サッカーパンチ)、サラ・スノック(Sleeping Beauty)、ルーニー・マーラ(ソーシャル・ネットワーク→デヴィッド・フィンチャー最新作)、ソフィー・ロウ(Blame)、仏人女優のリア・セドー(イングロリアス・バスターズ)、ケイティ・ジャーヴィス(Fish Tank)など。

あれ、いつの間にかキャリー・マリガンやナタリー・ポートマンの名が外されてる。。。これに加えて、エレン、ミア、エミリーらも「すでに有名すぎる」との理由で既に候補落ちしている、との噂もあり。

撮影は今年の初秋にスタート。アメリカ公開は2011年の12月21日。

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2010/07/30

ミラマックス売却に決着か

米ディズニー子会社ミラマックスの売却に際して、建設会社CEOロナルド・チューターとトム・バラック率いる投資会社コロニー・キャピタル、そのほか数名の投資家との間で進められていた交渉がようやく大方の部分で合意に達した模様。懸案だった買収額は6億6000万ドル近辺に落ち付いたみられる。

今回の焦点はミラマックスが保持する約700タイトルに及ぶ映画権利(ライブラリー)。『シカゴ』『恋に落ちたシェイクスピア』『イングリッシュ・ペイシェント』『ノー・カントリー』といったオスカー受賞作のひしめく一方で、なんだかよくわからない残念なタイトルもゴロゴロと含まれ、そのリスト内容をめぐっては提示額と評価額との間に大きな隔たりが生じていた。どうやら交渉初期にはディズニー側から12億ドルというあまりに巨額な提示額が飛び出していたらしく、みんなが冷静になった結果、その半分くらいに落ち付いたことになる。

というわけで、結局、ミラマックス創業者のワインスタイン兄弟は懐かしき古巣を取り戻すことができなかった(ミラマックスという社名は彼らの両親"Milliam"と"Max"から取られている)。これが映画なら最後の最後に大逆転ってオチもありえたのに。ああ、ビジネス社会。。。

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ジェニ・ロペが審査員に

全米オーディション番組「アメリカン・アイドル」の審査員エレン・デジェネレスが「平日お昼のトークショーとの両立は困難」として離脱を表明。彼女に代わってジェニファー・ロペスが新たな審査員として着任する模様。

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世界最初のロボット?

JJエイブラムス率いる製作会社Bad Robotとパラマウントが気になるプロジェクトを起動させた。それは「ボイラープレート」と呼ばれる世界最初のロボットの物語。ヴィクトリア朝時代に発明された彼らはその後、歴史のあちこちに顔を出し激動の時代を駆け抜けた。アラビアのロレンスと旅したり、南極探検に同行したり、はたまた映画産業の黎明期にサイレント・フィルムに顔をだしたり。。。やがて第一次大戦が訪れ、その最前線で忽然と姿を消してしまった。

そう、これは極めてパラレルワールドなお話。クリエイター、ポール・ガイナン氏の手掛けるこの一連の創作世界は今から10年前に始動したという。コミック出版契約に向けてウェブサイトを立ち上げたりなどしているうちに、俄かにファンが増大し、これらロボット寓話が史実なのだと思い込む人も現れたほど。それも当然といえば当然か。なにしろ作り込みが念入り、かつ楽しすぎるのだ。たとえばこんな感じ。

Bp_motorcar
JJエイブラムスはプロデューサーとして関わる模様。他にも数多くのプロジェクトを抱える彼だけに無事グリーンライトまで辿りつけるのか心配ではあるが、これが映画製作者にとって無性に創作意欲をかきたてる題材であることは、このたった一枚の画像からも一目瞭然だろう。

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トータル・リコール復活?

The Hollywood Reporterのブログ"The Heat Vision"によると、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の90年代SFアクション『トータル・リコール』がリメイク版として蘇る可能性が浮上し、すでにソニー・コロンビアは『ダイハード4.0』のレン・ワイズマン監督と交渉入りしているという。現在、『ソルト』のカート・ウィマーが脚本執筆中。『インセプション』といい『サッカー・パンチ』といい、次世代映画のカギは「夢」や「精神世界」にあるとの見方も進む中、元祖フィリップ・K・ディック原作モノがどれだけ効力を発揮するのか期待したいところ。

なお、レン・ワイズマンはハワイの特別捜査官の活躍を描くTVシリーズ「ハワイ5-O」を30年ぶりに復活させるほか、『ダイハード』シリーズへの再参加も噂されている。

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2010/07/29

ヴェネツィア映画祭ラインナップ決定

今年のヴェネツィア国際映画祭のラインナップが発表された。

Golden
クエンティン・タランティーノが審査委員長を務めるコンペ部門"Venezia67"には世界11カ国から22作品が集結。オープニング作品に選ばれたダーレン・アロノフスキーのサイコ・サスペンス"Black Swan"を筆頭に、ソフィア・コッポラ"Somewhere"、トム・テイクヴァ"Drei"、ツイ・ハーク"Detective Dee and the Mystery of Phantom"、フランソワ・オゾン"Potiche"、ジュリアン・シュナーベル"Miral"、カンヌで大ブーイングを浴びた『ブラウン・バニー』以来6年ぶりの監督復帰作となるヴィンセント・ギャロの"Promises Written in Water"など強豪ばかりがひしめく中、日本からも三池崇史監督作『十三人の刺客』が堂々参戦。これに加え、毎年恒例、もう一本のサプライズ上映も予定されている。

また、同映画祭のオリゾンティ部門には園子温監督の『冷たい熱帯魚』や和田淳監督の短編アニメーション『春のしくみ』がエントリー。

開催期間は9月1日から11日まで。

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ギリアムがWEB中継を演出

8月5日にNYマディソン・スクエア・ガーデンで開催されるカナディアン・ロック・バンド"The Arcade Fire"の生ライブがYouTubeにてストリーミング生放送される。そのWEB演出を『未来世紀ブラジル』『12モンキーズ』のテリー・ギリアムが手掛けるというのだからこれまた驚きだ。

強力タッグで贈るこのライブは、他にもジョン・レジェンドやザ・ルーツらが参加する生中継シリーズの第1弾にあたる。オンラインでライブを体験するファンは、カメラ・アングルを自由に切り替えたり、アンコールにどの曲が聞きたいかを投票したりもできるらしい。

世界中で絶大な人気を誇り、前作"Neon Bible"では革命を起こしたとも評されたアーケイド・ファイアだが、映画ファンにとっては『かいじゅうたちのいるところ』の予告編で流れていたダイナミックな楽曲でもお馴染み。あの曲"Wake Up"はこの映画のために再レコーディングされたものなのだが、映画本編では使われていない。

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長らく待たれていたアーケイド・ファイアの新譜は8月3日にリリース。

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エイリアン前章の脚本磨き

リドリー・スコット卿が手掛ける『エイリアン』プリークエル(前章)は少しずつ前進を遂げているようだ。このたびジョン・スパイツが執筆した脚本に更なる磨きをかけるべく、「LOST」シリーズの製作・脚本を務めるデーモン・リンデロフに呼び声がかかった。もともと『エイリアン』に多大な影響を受けたという彼は、現在『スター・トレック2』『カウボーイVSエイリアンズ』などで大忙しなのにもかかわらず、この仕事を引き受けた模様。それだけでなく、リドリーやフォックス関係者との打ち合わせの中で他のSF映画のアイディアについても活発な意見交換が行われ、うまくいけばリンデロフ自身が単独執筆を、リドリー・スコットが監督を務める可能性もあるという。

ハリウッドではベースとなる脚本にまた別の才能がリライトを重ねる場合も多い。最近だと『トイ・ストーリー』の原案を『リトル・ミス・サンシャイン』のマイケル・アーントが脚本化したのも有名だし、『カールじいさんの空飛ぶ家』の原案を『扉をたたく人』のトム・マッカーシーが手掛けたのも記憶に新しい。もっと奇抜な例になると、あの『カンフーパンダ2』のリライトにチャーリー・カウフマンが参加してセリフの修正を行っているとの情報もある。

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ちょんまげぷりん

ちょんまげ姿のその男は、どうやら江戸時代からタイムスリップしてきたようだった。昔の名残のない東京の街並みに呆然と立ち尽くす彼を、シングルマザーとその幼子は放っておけなかった。かくして始まった奇妙な居候生活。といっても、江戸も現代も“ギヴ&テイク”の理念は変わらない。お侍も意を決してこう宣言する。

「拙者がすべての家事を引き受ける!」

何かと凝り性なこのお侍、炊事洗濯から幼子の送り迎えまで何でも完璧にこなしてみせる。とりわけ心底入れ込んでしまったのが、お菓子づくり。近所の奥さま方の間でも「パティシエ級の腕前!」と大評判になるのだが・・・。

