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2010/09/15

トロント効果と公開時期

アカデミー賞戦を占う上でトロント映画祭は重要なスタート・ポイントとなる。

というのも、ハリウッド内では毎年9月1日を境に各社がオスカー・キャンペーンに移行するのが習わしとなっており、映画祭の会期はこの転換期にピタリと一致する。インディペンデントの製作会社にとってはトロントというアメリカに近すぎず遠すぎない場所で、スタッフ&キャストを伴って大量投入稼働させ、業界全体に対して自作の船出の瞬間を盛大に祝福&アピールできるというわけだ。

もちろん国内からは数多くの全権委任のバイヤーが集結し、自らが「これだ!」と思ったものやスクリーニング中の観客たちを大いに燃え上がらせた、突発性の高い“伝説”の誕生に各々が即座に対応できる状況が形作られている。

Tiff

このようにしてトロントでの高評価を得てオスカー戦線に名乗りを上げた作品には、昨年の『プレシャス』や『マイレージ、マイライフ』、そのまた前の年の『レスラー』や『スラムドッグ・ミリオネア』などが挙げられる。これら水揚げされたばかりの生モノたちは、即座にオスカー候補の条件となる“年内公開”の品質表示札が付けられ、その年内ギリギリに確保された緊急公開日を待つこととなる。これを得られることは映画にとってとても幸福な人生といえよう。

だが、逆に買い付けた配給会社がすでにその年のオスカー狙いの秀作を大量に抱え込んでいる場合はどうだろう?景気や流行などの影響で年内公開にふさわしくない、と判断されたなら?また年内公開可能な劇場が押さえられなかったら?当然それらの場合には配給側でドラスティックな取捨選択がなされ、あるものは年内公開のゴーサインが出され、またあるものは年をまたいだその向こう側までワインの熟成期間のごとく“寝かされる”こととなる。

では、『スラムドッグ』と対極に、熟成を経てオスカーを受賞することなど、過去にあり得たのだろうか?

ふたつ例を挙げよう。ひとつは直近の『ハート・ロッカー』。そしてもうひとつは『クラッシュ』。

どちらもトロントでお披露目されながら、年内公開が叶わなかった作品だ。でもそれがかえって功を奏したのか、あるいは巡り巡った強運のせいか、トロントの18カ月後、両作品とも製作者に作品賞オスカー像をもたらす快挙を遂げた。だが、どちらも米国内での公開は5月6月。オスカー狙いにしては関係者に中途半端な印象を与えるタイミングであり、この判断からは配給側が完全にオスカーを捨てていたことが伺える。

Crash
つまりこれらの作品は公開後、まさに自力でムクムクと立ちあがり、多くの観客の祝福を吸収しながら、もはや誰にも見逃すことのできない伝説の怪物へと成長していったのである。これらが仮に順調な「年内公開」を迎えていたとして、これほどのセンセーションを巻き起こし得ただろうか?答えに詰まる。勝負はすべて時の運というしか術がない。

今年の現象としては、トロントでの初披露組ではないものの、同じタイミングでフォックス・サーチライトがテレンス・マリック最新作"Tree of Life"の取得を発表したものの、同社の公開スケジュールは"Black Swan"や"127 Hours"といったオスカー狙い作品ですでに飽和状態。この状況だと2011年公開組へと回されそうな勢いだ。本気でオスカーを狙うとなると、その公開時期には1年以上の熟成機関を必要とするかもしれない。

Rabbithole
また、今年のトロントでお披露目されたロバート・レッドフォード監督作"The Conspirator"や『ヘドウィグ』で名高いジョン・キャメロン・ミッチェル監督作"Rabbit Hole"などは配給権の売買は無事まとまりそうなものの、年内公開が可能か否かについてはギリギリの決断が待たれることになりそうだ。

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