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2010/07/16

ミレニアム2 火と戯れる女

以前、スウェーデン大使館で貰った資料を紐解くと、スウェーデン人の気質について次のような趣旨の文章が載っていた。

「確かに少し退屈だし、差しでがましいところもある。内気な恥ずかしがり屋でハッキリとした特色のない国民だと写るかも。けれどこれは表面的な印象に過ぎない。一皮むけば、熱狂的で官能的で涙もろく、自国に対する誇りと自信に満ちている」

なるほど。確かに『ミレニアム』の登場人物はそんな人たちばかりだ。でもだからこそ、欧米とは一味も二味も違う、とびきり濃厚なミステリーに生まれ得たのだろう。

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本作は映画版『ミレニアム/ドラゴン・タトゥーの女』の続編である。そもそも原作者スティーグ・ラーソンが本作の出版(および大ヒット)を待たずに急逝した事実からして極めて“ミステリー”なシリーズではあるのだが、原作に込められた強力な磁場、執念、先のスウェーデン人気質に挙げられていた“熱狂”ともいうべきエッセンスは、映画版でも変わらず遺伝子レベルで息づいている。

『ドラゴン・タトゥー~』で巨大な家族企業をめぐる少女失踪事件を解き明かしたジャーナリストのミカエルと天才女ハッカー、リスベット。捜査期間中は互いを信頼しあい運命を共にした彼らだったが、第2弾ではほとんど出逢うことも言葉を交わすこともない。それぞれがそれぞれの持ち場で自分の生存を賭けて新たな謎を追いかける。

今回もその中核を成すのはミカエルが発行責任者を務める雑誌「ミレニアム」。社会の暗部をえぐる衝撃スクープを連発してきた彼らが次に挑むのは、ヨーロッパにまたがる少女人身売買組織だ。そして巻き起こる突然の悲劇。中心的な取材を担ってきた編集員が何者かに惨殺され、編集部員たちはこの問題の根深さに心底恐怖することになる。

一方、行方を眩ませていたリスベットも動きを見せる。極秘裏に母国へ舞い戻った彼女の存在を、とある組織は見逃さなかった。期せずして発生した事件の現場からは彼女の指紋が検出され、街中に彼女の顔写真が貼り出される。やがてミカエルとリスベットは、それぞれが同じ巨大な陰謀へと絡み取られていることに気づくのだが・・。

監督が変わっても面白さは相変わらず。ハリウッド流の“矢継ぎ早”演出に慣れていると、本作のスロースターターぶりに「ちゃんと最後まで辿りつくのか?」と不安になりもするが、最後の景色を目にした者として「全く心配はいらなかった」と証言しておこう。むしろ観客の体内時計がぐるぐると狂わされて、まさに『ミレニアム』にしかあり得ない独自のペース、独自の世界観へどっぷりと巻き込まれていく。

見どころは何と言っても、ジャーナリスト出身の原作者による傑出したリアリティの醸成にある。結びつく点と点。仕掛けてから糸が引くまでの執念深い待ち時間。ひとつの証拠から多くを読み取る推理力。かといって本作はお行儀のいい社会派ミステリーとして枠にはまることを端から拒否し、物語上の変数的存在“リスベット”という要素を大胆に掛け合わせることによって、まるで空から火薬を大量投下したかのような大波乱を獲得していく。

肝心のリスベットの変貌ぶりも見逃せない。前作でショートだった髪は伸び、パンキッシュな服装もかなりカジュアルに。ただし顔面には前作の“無表情”とは違い、常に不安げな表情を覗かせる。それは心にほんの微かな感情が芽生え、そのことに他でもない彼女自身が言い知れぬ戸惑いを覚えているかのよう。だがこれはサナギがチョウになる途中の進化形態に過ぎない。続く『ミレニアム3』で彼女は更なる強烈な振り切れ方で観客を圧倒することになるのだが・・・それについては、また後日。

ちなみに、7月9日より全米公開された『ミレニアム2』はたった108館という上映規模ながらも、週末ボックスオフィス11位に付ける健闘ぶりをみせた。週末3日間の興収は90万ドル。1館あたりのアベレージは8400ドルほど。人気の裏にはデヴィッド・フィンチャー監督によるハリウッド・リメイクが進行中という背景もあるのだろう。ミカエル役の候補にはブラッド・ピット、ダニエル・クレイグ。リスベット役候補にはナタリー・ポートマン、キャリー・マリガン、キーラ・ナイトレイらが挙がっているものの、プロデューサーの中にはスウェーデン版でブレイクしたノオミ・ラパスのように全く無名の新人が起用されるべきと主張する人もおり、製作陣がいかなる決定を下すのかに注目が集まっている。

ミレニアム/ドラゴン・タトゥーの女
ミレニアム2/火と戯れる女
ミレニアム3/眠れる女と狂卓の騎士

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