ストーリーラインを聴くと一見ドタバタコメディのように思える。が、中村義洋監督(『アヒルと鴨のコインロッカー』『フィッシュストーリー』)はこの“ありえない”ファンタジーを、人間の自然な感情に寄り添った、落ち付いた語り口で描いていく。冒頭、「東京の街中に、お侍さんがポツネン…」という異様な光景を、この映画は“笑い”で向かい撃たず、むしろ錦戸亮の哀愁に満ちた表情でシックリと馴染ませる。この地点において、観客は肩の力が抜けていくのを感じる。この映画を外野から観戦するのではなく、もっと内部で、彼ら疑似家族の成長を温かく見守っていこうと心に決めるのである。

お侍さんの直面する“現代”とは“江戸”の勝手とは随分違う。身分制度、男女関係、仕事の領域といった概念を180度回転させて、彼は健気になんとかこの時代に馴染んでいこうと努力する。また、ともさかりえ演じるシングルマザーの奮闘も胸を打つ。彼女が度々口にする「昔と今では違うんですよ」というセリフが反射して、逆に自分こそ結婚生活に「こうでなきゃ」と囚われていたことに気づく場面も見事な感情の揺れで演じきる。

一見、ウェルメイドな作品なのだが、その実、現代を取り巻く様々な要素がこの一本に込められている。それらが決して説教くさくならず、すべてを「ちょんまげ」+「ぷりん」が巻き起こした化学変化として観客に委ねている点、ここが好感触。ちなみに、主演陣に追いすがろうと後半よくわからない活躍を見せるキングオブコメディの今野浩喜もシーンを重ねる度にどんどん良くなっていく。お笑い芸人のアビリティとその可能性を引き出す演出術に感心した。

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ギレルモ・デル・トロの次回作?

『パンズ・ラビリンス』や『ヘルボーイ』で名高いギレルモ・デル・トロ。彼がピーター・ジャクソンと共に全精力を注ぎ込んでいた『ホビットの冒険』2部作の離脱を発表して久しいが、彼の「とても残念だけど、僕には他にもやりたいことが山ほどある」というコメントどおり、先日のComic-Conではディズニーとのコラボレーション"Haunted Mansin"への関与が発表され(製作・脚本を手掛ける模様)、続いて本日のDeadlineHollywoodが伝えるところによると、次なる監督作として、怪奇ファンタジー作家H.P.ラヴクラフトによる"At the Mountains of Madness"(邦訳版「狂気の山脈にて」)を起動しはじめている模様。

といってもユニバーサルと組む本作は2004年頃から幾度も候補に挙がっては中断しており、多くの作り手たちを魅了してやまないラヴクラフト作品なだけに、デル・トロの妥協のない、かつ慎重な姿勢がいつも以上に感じられる企画でもある。そして今回これまで以上の付加価値として浮上してきたのは、「本作は3Dで撮影される」こと、しかも「ジェームズ・キャメロンが製作に加わる可能性が出てきた」ことに尽きる。

キャメロンはソニー製作の『スパイダーマン4』でも3D演出に関するテクニカル・アドバイスを施す予定になっているが、もしも"At the Mountains~"への参加が実現すれば、こちらでも『アバター』で培った3D方法論を惜しみなく伝授してくれることは間違いない。

なお、デル・トロは『ホビット』以前にユニバーサルと「フランケンシュタイン」やカート・ヴォネガットの「スローターハウス5」のリメイクなどの企画も温めており、ミドルアース(中つ国)から解放された今後、それらを次々と再起動に乗せていくことも大いに期待される。

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メリル・ストリープ新作決定

今年のオスカーで『ジュリー&ジュリア』と『恋するベーカリー』が絶賛されたメリル・ストリープ。現在交渉中の最新作では英国のマーガレット・サッチャー元首相を演じるものと見られているが、それとはまた別に、ソニーが製作する新作コメディにてメリル・ストリープとTVコメディ"30 Rock"の女王ティナ・フェイが母娘役で共演することが決定した。タイトルは"Mommy&Me"。監督は、『プラダを着た悪魔』『ジュリー&ジュリア』『恋するベーカリー』などメリルと息のあった共演の続くスタンリー・テュッチ。製作総指揮にはあのスティーヴ・ブシェミも名を連ねている。

なお、ティナ・フェイはアメリカの大統領選シーズン真っ只中にコメディ番組"Satueday Night Live"で共和党副大統領候補サラ・ペイリン氏のモノマネを披露し、世間は民主も共和も関係なく大沸騰。暗に選挙戦を動かしたとも言われている。英語吹き替え版『PONYO』では宗助の母、リサのヴォイス・キャストを担当。

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水木しげるの次は赤塚不二夫

NHKの朝ドラでもお馴染み「ゲゲゲの女房」が、主演・宮藤官九郎&吹石一恵で映画化される(ファントムフィルム配給、11月公開)のは既報の通りだが、一方の東映は、一昨年惜しまれながら亡くなった赤塚不二夫を主人公に『これでいいのだ!』を製作する。本作は赤塚の担当編集者、武居俊樹氏の著書「赤塚不二夫のことを書いたのだ!!」(文集文庫刊)を原作に、赤塚と編集者が出逢い、二人三脚の果てに「レッツラ・ゴン」を生み出す物語。気になる赤塚役には浅野忠信。編集者役には堀北真希。公開は2011年、GW。

漫画家ブームが続いている。今度はどこかが藤子不二雄の「まんが道」を映画化するって言いだすんじゃなかろうか。。。

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UK最高齢のツイッターおばあちゃん、逝去

英国の最高齢Tweeterとして56000を超えるフォロワーに親しまれてきたアイヴィ・ビーンおばあちゃんが亡くなった。104歳だった。彼女は介護施設のパソコンを使い、2007年にFacebookに登録。翌年にはツイッターに進出し、最高齢ユーザーとしてメディアの注目を集めていた。フォロワーには有名人も多い。歌手のピーター・アンドレ、クリス・エヴァンスや前首相夫人サラ・ブラウンさんまでいる。

アイヴィさんのツイートは介護施設での暮らしや周囲の友人たちについてのものが多かった。ユーモアに富み、誰をも悪く言わない温かさが魅力だったという。お別れは7月6日、唐突にやってきた。

「ランチを食べにいってくるので、また後ほど」

それが彼女の最期の書き込みだった。

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アンジー、北朝鮮を憂う

新作アクション・スリラー『ソルト』のPRのため、おとなり韓国を訪問中のアンジェリーナ・ジョリー。日本でのメディア露出ではそのセクシーさばかりが取りざたされていたが、韓国では本作の冒頭で北朝鮮が描かれることからも、かの国を憂うシリアスな発言を口にした。とりわけ彼女はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の親善大使を務めているだけに、北朝鮮から命がけで中国へと越境した人たちが無惨にも強制送還され、彼らがその後激しい迫害を受けていることに大きな懸念を示しているという。

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2010/07/28

サルコジ夫人の撮影スタート

AP通信によると、サルコジ仏大統領の夫人であり元スーパーモデル/歌手のカーラ・ブルーニ・サルコジが、ウディ・アレンの新作"MIdnight in Paris"に出演するために現場入りした模様。これにはダンナのニコラス・サルコジも居ても立ってもおれず、職務そっちのけで撮影現場を陣中見舞いしたそう。

もちろんサルコジ夫人は主演ではない(主演はマリオン・コティヤール、オーウェン・ウィルソン)。彼女は博物館のディレクター役とのこと。

他のメディアでは「サルコジ夫人、映画デビュー」と書き添えるかもしれないが、実はロバート・アルトマンの『プレタポルテ』(94)や『パパラッツィ』(98)などで本人役としてチョイ役出演を果たしているという。ちなみに彼女のお姉さんは女優としてフランソワ・オゾン作品や『ミュンヘン』『プロヴァンスの贈り物』に出演、他に監督業をも手掛けるヴァレリア・ブルーニ・テデスキ。

Carlaandvaleria
芸術家の血をしっかり受け継いでいるんですね。

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サッカー・パンチ予告編、登場。

『300』や『ウォッチメン』、それに今秋にはフクロウたちの大冒険を描いた3Dアニメ『ガフールの伝説』が待機中のザック・スナイダー監督。そんな彼の次なる話題作『サッカー・パンチ』のトレーラー第1弾が到着した。

続きを読む "サッカー・パンチ予告編、登場。"

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中国で新たなプロパガンダ映画の製作スタート

昨年、中華人民共和国の建国60周年を記念して大作"The Founding of a Republic"が製作されたことは記憶に新しい。ジャッキー・チェン、アンディ・ラウ、ジェット・リー、チャン・ツイィーらの錚々たるカメオ出演も話題になったこのプロパガンダだが、今度は2011年の“共産党創立90周年”に向けた、新たな国家ぐるみ超大作の製作がスタートした模様。Foundingofarepublic▲画像は"The Founding of a Republic"のポスター

そのタイトルは"The Founding of a Party"。1911年の辛亥革命から1921年の中国共産党の設立までを描く。製作費は880万ドル。前作に引き続きハン・サンピン&ホアン・チェンシンが監督を務め、北京、上海、パリ、モスクワなどで撮影を進める予定。

AP通信の取材によると、今のところ、たったひとりだけ決定済みのキャストが判明したという。その人物は、ほかでもない『レッド・クリフ』のジョン・ウー。今回は監督でなく、俳優としての抜擢である。彼が演じるのは、革命運動に身を投じ、後に中国国民党が広州に設立した国民政府の主席なども歴任した林森(リン・シン)という人物のようだ。

ちなみに、前作"The Founding of a Republic"は中国政府による興行側への働きかけもあり、公開当時、中国における史上最高興収(6100万ドル)を記録。しかしその後、『トランスフォーマー2』、『2012』、そして『アバター』といった米超大作群によって首位の座を奪われた。

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2010/07/27

アイスバーグ!

