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2010/07/21

北京の自転車

以前、『1978年、冬。』という中国映画(正確には日中合作)を目にした時から、“ワコー”という配給会社が手掛けるアジア映画にハズレ無し、との想いを強くした。そのワコーが、7月24日より始まる「中国映画の全貌2010」にて『北京の自転車』という10年前の傑作を日本に届けてくれるという。

監督のワン・シャオシュアイは中国第6世代の旗手として現在グイグイと名を挙げている才能。今年のカンヌでも"Chongqing Blues"がコンペ部門に選出され、高い評価を得た。

Bicycle_2
物語はまず、農村部から出稼ぎにやってきた少年“クイ”の表情から幕を開ける。面接試験を経て、彼はこの大都会で自転車配達の仕事を得る。採用者の一人一人に自転車が支給され、続けて社長が檄を飛ばす。「これは君たちへの先行投資だ!真面目に仕事をこなせば、一台分の稼ぎなんてあっという間だ!その清算さえ済めば、その時点で自転車は完全に君らの所有物となる!」 かくしてクイの奮闘が始まった。慣れない路を通り、汗をかきかき、街から街へ。しかし開始早々思わぬハプニングが彼を襲う。ちょっと目を離した隙に愛車の姿が忽然と消えてしまったのだ。

ちょうどその頃、街にはピカピカの自転車を自慢気に乗り回す、ひとりの高校生“チエン”の姿があった。。。

Beijing_bicycle_big
映画観賞は時として天体観測に似ている。ここに映し出される街並み(とくにフ―トン)は、何億光年も離れた星の輝きと同じく、今現在すっかり失われているかもしれない。いわば、幻の風景。まさか10年後の観客がいま、そんな遠い目をして自分たちの姿を見つめているなんて、出演者たちは想像だにしなかったろう。

いや、それにしても農村少年の執念は凄まじい。会社の社長に「失くした自転車が見つかるものか!もう諦めろ!」と言われようとも黒澤明監督作『野良犬』の刑事のごとく、泥だらけで朦朧となりながら捜索を続ける。見たところ彼はそれほど積極的な性格ではなく、常に都会人に引け目を感じてオドオドしている。しかし自分の所有物となると話は別だ。汗水流してようやく手にしたものを、そう易々と手放すことなどあり得ないのである。

対する都会の高校生チエンもいろいろと悩みを抱えている。彼にはクイほどの執念はないかもしれない。しかし知恵がある。悪知恵も。仲間も。

田舎者の少年と、都会の高校生。そしてそのどちらが欠けても成立しない。本作はやがて同年代のふたりが一台の自転車をめぐって奇妙な交流を深めていく。超大国であるこの国の若者をたった2つに類別するのはすこし乱暴なやり方かもしれない。が、彼らが一台の自転車をめぐって交互に漕ぎ合うとき、そこには両輪の回転が化学変化を巻き起こし、凄まじいまでの相乗効果を巻き起こしそうな気配に包まれる。

はたしてあなたの目に映るラストシーンは、ハッピーエンドか、否か。もしもそれに続くエピローグがあるとすれば、この映画から10年後、我々が目にしている現代中国の躍進こそが、まさしくそれにあたるのだろう。

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