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2010/07/27

アイスバーグ!

暑い。何もしたくない。けれどこんな時分にまるで救世主のごとく打ってつけの作品が届くのだから、映画の神様ってのは本当に存在するのかもしれない。

L_iceberg_3
2005年に製作されたベルギー映画『アイスバーグ!』がいよいよ公開される。タイトルからして「氷山」なので、真夏の劇場で快適なひとときを過ごせること請け合いなのだが、それにも増して、もちろん内容についても折り紙つきだ。これまで見たこともない世界へ連れて行ってくれる。なにしろ、この映画の製作・出演・脚本・監督を務めるのは、フランスで道化師になるために同じ学び舎で過ごした3人組の男女なのだから。

映画は一軒のファーストフード店で幕を開ける。そこの女店長フィオナが冷凍室に閉じ込められる。しまった、扉は外からしか開かない。すでに灯りの落ちた店内には誰も人が残っていない。とりあえずジタバタしてみる。どうしよう。このままじゃ死ぬ。彼女は急いで段ボールから冷凍ポテトの山を放り出し、その中にスッポリと避難。朝になって同僚が見つけてくれるまでかろうじて生き抜いてみせる。。。

Ice
彼女は助かった。しかし、この日から彼女は豹変し、「氷点下」のトリコとなった。そして取りつかれたようにアイスバーグ=氷山に思いを馳せる。ああ、氷山が好きだ、氷山に逢いたい、誰か私を氷山に連れてって・・・。思い余ったフィオナはついに夫と子供を残して家を飛び出すのだが。。。

道化師とは身体表現のエキスパート。ささやか、かつダイナミックな身体の動きに心情を集約させ、それを笑いに変える。僕らはかつてのマルセル・マルソーのパントマイムに触れるかのように、彼らのストイックに鍛え抜かれた肉体から繰り出されるおかしなおかしな言語表現の数々に、徐々に徐々に蝕まれていく。彼らの姿に無声映画の王者たち(チャップリンやキートン、ハロルド・ロイド)を重ね合わせる人もいるだろう。はたまた不器用な人々が織りなす不思議な間合いにアキ・カウリスマキ作品を思い出す人もいるだろう。

彼らが巻き起こす笑いは、いわゆるハリウッド的な映画メソッドに基づく「ギャグ」ではない。もともと違う立ち位置でエンタテインメント、笑い、芸術、伝統について学んできた人たちだからこそ、これまでの映画文法からするとかなり異質の風が吹き込んでくる。その笑いは一瞬の打ち上げ花火では決して終わらない。日常のふとした瞬間に思い出し、クスクスと笑いが止まらなくなる。

実はこの『アイスバーグ! 』、彼らの最新作『ルンバ!』(拙ブログのレビューはこちらから)と2本立て同時公開される。上映時間にしてドップリ3時間。こうなるともう、お手軽な海外旅行だ。そして長時間いっしょに過ごしても一向に飽き足らない。彼らの特殊な世界にもっともっと浸かっていたいと思う。本作との出逢いは、多くの人にとってかくも恋に似た感触をもたらすことだろう。 

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