暑い。何もしたくない。けれどこんな時分にまるで救世主のごとく打ってつけの作品が届くのだから、映画の神様ってのは本当に存在するのかもしれない。

L_iceberg_3
2005年に製作されたベルギー映画『アイスバーグ!』がいよいよ公開される。タイトルからして「氷山」なので、真夏の劇場で快適なひとときを過ごせること請け合いなのだが、それにも増して、もちろん内容についても折り紙つきだ。これまで見たこともない世界へ連れて行ってくれる。なにしろ、この映画の製作・出演・脚本・監督を務めるのは、フランスで道化師になるために同じ学び舎で過ごした3人組の男女なのだから。

映画は一軒のファーストフード店で幕を開ける。そこの女店長フィオナが冷凍室に閉じ込められる。しまった、扉は外からしか開かない。すでに灯りの落ちた店内には誰も人が残っていない。とりあえずジタバタしてみる。どうしよう。このままじゃ死ぬ。彼女は急いで段ボールから冷凍ポテトの山を放り出し、その中にスッポリと避難。朝になって同僚が見つけてくれるまでかろうじて生き抜いてみせる。。。

Ice
彼女は助かった。しかし、この日から彼女は豹変し、「氷点下」のトリコとなった。そして取りつかれたようにアイスバーグ=氷山に思いを馳せる。ああ、氷山が好きだ、氷山に逢いたい、誰か私を氷山に連れてって・・・。思い余ったフィオナはついに夫と子供を残して家を飛び出すのだが。。。

道化師とは身体表現のエキスパート。ささやか、かつダイナミックな身体の動きに心情を集約させ、それを笑いに変える。僕らはかつてのマルセル・マルソーのパントマイムに触れるかのように、彼らのストイックに鍛え抜かれた肉体から繰り出されるおかしなおかしな言語表現の数々に、徐々に徐々に蝕まれていく。彼らの姿に無声映画の王者たち(チャップリンやキートン、ハロルド・ロイド)を重ね合わせる人もいるだろう。はたまた不器用な人々が織りなす不思議な間合いにアキ・カウリスマキ作品を思い出す人もいるだろう。

彼らが巻き起こす笑いは、いわゆるハリウッド的な映画メソッドに基づく「ギャグ」ではない。もともと違う立ち位置でエンタテインメント、笑い、芸術、伝統について学んできた人たちだからこそ、これまでの映画文法からするとかなり異質の風が吹き込んでくる。その笑いは一瞬の打ち上げ花火では決して終わらない。日常のふとした瞬間に思い出し、クスクスと笑いが止まらなくなる。

実はこの『アイスバーグ! 』、彼らの最新作『ルンバ!』(拙ブログのレビューはこちらから)と2本立て同時公開される。上映時間にしてドップリ3時間。こうなるともう、お手軽な海外旅行だ。そして長時間いっしょに過ごしても一向に飽き足らない。彼らの特殊な世界にもっともっと浸かっていたいと思う。本作との出逢いは、多くの人にとってかくも恋に似た感触をもたらすことだろう。 

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2010/07/26

全米興行成績Jul.23-25

先週までの復習は各自こちらで行ってください。

【Jul.23-25 weekend 推計

01 Inception (→) $43.5M
02 Salt (-) $36.5M
03 Despicable Me (↓) $24.1M
04 The Sorcerer's Apprentice(↓)$9.7M
05 Toy Story3 (↓) $9.0M
06 Romana and Beezus (-) $8.0M
07 Grown Ups (↓) $7.6M
08 The Twilight Saga: Eclipse (↓) $7.0M
09 The Last Airbender (↓)$4.2M
10 Predators (↓)$2.8M


*推計興収が僅差の場合、確定後にランキングが入れ替わる場合があります。

■ディカプリオVSアンジェリーナ・ジョリーの対決となった週末ボックスオフィス。結果的に『インセプション』(拙ブログのレビューはこちらからが先週比わずか31パーセント落ちの4350万ドルという固い数字で首位を守り抜いた。公開から7日で間興収1億ドルを突破した本作は、日曜日までの10日間興行において累計1億4370万ドルに達している(製作費は1億6000万ドル)。今後は早い段階で2億ドルを突破し、3億ドルにまで手が届くかどうか、といったところ。

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フォロウィング Following

インセプション』のクリスストファー・ノーランによる初長編監督作にして、ほぼ製作費ゼロの状態で作り上げたノワール・サスペンス。全編モノクロで、本編時間も70分足らず。しかし『インセプション』を観た後にこの映画を再訪すると、ノーランが試みたかったことはこの10年間、全く何も変わっていなかったことが分かる。これらは彼のフィルモグラフィーの中でも最も結びつきの強い2本と言えるだろう。

Following2_3   
“フォロウィング”とは誰かの後を追ってつけ回すこと。“Shadowing”とも言う。その男はロンドンの街中で誰かの後を追っていた。警察や探偵でもなければ犯罪者でもない。彼はただの作家志望だった。職業病なのか、人ごみの中で目についた赤の他人がいったいどういう生活をしているのか、背後からついていって確かめたくなってしまうのだ。だがある時、彼はターゲットの男に気付かれてしまう。スーツにネクタイ姿のその男はこちらをじっと見つめると、ことあろうにカフェのテーブルに相席し自分の自己紹介をはじめた。名前は“コブ”。彼の仕事は留守宅への不法侵入。そして盗品を売りさばくことだった。。。

もうお気づきだろう。“コブ”とは『インセプション』でレオナルド・ディカプリオが演じた役の名前でもある。しかも両者は共に他人の領域へと侵入し、大切なものを奪ってしまうことを生業としている。しかもスーツ姿。そもそもノーラン監督は10代のころに「夢の中を舞台にした映画が撮りたい」と考えはじめ、今から10年前くらいにようやくそのアイディアが固まったという(それから具現化までさらに10年かかったわけだ)。『フォロウィング』の製作は1998年。各々の醸成にあたり極めて濃密な一滴が共有されていても何ら不思議はない。

Following02
『フォロウィング』のコブはいつしか作家志望の男を引き連れて何軒もの留守宅へと侵入する。彼にはこの仕事をやるにあたってのルールがあった。何か高価なものを奪うのではない。むしろ家人の大切な物をしまった小箱や引き出しの中を暴きだし、バラバラと床にぶちまける。これはメッセージでもある。「お前の大切なものを垣間見たぞ」というメッセージ。他にもイヤリングの片方だけを盗みとったり、金庫の中から何かを抜き取ったりするのは映像的にも『インセプション』に通じるところが大きい。また彼らが押し入る部屋の扉になぜかバットマンの紋章が刻まれているのが、今となってみれば気味の悪いほどの明瞭な暗示に思えてくる。

そして本作の大きな特徴がもうひとつ。ノーランはこの初監督作で映画における“時間の重力”から自由になろうとする。いきなり挿入される未来の意味深なショット。時間軸を混乱させ複数の始点から同時進行的に語られていくエピソード。これらはあまりに唐突すぎて僕らは度々途方に暮れることになる。

『フォロウィング』のコメンタリーでノーランはこう語っている。当時、どれだけの人がこの主旨を解しただろう。

「映画における時間軸というものを分断したかった。物語を“3次元的”に展開するために。でもね、これは人間の暮らしの中ではごく当たり前のことだよ。実際に僕らは目や耳から飛び込んでくる断片的な情報をごく反射的に関連付けて解釈している。それらが映画みたいに時系列に沿って一直線に並んで届けられることは日常ではまずありえないからね」

この言葉に『インセプション』の夢の中が思い出される。夢の、夢の、そのまた夢、といった具合に複数の次元にてストーリーが同時進行していくその世界観。時間軸はもはや単一なエピソードの不可逆な進展を示すものではなくなっている。ストーリーはむしろ受け手の記憶の中に垂直に、層を成して堆積されていく。

ゆえに『インセプション』は3D時代の流行に動かされる必要がなかった。『フォロウィング』においてクリストファー・ノーランは早くも映画の普遍性に手を触れていたのだから。そして10年前に彼をハーメルン笛吹き男のごとくあざ笑った人たちは、10年後の今日、『インセプション』を目にすることで、彼が一貫して何を具現化したかったのか鮮烈なビジョンのもとに見せつけられたことだろう。

『フォロウィング』、それはたった70分の短い実験作にしては、あまりに貴重な一歩だったのだ。

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2010/07/25

ソルト

今度のアンジェリーナ・ジョリーはとにかく強い。『トゥーム・レイダー』の瞬発力よりも、『マイティ・ハート』の精神力よりも卓越した強靭さで、謎の女“イヴリン・ソルト”を演じる。運命の日が訪れるまで、彼女は優秀なCIAエージェントだった。かつて北朝鮮で拘留され過酷な尋問に耐え抜いた経歴も持つ。

Salt_3

ある日、CIA本部にロシアからの亡命者が現れる。夫と結婚記念日を祝うために職場を後にしようとしていたソルトは、「ほんの25分だけ」と聴取への立ち会いを決める。そこで亡命者の男オルロフが語った内容、それは、まもなくアメリカに潜伏中の凄腕ロシア・スパイがニューヨークに現れ、深刻なテロ行為を遂行するという予告だった。しかもそのスパイの名は・・・“イヴリン・ソルト”。瞬時に同僚たちの視線が同僚ソルトへと注がれる。男の脳波は正常値を示している。どうやら嘘はついていないらしい。

優秀な分析官だった彼女にかけられた重大な嫌疑。何か大きな陰謀が動こうとしている。とっさに夫の安否を確認しようとするソルト。だが携帯電話は一向に繋がらない。と、彼女は突如、人が変わったかのような反射神経でその場を脱出する。翌日、オルロフが予告した現場にソルトの姿があった。厳戒態勢を掻い潜り、瞬く間にターゲットを暗殺。。。ついに正体を露わにした彼女は敵なのか?味方なのか?そして彼女が胸に秘めた最終目的とは、いったい・・・?

サスペンスには主人公の主観に寄り添う描き方と、あくまで客観を貫きとおすやり方とがある。『ソルト』は圧倒的な後者だ。冒頭シーンこそ主観映像で始まるものの、それ以降は神経回路をシャットアウトしたかのように、観客に全く手の内を明かさない。“共感”という最大の武器を捨て去り、あえてミステリアスなその表情と、肉体波アクションによってのみ、観る者の感心を捕え続ける。これは演出面でも演技面でもかなりのハードルの高さと言えよう。

『パトリオット・ゲーム』や『今そこにある危機』でスパイ活動や複雑な国際情勢をリアルに描いてきたフィリップ・ノイス監督。『ボーン・コレクター』でブレイク前のアンジェリーナ・ジョリーを起用した経緯もあり、彼女とのコンビネーション抜群に“イヴリン・ソルト”というキャラをを血肉化していく。驚くべきことにオリジナル脚本では主人公は男性だったという。それこそジェイソン・ボーンやジェームズ・ボンドと肩を並べる凄腕スパイとして着想していたが、ある日アンジーが「私がジェームズ・ボンドを演じたい」と本気か冗談か分からない言葉を漏らしたことで、スタジオ首脳陣は「ああ、この手があったか!」とすべての歯車を一致させたという。

ただし女性が主演となっても内容は軟化するどころか、益々ハードに書きなおされたのではと思えるほど。走行中のトラックからトラックへと飛び移り、脱出のために即席爆弾をこしらえ、銃の引き金に手をかけることにも躊躇がない。いつもの“母としてのアンジー”を印象付ける場面は皆無。今回はただただストイックだ。製作サイドのアンジーへの要求は限度を知らず、それに対して彼女のもたらす“結果”も常に予測を上回り続ける。互いの飽くなき相乗効果によってまさに女版ジェイソン・ボーンの名にふさわしい孤高のヒロインが誕生した。

また、なかなか手の内を明かさない主人公なだけに、周囲の“リアクション”もかなり重要だ。すなわち、リーヴ・シュレイバー&キウェテル・イジョフォー、彼ら2大芸達者たちの巧みな“受け止め方”あってこそ、この異色サスペンスの緊張感と揺さぶりはより堅固なものとして成立していく。

冷戦期に植えつけられた無数の卵が今ようやく孵化しようとしている。眠っていたスパイたちが世に出る時間だ。「ロシアの陰謀」というテーマは80年代のサスペンス・アクションを彷彿とさせ、時流に合っているのかどうか疑わしいが、しかし奇しくもアメリカではこのタイミングに幾人ものロシア・スパイが身柄を拘束される事件が発生した。緊張感の悪化を臨まぬ両国当局の計らいによって、彼らは互いの捕虜交換を経て母国へ戻っていったという。

そしてこの『ソルト』の封切りと同じ日、冷戦期のスパイを扱った『フェアウェル/さらば、哀しみのスパイ』という仏映画も公開される。こちらはアクションなしだが、80年代ロシアを舞台に緊迫したサスペンスが楽しめる。おススメ。

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2010/07/21

北京の自転車

以前、『1978年、冬。』という中国映画(正確には日中合作)を目にした時から、“ワコー”という配給会社が手掛けるアジア映画にハズレ無し、との想いを強くした。そのワコーが、7月24日より始まる「中国映画の全貌2010」にて『北京の自転車』という10年前の傑作を日本に届けてくれるという。

監督のワン・シャオシュアイは中国第6世代の旗手として現在グイグイと名を挙げている才能。今年のカンヌでも"Chongqing Blues"がコンペ部門に選出され、高い評価を得た。

Bicycle_2
物語はまず、農村部から出稼ぎにやってきた少年“クイ”の表情から幕を開ける。面接試験を経て、彼はこの大都会で自転車配達の仕事を得る。採用者の一人一人に自転車が支給され、続けて社長が檄を飛ばす。「これは君たちへの先行投資だ!真面目に仕事をこなせば、一台分の稼ぎなんてあっという間だ!その清算さえ済めば、その時点で自転車は完全に君らの所有物となる!」 かくしてクイの奮闘が始まった。慣れない路を通り、汗をかきかき、街から街へ。しかし開始早々思わぬハプニングが彼を襲う。ちょっと目を離した隙に愛車の姿が忽然と消えてしまったのだ。

ちょうどその頃、街にはピカピカの自転車を自慢気に乗り回す、ひとりの高校生“チエン”の姿があった。。。

Beijing_bicycle_big
映画観賞は時として天体観測に似ている。ここに映し出される街並み(とくにフ―トン)は、何億光年も離れた星の輝きと同じく、今現在すっかり失われているかもしれない。いわば、幻の風景。まさか10年後の観客がいま、そんな遠い目をして自分たちの姿を見つめているなんて、出演者たちは想像だにしなかったろう。

いや、それにしても農村少年の執念は凄まじい。会社の社長に「失くした自転車が見つかるものか!もう諦めろ!」と言われようとも黒澤明監督作『野良犬』の刑事のごとく、泥だらけで朦朧となりながら捜索を続ける。見たところ彼はそれほど積極的な性格ではなく、常に都会人に引け目を感じてオドオドしている。しかし自分の所有物となると話は別だ。汗水流してようやく手にしたものを、そう易々と手放すことなどあり得ないのである。

対する都会の高校生チエンもいろいろと悩みを抱えている。彼にはクイほどの執念はないかもしれない。しかし知恵がある。悪知恵も。仲間も。

田舎者の少年と、都会の高校生。そしてそのどちらが欠けても成立しない。本作はやがて同年代のふたりが一台の自転車をめぐって奇妙な交流を深めていく。超大国であるこの国の若者をたった2つに類別するのはすこし乱暴なやり方かもしれない。が、彼らが一台の自転車をめぐって交互に漕ぎ合うとき、そこには両輪の回転が化学変化を巻き起こし、凄まじいまでの相乗効果を巻き起こしそうな気配に包まれる。

はたしてあなたの目に映るラストシーンは、ハッピーエンドか、否か。もしもそれに続くエピローグがあるとすれば、この映画から10年後、我々が目にしている現代中国の躍進こそが、まさしくそれにあたるのだろう。

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2010/07/20

ゾンビランド

もはや国家というものが未だ存在するのかどうか分からなかった。人類のほとんどがゾンビに駆逐され、生粋の人間として残っている者はごく僅か。住人の構成要素から言えば、この国、アメリカ合衆国はすでに「ゾンビランド」と化していた。

Zombieland

この荒れ果てた大地を、死に損ないの人間どもが行く。まったく・・・運がいいのか、それとも生存本能にかけて人よりもずば抜けているのか。とにかく彼らはこのゾンビに満ちた黙示録的世界で共に出逢い、やがて疑似家族のような、騙し騙されの危なっかしい信頼関係(?)を築いていく。

誰もがここまでヒットするとは思わなかった。もともとTV用に脚本執筆されながら、あまりの面白さゆえ映画版へと格上げ。長編映画は初めてのルーベン・フライシャーがその才能を如何なく発揮し、結果、製作費2360万ドルに対して、米国内だけで興収7560万ドルを稼ぎ出すヒットとなった。

本作で基軸を成すのは「ルール」だ。ここに登場する人間キャラは誰もが経験則でゾンビ回避術を体得してきた凄腕ばかり。ゆえにこの映画では過去のゾンビ映画、ホラー映画が描いてきた“ありがちな傾向”への安易な逃避が禁じられる。「トイレを使うときはまず閉まってる個室に注意」しなければならず、「ゾンビに追われたらまず、有酸素運動(走る)」は必須で、さらに「車に乗り込むときには、まず後部座席を調べる」ことも忘れない。つまり、入念な先回り戦法を施したうえで、それを上回る“予定不調和ぶり”のみが物語を紡ぐことを許されるのである。

実際、本作はゾンビの枠に留まらない。ホラー、アクション、コメディ、ファミリー、童貞、ロード・ムービーを縦横無尽に横断してみせ、それ自体がゾンビ映画へのカウンターというべき『ショーン・オブ・ザ・デッド』(エドガー・ライト監督)のエキスさえも貪欲に吸収している。

メインキャストはたったの4人。これにおびただしい数のゾンビ役者が加わるわけだが、あ、ひとり重要な人間キャストを忘れていた。しかしここではそれが誰なのか、口が裂けても言えない(80年代に“あの映画”の洗礼を受けた誰もが歓喜するはず)。彼がまさか「as himself」で登場するとは。。。また、このシーンで取りあげられる“とある映画”が、ゾンビ物でも何でもないところに、作り手の想い&巧妙なスカシがある。

きっとこの『ゾンビランド』も、80年代における『●ース●バ●●●ズ』になりたかったのだろう。

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2010/07/19

全米興行成績Jul16-18

先週までの復習は各自こちらで行ってください。

【Jul.16-18 weekend 推計

01 Inception (-) $60.4M
02 Despicable Me (↓) $32.7M
03 The Sorcerer's Apprentice (-) $17.3M
04 The Twilight Saga: Eclipse (↓)$13.5M
05 Toy Story3 (↓) $11.7M
06 Grown Ups (→) $10.0M
07 The Last Airbender (↓) $7.4M
08 Predators (↓) $6.8M
09 Knight & Day(↓)$3.7M
10 The Karate Kid (↓)$2.2M


*推計興収が僅差の場合、確定後にランキングが入れ替わる場合があります。

Inception
■今週はポイントが3つある。まず1つ目。猫も杓子もスクリーンからこぞって迫り出してくるこの時代に、あえて情報を引っ込めることでマーケティングを戦い抜いてきたインセプション』(拙ブログのレビューはこちらからがオープニング興収6040万ドルと堅実な数字を叩き出し、華々しく首位デビュー。レオナルド・ディカプリオ主演作としても史上最高の出だしとなった。

check! ディカプリオ主演作興収ベスト5
1.タイタニック $600M/ 2.キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン $164M/ 3.ディパーテッド $132M/ 4.シャッター・アイランド $128M/ 5.アビエイター $102M
(Mはミリオン、100万単位を表します。つまり$100Mだと1億ドル)
 

■さすが全米売り上げ史上NO.3を維持する『ダークナイト』を世に放った監督作なだけに、封切日0:00~の深夜興業では堅実に300万ドルを稼ぎ出し、その後も順調な滑り出し。製作費は1億6000万ドルと言われており、これに1億ドルを超えるマーケティング費も投入されていることから、それらを回収すべく監督&キャストも世界ツアーに奔走中。今週水曜には日本でも記者会見が行われる。

check! クリストファー・ノーラン監督作(製作費/オープニング週末/累計興収)
・ダークナイト: $185M /
$158M / $533M
・プレステージ: $40M / $14M / $53M
・バットマン・ビギンズ: $150M / $48.7M / $205.3M
・インソムニア: $46M / $21M / $67.3M
・メメント: $9M / $0.23M / $25.5M
・フォロウィング: $6000 / $--- / $48000

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2010/07/18

リトル・ランボーズ

2年前にイギリスで観た"Son of Rambow"という映画の日本公開が決定した。

Rambows_3  

邦題は『リトル・ランボーズ』。拙ブログを掘り起こしてみると、そのレビューが見つかりました。80年代、あのアクション映画と運命的な出逢いを果たした少年たちの友情物語。。。このプロットに貴方のアンテナがピーンと来たなら、更に掘り下げてご覧ください

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2010/07/17

ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実

2010年カンヌにおけるミック・ジャガーの登場は、大スター不在にあえぐ映画祭の“ハイライト”として華々しく報じられた。彼が携えたのはストーンズが自ら製作し、スティーヴン・キジャックが監督を務めるドキュメンタリー作「ストーンズ・イン・エグザイル」。本作は「監督週間」にてお披露目され、貴重な未公開映像と興味深いエピソードの数々に観客は酔いしれた。その作品が超スピードで日本到着である(7月12日~劇場公開、7月後半にはDVDリリース)。これは嬉しい。現在公開中の『パリ20区、僕たちのクラス』ですら、カンヌ最高賞受賞から丸2年も待たされたというのに。

Stones
ストーンズの映画といえば、一昨年には巨匠マーティン・スコセッシ監督が自ら入念なリハーサルのもと撮り上げた彼らのライブ映画『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』も話題になった。本作はそれらとは一線を画し、数々の未公開映像と共にストーンズの輝かしい軌跡のワンシーンを再訪する。

時代を遡ること40年前、英国で大きな成功を収めていたストーンズはウィルソン政権下で自分らに掛けられた所得税93パーセント(!)に辟易して国外へと飛び出す。亡命先はフランス。この新天地で試行錯誤の末に生まれたのが「ダイスを転がせ」を含む2枚組アルバム「メイン・ストリートのならず者」だ。これについて著名人たちが語る。「あれは名盤だよ!」 「いや、実際、あまり評価は高くなかった」 続くスコセッシのコメントが、本作の幕開けにふさわしい祝辞となって響く。

「あの頃、彼らに戻るべき場所などなかった。その焦りが音楽へと照射され、この異色なアルバムが生まれたんだ。。。」

これはストーンズがまだ「生きる伝説」と称される以前の物語だ。若さを持て余し、奔放な生活に溺れ、危ない香りのパーティーを開催して警察に目をつけられたりもする。だが、やっぱり何よりも彼らは生来のミュージシャンなのだ。いつしかメンバーは本能的に楽器を手にし、それぞれに音色を奏ではじめる。ここからは鋭意集中の時間である。これらの創作風景や、音作りの役割分担、クリエイティブな人間関係を垣間見ることは、あたかも歴史的瞬間を目の当たりにするような、心地よくも敬虔な気持ちを呼び起こしてくれる。

ストーンズはどうして今になってこんな作品をこしらえたんだろう。もういい歳したおじいちゃんなので、早々に歴史を編纂する必要性を感じたのだろうか。

その答えはいつも哲学者のような相貌のチャーリー・ワッツの口から語られた。

「まあ、いいじゃないか。遠い過去の記憶から学ぶことはたくさんあるものだよ」

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2010/07/16

ミレニアム2 火と戯れる女

以前、スウェーデン大使館で貰った資料を紐解くと、スウェーデン人の気質について次のような趣旨の文章が載っていた。

「確かに少し退屈だし、差しでがましいところもある。内気な恥ずかしがり屋でハッキリとした特色のない国民だと写るかも。けれどこれは表面的な印象に過ぎない。一皮むけば、熱狂的で官能的で涙もろく、自国に対する誇りと自信に満ちている」

なるほど。確かに『ミレニアム』の登場人物はそんな人たちばかりだ。でもだからこそ、欧米とは一味も二味も違う、とびきり濃厚なミステリーに生まれ得たのだろう。

Thegirlwhoplayedwithfire_2 

本作は映画版『ミレニアム/ドラゴン・タトゥーの女』の続編である。そもそも原作者スティーグ・ラーソンが本作の出版(および大ヒット)を待たずに急逝した事実からして極めて“ミステリー”なシリーズではあるのだが、原作に込められた強力な磁場、執念、先のスウェーデン人気質に挙げられていた“熱狂”ともいうべきエッセンスは、映画版でも変わらず遺伝子レベルで息づいている。

『ドラゴン・タトゥー~』で巨大な家族企業をめぐる少女失踪事件を解き明かしたジャーナリストのミカエルと天才女ハッカー、リスベット。捜査期間中は互いを信頼しあい運命を共にした彼らだったが、第2弾ではほとんど出逢うことも言葉を交わすこともない。それぞれがそれぞれの持ち場で自分の生存を賭けて新たな謎を追いかける。

今回もその中核を成すのはミカエルが発行責任者を務める雑誌「ミレニアム」。社会の暗部をえぐる衝撃スクープを連発してきた彼らが次に挑むのは、ヨーロッパにまたがる少女人身売買組織だ。そして巻き起こる突然の悲劇。中心的な取材を担ってきた編集員が何者かに惨殺され、編集部員たちはこの問題の根深さに心底恐怖することになる。

一方、行方を眩ませていたリスベットも動きを見せる。極秘裏に母国へ舞い戻った彼女の存在を、とある組織は見逃さなかった。期せずして発生した事件の現場からは彼女の指紋が検出され、街中に彼女の顔写真が貼り出される。やがてミカエルとリスベットは、それぞれが同じ巨大な陰謀へと絡み取られていることに気づくのだが・・。

監督が変わっても面白さは相変わらず。ハリウッド流の“矢継ぎ早”演出に慣れていると、本作のスロースターターぶりに「ちゃんと最後まで辿りつくのか?」と不安になりもするが、最後の景色を目にした者として「全く心配はいらなかった」と証言しておこう。むしろ観客の体内時計がぐるぐると狂わされて、まさに『ミレニアム』にしかあり得ない独自のペース、独自の世界観へどっぷりと巻き込まれていく。

見どころは何と言っても、ジャーナリスト出身の原作者による傑出したリアリティの醸成にある。結びつく点と点。仕掛けてから糸が引くまでの執念深い待ち時間。ひとつの証拠から多くを読み取る推理力。かといって本作はお行儀のいい社会派ミステリーとして枠にはまることを端から拒否し、物語上の変数的存在“リスベット”という要素を大胆に掛け合わせることによって、まるで空から火薬を大量投下したかのような大波乱を獲得していく。

肝心のリスベットの変貌ぶりも見逃せない。前作でショートだった髪は伸び、パンキッシュな服装もかなりカジュアルに。ただし顔面には前作の“無表情”とは違い、常に不安げな表情を覗かせる。それは心にほんの微かな感情が芽生え、そのことに他でもない彼女自身が言い知れぬ戸惑いを覚えているかのよう。だがこれはサナギがチョウになる途中の進化形態に過ぎない。続く『ミレニアム3』で彼女は更なる強烈な振り切れ方で観客を圧倒することになるのだが・・・それについては、また後日。

ちなみに、7月9日より全米公開された『ミレニアム2』はたった108館という上映規模ながらも、週末ボックスオフィス11位に付ける健闘ぶりをみせた。週末3日間の興収は90万ドル。1館あたりのアベレージは8400ドルほど。人気の裏にはデヴィッド・フィンチャー監督によるハリウッド・リメイクが進行中という背景もあるのだろう。ミカエル役の候補にはブラッド・ピット、ダニエル・クレイグ。リスベット役候補にはナタリー・ポートマン、キャリー・マリガン、キーラ・ナイトレイらが挙がっているものの、プロデューサーの中にはスウェーデン版でブレイクしたノオミ・ラパスのように全く無名の新人が起用されるべきと主張する人もおり、製作陣がいかなる決定を下すのかに注目が集まっている。

ミレニアム/ドラゴン・タトゥーの女
ミレニアム2/火と戯れる女
ミレニアム3/眠れる女と狂卓の騎士

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2010/07/14

シュアリー・サムデイ

小栗旬による初監督作。20代の若さにして、しかも映画を専門的に学んできたわけではないのに、このようなビッグ・プロジェクトを任せられる才能。これはもはや出資側が、演出の腕よりも、小栗旬というブランドそのものに投資したのだと考えていい。「いまの若さで、お前に出来ることを全てやってみろ」 まるでそう言われてバッターボックスに送り出された選手。そのオーラだけは今にもホームランを打ちそうな凄味に満ちているわけだが。

恐らく本作の公開日は、小栗旬にとって人生で最も達成感に満ち溢れた一日であると同時に、自らが課した重責を噛みしめる日にもなることだろう。あなたは彼のマイルストーンにどんな評価を下すだろうか?

本作はかつて高校時代に爆破騒ぎを起こした問題児たちが、数年後、マフィアが絡んだ現金強奪事件に巻き込まれていく物語である。彼らは事あるごとに挫折感に苛まれ、そこからの逃避か、あるいは開き直りのパワーを得るために、幾度も「バカだから仕方がねえ!」と口にする。なおかつこれがテーマのひとつにも据えられている。この言いわけ染みたセリフも一度目までは「免罪符」として耳心地よく笑いを誘う。だが、二度目、三度目となると明らかな虚しさが漂い始め、耳にベッタリと重油のぬかるみが及んでくる。そして登場人物たちもこの言葉の有効期限にはとうに気づいているようにも思えるのだ。ゆえに彼らの表情には焦燥感が滲む。象徴的な面で言うと、すでに冒頭にて時限爆弾が炸裂した時点で「バカ」は終焉を迎えているのかもしれない。とするとこれはロスタイムの映画ともいうことになる。

なるほど小栗旬監督はこれを、中盤に登場する“路上ライブ”でも開くような心意気で、同世代の若者たちに向けて渾身の力で放ったのだろう。しかしこうして受け手が限定されてしまうと、テーマが思わぬ具合に反転する場合がある。「若いころにしかできないバカ」を限定的に描くことは、暗に「若さを過ぎると生真面に生きざるを得ない人生」を描くことにも繋がってくる。これが少なからぬ“若くない観客”にとっては閉そく感となって圧し掛かってくる。普通ならばここで「理解のある大人」キャラを仲介役に作品の風通しを良くするのだろうが、本作の製作陣と小栗旬は自らその退路を断ったのか、ここに出現するのはほんとうに「若者による若者のための映画」なのだった。

ただし、良いところもたくさんある。生来の映画人ならば安全圏でこじんまりとした作品を作りがちなところを、思わぬスケールの大きさで揺さぶりをかけていく肝っ玉のデカさには驚かされたし、蜷川幸雄の舞台で出逢ったであろう実力派の役者を幾人もフィーチャーしている点にも目を惹かれた。とりわけマフィアのボスを演じる吉田鋼太郎には注目だ。これまでに見たことのない不気味かつ軽妙な立ち振る舞いにはついつい魅了されてしまう。

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2010/07/13

シングルマン

グッチやイヴ・サンローランのクリエイティヴ・ディレクターとして脚光を浴び、現在は自身の名を冠したブランド「トム・フォード」を主宰。そんな逸材がついに映画界へと進出した。しかも製作費を捻出するために私財を投げ打って。そもそも衣服をデザインすることは着衣者のライフスタイルや人間性をもデザインすることであるから、彼が何らかの感性演出やそれに伴う統率力に秀でた人物であることは容易に想像がつく。

Single_man_ver2_2

ファーストカットから身動きができなかった。そのあまりに優しく身体の襞という襞から沁み込んでくる映像美。ワンシーンごとに感覚に訴えかけてくる演技。心の機微を丹念に重ね合わせるかのような編集。そしてなにひとつ欠けたとしてもすべてが全く成立しなくなるほど計算され尽くした美術の数々。

どんな神がかり的な手さばきであのあまりに繊細な構築物を紡ぎ上げていったのか。たとえ映画を知り尽くした巨匠でも、あれほどの物は絶対に撮れない、まさにトム・フォードが彼自身であるという、生きた証。彼が見つめた終着地にしか存在しえない、唯一無二の風景がここにはある。

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2010/07/12

全米興行成績Jul.09-11

先週までの復習は各自こちらで行ってください。

【Jul.09-11 weekend 確定

01 Despicable Me (-) $60.1M $56.4M
02 The Twilight Saga: Eclipse (↓) $33.4M
03 Predators (-) $25.3M
04 Toy Story3(↓)$22.0M
05 The Last Airbender (↓) $17.1M
06 Grown Ups (↓) $16.4M
07 Knight & Day (↓) $7.8M
08 The Karate Kid (↓) $5.7M
09 The A-Team (↓)$1.8M
10 Cyrus (↑)$1.3M


*推計興収が僅差の場合、確定後にランキングが入れ替わる場合があります。

Despicable

■ユニバーサルの3Dアニメ『怪盗グル―の月泥棒』(原題Despicable Me)が当初の3000万ドルとの興収予測を大幅に上回る推計6010万ドル5,640万ドルを売り上げ首位を獲得した。私生活でトラブル続きの大怪盗と、アシスタントのバナナの妖精(バケモノ?)たちが、新たなターゲット“月”強奪にむけて奔走するアドベンチャー。

■本作は元20世紀フォックスのアニメ部門責任者として『アイスエイジ』や『ホ―トン』シリーズを製作してきたクリス・メレダンドリの新たな野心作としても注目されている。製作費も6900万ドルと3Dにしては比較的安価だが、現在までのところ観客&評論家の反応も上々のようだ。日本ではまだ知名度のイマイチな(でもアメリカでは人気絶大)スティーヴ・カレルが声優を務めているものの、日本公開版の多くは笑福亭鶴瓶をヴォイスキャストに迎えた吹き替え版となる模様。日本公開は10月末

■先週の映画市場に火をつけた『トワイライト・サーガ/エクリプス』は週末の興収3340万ドルを売り上げ、12日間の累計を2億3700万ドルとした。オープニング週末に比べると数字の下落率は48パーセントにとどまっている。ちなみに1週目→2週目の下落率は50パーセントがひとつの基準となる。これよりも落ち方が緩やかならば、何らかの口コミ効果が発生していることになる。なお、前作『ニュームーン』の12日間の累計は2億3500万ドルだった。

■ロバート・ロドリゲス製作のもと生まれ変わった『プレデターズ』は、興収2530万ドルで3位スタート。ロドリゲスらしく製作費は3800万ドルと安あがり。観客の7割が男性だという。
ex.
・プレデター(87)公開週末$12M/累計$59.7M/製作費$15M
・プレデター2(90)週末$8.8M/累計$
30.7/製作$35M
・エイリアンVSプレデター(04)週末$38M/累計$80.3M
/製作$60M
・エイリアンVSプレデター2(07)週末$10M/累計$42M/製作$40M

■一方、『トイ・ストーリー3』(拙ブログのレビューはこちらから)は公開4週目にして累計予測が3億4020万ドルと報じられている。月曜日中にでもこの数字が確定すればその時点で『ファインディング・ニモ』(3億3970万ドル)を抜き去り、新たなディズニー史上NO.1興収作品が誕生することとなる。update! 結局、『トイ・ストーリー3』の累計興収は3億3924万ドルに留まり、『ファインディング・ニモ』にはギリギリ及ばず。記念すべき達成日は月曜日以降ということになりそう。

■M.ナイト・シャマラン監督作『エアベンダー』(製作費だけで1億5000万ドル)は、2週目で興収1億ドルを越えてきた。ただし下落率は先週比58パーセント。上述した法則に従えば、これもまたそれなりの化学変化ということになるわけだが。。。

■トップ12作品の興収合計額は、『ブルーノ』が首位を獲得した昨年の同時期に比べて43パーセントも上昇している。

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2010/07/08

インセプション

2010年最大の謎とされるこの作品がついにベールを脱いだ。
筆者が日本での完成披露試写前に目を通したのはEMPIREのレビューのみ。そこには「『マトリックス』に『脳内ニューヨーク』を掛け合わせたかのような。あるいはチャーリー・カウフマン版の007」と記してあり、観賞後に心地よい疲労感と共にクレジットを眺めながら、この言葉は的を得ているなと感じた。

Inception_poster1

以下、レビューである。事前になるだけ情報を仕入れたくない主義の方は今すぐご退去願いたい。かといって、『インセプション』はM.ナイト・シャマラン映画のように何か大きな種明かしを抱えているわけでもなく、例の「結末は絶対に明かさないでください」「全米公開までいかなるレビューも公開しません」といった契約書にサインさせられることも一切なかった。製作・配給側にしてみれば「できるものなら言葉で表現してみろ」といったところだろう。

要は『メメント』で“時間”をステージごとに分割して逆回転させてみせたクリストファー・ノーランが、今度は“夢”についての更なる突飛なアイディアを『ダークナイト』級の映像力でもって抽出してみせた作品である。

ここで作り手がフロイティアンであれば「夢判断」のごとく徹底して性を絡ませた表現が続くと思うのだが、さすが万人に開かれたエンタテインメントなだけに、ノーランは「アクション」でこの物語を紡ぐ。かといって決してターセムの『ザ・セル』のように、いわゆるグロテスクなダークサイドに陥ることもない。

とある闇ビジネスがあった。彼らはターゲットの夢の中へ侵入して、アイディアを奪う(これを“エクストラクション”と呼ぶ)。その世界の立役者コブ(ディカプリオ)はアーサー(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)と組んで企業間のスパイとして暗躍する一方、とある事情により妻や子供たちと離れた暮らしを余儀なくされている。ある日、サイトウと名乗る日本人の男(渡辺謙)が彼らに仕事を依頼してきた。ライバル企業の新たな経営者(キリアン・マーフィー)の夢の中で“インセプション(記憶の植え込み)”を行ってほしい、と。提示された条件はコブに取って願ってもないことだった。このミッションを成功に導くには最高のチームが必要となる。まず重要なのは夢内部の設計士だ。コブはさっそく優秀な建築学部生(エレン・ペイジ)に声をかけ、どんな創造性をも具現化できる“夢の世界”の設計をトレーニングしていく・・・。

だいたいこのあたりまでで30分くらい。このあと本格的にノーランの創造力が静かに爆発していく。ここで僕らは不思議な現象に直面する。これまでの映画が時間の経過に沿って一本の線上に体を成していくものなのだとしたら、本作はなんというか、層を成して堆積していく映画といえそうだ。というのも、彼らは夢のまた夢。。。といった具合に複数の層にまたがってストーリーを同時展開させていく。また、時間の進み方は夢の層ごとに違う。上層の一瞬が下層では数十分、数時間に引き延ばされる。またその最下層には“虚無”と呼ばれる世界も広がっているらしい。これがノーランの作りだした夢の世界、人間の内的宇宙。観客はこの新種のストーリーの展開法にズッシリと脳負荷をかけられながら、このパラレルなジェットコースター・ムービーに浸ることになる。

一体全体、こんな複雑な物語をどうやって具現化していったのか。言葉では全くもって理解不能なものが映像世界ではいとも簡単に理解できる。そこがノーランの凄いところだ。

劇場を後にするとき、「難しすぎた」「あそこが分からん」「半分以上寝てた」なんて声も聞かれた。確かに人によっては好き嫌いが分かれるかもしれない。ノーランが同じストーリーを『メメント』級の低予算で撮ると一風変わったアートな質感が生まれただろうし、またこういう作品を得意とするミシェル・ゴンドリーが手掛けたりするとまた家内制手工業的なガラリと変わった世界になったことだろう。

僕もこの映画についてどれだけ理解できているのか分からないが、別に“夢”に限定することもなく、この『インセプション』の世界観は日常のあらゆるところに出現するものだと思う。人間の思考だって複数層に分かれて高速度の演算を繰り返して答えを割り出すものであるし、会社の組織の在り方にしても様々な層において同時進行的に動きがあり、その相互関連性によって結果が案出されていくもの。それこそ大企業ほどのスタッフ&キャストが一斉に創造作業に取り組む映画作りもその最たるものだ。クリストファー・ノーランの脳内では『インセプション』の世界がごく日常レベルで起こっているのかもしれない。

『マトリックス』の全米公開から10年以上が経過し、僕らを取り巻く時代もようやく一巡した。でもバーチャルな世界がより促進されるかと思いきや、どうやら作り手や観客は科学技術の発達に輪をかけて“生身の人間”そのものにこそ熱い視線を注いでいるようだ。

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2010/07/07

MORSE モールス

昨年、一つのスウェーデン映画が欧米をはじめ世界中に衝撃をもたらした。そのタイトルは"Let The Right One In"。日本では『ぼくのエリ/200歳の少女』という邦題で今週末より順次公開となる。

内容はというと。。。12歳の少女ヴァンパイアといじめられっ子の少年とが織りなす『小さな恋のメロディ』。。。といえばイメージが湧きやすいだろうか。映画の製作者に言わせると「とにかく原作に魅了されたんだ」とのことなので、日本でも翻訳出版されている原作本「モールス」を手にしてみた。作者のヨン・アイヴィデ・リンドグヴィストは"Let The Right One In
"の脚本も手がけている。

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ストックホルムにほど近い住宅地で殺人事件が起きる。その手法はかなり儀式めいており、被害者は逆さに吊るされ、生血を抜かれていた。平和そのものだったこの街で、いったい誰が…!?同じころ、少年の暮らすアパートの隣部屋に少女が引っ越してくる。エリと名乗る彼女は、父親らしき男と二人暮らしのようだった。昼間にその姿を見ることは無い。いつも彼女と出逢うのは夜。「きみとは友達になれないよ」とエリは言う。その奇妙な立ち振る舞い、言動、そして日ごとに全く異なる顔色。漂う臭気。少年は彼女のことが少しずつ気になりはじめる。学校でいじめられてばかりいる少年にとって、彼女は大切な話し相手になっていく。そして彼の心にはエリへの恋心らしき想いさえ芽生え始めていた。彼女の正体が何者であるか、知らないで。。。

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2010/07/06

Boy A

「あ、英語でもこういう言い方するのか。。。」 誰かがレンタル屋でこう口にした。旧作のミニシアター・コーナーでの風景である。

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英国と日本。文化や言語は違っても、過ちを犯した青少年を区別するやり方、発想は同じようだ。日本でも小栗旬主演の『is A』や君塚良一監督作『誰も守ってはくれない』など、同様のテーマを扱った社会派映画が作られてきた。

イギリス、マンチェスター。この地でひとりの青年が新しい人生を踏み出した。傍から見ると他の同世代の若者と変わらない。が、かつて彼は"boy A"と呼ばれた。十数年もの年月が経過しても、人々の記憶からあの事件のことが消え去ることはない。

ここでは誰も彼の名前を知らない。素顔も知らない。長らく塀の中で暮らしてきた彼はひどく内向的に見える。ときどき保護観察士(英国を代表する名優のひとりピーター・ミュランが演じる)と会話を交わす。「うまくやっているか?」「はい。。。」 人生は徐々に切り開かれていく。友達ができた。他人を信じられるようになった。人と繋がる術を学んだ。気になる女の子をデートに誘った。仕事で褒められた。自分の気持ちを少しずつ伝えられるようになってきた。

しかし幸福な時間は長くはつづかない。たったひとつのボタンの掛け違いによって、全ては砂の城が魅せた幻影だったかのように、無惨に崩れ去っていく。

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これは一度は社会から「悪魔の子」と烙印を押された青年が、一歩ずつ歩き方を覚え、生きていっていいんだ、前に進んでいいんだ、と少しずつ足元を踏みしめていく。その再生の日々を透明感あふれる映像で綴った物語だ。

カメラはboyAの主観に寄り添いながらも、決して彼に肩入れすることはない。事件の被害者と加害者、それを取り巻く外部、また彼らをひとしく保護するはずの法制度がそれぞれに静かに破綻していく様をじっと見つめ続ける。

ラストに主人公は街から逃げ出す。そのときの彼の気持ちはきっと、誰も自分のことを知らない地の果てにでも向かうつもりだったに違いない。でも僕はその終着地を見て愕然とした。そこはブラックプールという港町。ただでさえ狭い英国内で、そこは想像していたよりも遥かに近場だったのだ。

の心の中で精一杯に広げられた世界地図はあまりに小さかった。20歳をとうに過ぎた彼の心と身体が、まるで時が止まったかのように、哀しいほどかぼそく、ひ弱に思えた。

先日、新スパイダーマン役が決定した。『大いなる陰謀』『Dr.パルナサスの鏡』などにも出演してきたアンドリュー・ガーフィールドが数多の若手俳優よりも一枚抜きん出ていた背景には少なからず『Boy A』の存在がある。俳優としてのキャリアにおいて、若くしてこれほど難しい役に挑み、心に渦巻く不安や孤独を表現した。そしてなおかつ深刻なテーマを突き破り、透明感あふれるアート=作品に仕立て上げた。この功績は大きい。

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2010/07/05

ビルケナウの草原

アウシュヴィッツとビルケナウは一緒に論じられることが多い。『シンドラーのリスト』や「白い巨塔」に登場したこの建物は、精確に言うと、ビルケナウ収容所にあたる。ここはユダヤ人をはじめとする収容者をいかに効率よく始末するかに心血の注がれた“絶滅収容所”である。
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全米興行成績Jul.02-04

先週までの復習は各自こちらで行ってください。

【Jul.02-04 weekend 推計

01 The Twilight Saga: Eclipse (-) $69M
02 The Last Airbender
(-) $40.6M
03 Toy Story3 (↓) $30.1M
04 Grown Ups (↓)$18.5M
05 Knight & Day (↓) $10.2M
06 The Karate Kid (↓) $8.0M
07 The A-Team (↓) $3.0M
08 Get Him to the Greek (↓) $1.1M
09 Shrek Forever After (↓)$0.8M
10 Cyrus (↑)$0.7M 
Letters to Juliet

*推計興収が僅差の場合、確定後にランキングが入れ替わる場合があります。

■7月4日といえば、映画のタイトルとしてもお馴染みのとおり、アメリカと言う国を象徴するほどの記念日であり、映画興行的にもサマーシーズンの山場となる。各スタジオはこの日に合わせて最強の興行プログラムを準備するわけで、ちなみに昨年の同時期はこんな状況だった。

■そんな重要な時期の顔として『トワイライト』シリーズ第3弾『エクリプス』が登場。6月30日の午前0時より封切られた本作はその日の深夜興行において新記録を樹立。初日興収6,853万ドルは“水曜公開作”としては新記録を樹立したものの、初日興収としては前作『ニュームーン』の7,270万ドルを抜くことはできず歴代2位に留まった。なお、金曜~日曜の週末3日間の興収は6,900万ドルに昇り、これに水曜&木曜を足したオープニング5日間の興収は1億6100万ドル(この数字は歴代7位)、休日となる月曜日分を合わさると1億8100万ドルに達する見込み。

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2010/07/04

下校するにはまだ早い

あれは僕が高校生の頃。太田正一という男とふたりで長崎の住吉商店街を歩きながら、こっぱずかしくも将来の夢について語り合ったことがあった。そのとき自分がなんて答えたかは忘れてしまったが、太田が口にした答えだけは今でも鮮明に覚えている。

「映画監督になりたい」

彼は中学校時代の同級生だった。今では閉館してしまった長崎の映画館に何度か一緒に足を運んだこともあった(たしか『バック・ドラフト』を観たんじゃなかったかな)。嬉しいことに、二人とも故郷を離れた現在も交流はつづいており、年に4度ほど、「げんきですか?」とコメント付きの手紙が届く。モンキーバードドッグ」という二人芝居公演のお知らせだ。彼は“映画監督”ではないものの、それにほど近いところで、役者になっていたのだった。

そんな太田がショートフィルムに出演したという。しかもあの『洗濯機は俺にまかせろ』や『はつ恋』で名高い篠原哲雄監督の作品に。

*************

これは渋谷のユーロスペースで7月3日よりレイトショー公開される『+1(プラス・ワン)』という短編作品集のひとつだ。株式会社アプレが主催する4日間のワークショップにて、映画監督と俳優たちがそれぞれの方法論で一冊の台本と取り組み、20分~30分の作品を紡ぎ上げていく。篠原監督のほかにも、山川直人、富樫森、熊切和嘉という才能がチームを率いて作品を手掛けている。それぞれが商業映画でキャリアを築いてきた映画人であるところに他のショートフィルム企画との決定的な違いがある。

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2010/07/03

フェアウェル/さらば、哀しみのスパイ

ときにフランス映画は国籍が不明になる。ロシアの即席オーケストラが演奏旅行と称してフランス本土へ殴り込みをかける『オーケストラ!』と同じく、『フェアウェル』はその舞台の大半をロシアに据える。さては「冷戦終結のきっかけを作ったのは仏国だ!」との存在感のアピールか。いや、そんな思惑を抜きにしても、本作は真夏をクールにしびれさせるスパイ物の快作なのだった。

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80年代、モスクワ。この地で暮らすフランス人技師(ギョーム・カネ)は仏国家保安局の依頼により、とある大物KGBとの仲介役を担わされることになる。彼の名はグリゴリエフ。つい先日「渡したいものがある」と仏政府筋との接触を求めてきた男だった。彼は信用できるのか?彼の目的はいったい何なのか?疑心暗鬼が渦巻くなか、この仕事に関してまったくの素人である技師とグリゴリエフとの間には、いつしか仄かな友情が生まれていた。そして幾度にもわたる接触のたび、手渡される物の重要性は増していく。それらは各国に散らばったソ連スパイが収集した最重要機密の数々。原子力潜水艦、スペースシャトル、エアフォース・ワンの設計図なども含まれていた。。。

当時のソ連は独力での研究・開発が限界に達し、もはや西側諸国とのパワーバランスを維持するにはスパイたちの情報収集に頼らざるを得ない状態に陥っていた。グリゴリエフは暗号名“フェアウェル”と名乗りこの事実を西側諸国へと提供し、各国の首脳たちは強い衝撃を受けることになる。それは彼らが初めて冷戦の終結を具体的にイメージできた瞬間だった。つまり、グリゴリエフの力を借りることでスパイを一斉摘発すれば、もはやソ連の国力は西側に対抗できなくなり、おのずと冷戦の勝敗も明白となるのである。

では、なぜ、グリゴリエフは母国を売るような行為に打って出るのか?ここにこそ、この男の一筋縄ではいかない決断が隠れている。彼を背信に走らせた想いに説得力が滲みでるかどうかは、つまるところすべて俳優の表現力にかかっているといっても過言ではない。そしてこの最重要人物グリゴリエフを演じる者こそ、映画監督として名高いエミール・クストリッツァである。

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彼の表情に刻まれた皺のカーブ、そしてイビチャ・オシムのごとく東欧ならではの奥まった目から放たれる鋭い眼光。KGBの大佐であることを納得させるガッシリとした体格。そんな“いかつさ”からは想像もできないくらいの優しさや熱っぽさを秘めた内面をも見事に演じきっている。

また、本作はふたりの主人公の関係性を“内心”に据え、もうひとつ世界政治を司る“外心”として物語にレーガン大統領、ミッテラン大統領といった政府要人たちを招聘する。東側諸国に対抗する仲間であるはずの彼らだが、政治体制や国のメンツ、政治理念の違いなどで互いに牽制しあうことも数多い。そんな執務室の権謀術数や彼らについて微かに耳にしたことのあるエピソード(レーガンが執務室で西部劇を視聴するのをこのんでいたり)を享受できるのも本作の持つ醍醐味のひとつ。これらを並列に描くことで、主人公らの友情が徐々に世界を動かしていく胎動が伝わってくる。

奇しくも本作の日本公開を祝福するかのように、つい先日、アメリカで“美しすぎるスパイ”をはじめとする現代のロシア・スパイたちが大量検挙された(本作でも美人スパイ役でダイアン・クルーガーがカメオ出演している。彼女は本作のクリスチャン・カリオン監督の『戦場のアリア』の主役でもあった)映画はエンドクレジットが過ぎればおしまいだが、現実世界はいまもあの<フェアウェル事件>の延長線上に存在するのだと改めて実感させられる事件だった。

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