« 伝説監督の一作、解禁 | トップページ | スコセッシ演出のTVドラマ、好調な滑り出し »

2010/09/22

巨匠の息子、英国史の暗部に迫る

英国には孤児たちにまつわる哀しい歴史があるのをご存じだろうか?

19世紀、政府は移民プロジェクトの一環として、身寄りのない子供たちを秘密裏にオーストラリアをはじめとする英国連邦諸国へと移住させることを決めた。そうすることで植民地における白人層の割合を増やそうと考えていたのだ。

新鮮なオレンジと気持ちのいい陽光を約束され、各地の孤児院から送りだされていった数多くの子供たち。その実、輸送先で待ち構えていたのは、劣悪な住居環境、強制労働、飢え、暴力、虐待にまみれた生活だった。そして驚くべきことにこれらの政策は1970年代まで続いていたという。子供たちは3歳になると「あなたのご両親は亡くなった」と吹きこまれ、拒否権もなく遥かの地へと旅立っていった。多くの子供たちの人生がこうして無惨に失われていった。英国政府、豪政府がこれらを公式に謝罪したのはつい最近のことだ。

Orangesandsunshine_2
この問題に、巨匠ケン・ローチの息子、ジム・ローチ(41歳)が切り込んだ。英国Gurdianによると、初長編監督作"Oranges and Sunshine"は、1980年代を舞台に、
この移民政策を語る上で欠かせないひとりの女性、マーガレット・ハンフリーズをメインに据えた映画だという。ソーシャルワーカーだった彼女がこの政策を歴史の明るみに引きずりだし、政府を力強く批判し、かつて強制的に引き離された数多くの家族の人生に関わってきた。『奇跡の海』のエミリー・ワトソンがマーガレット役を演じている。

もちろんマーガレット・ハンフリーズは今も健在だ。彼女は当初、被害者の心の痛みをいたずらに蒸し返すかもしれない映画企画に難色を示していたという。だが、ジムは父親譲りのひたむきさで8年に渡り彼女と交渉を続け、ようやく承諾を得た。彼女は非公式のアドバイザーとしてジムに協力し、つい先週、初号試写を目にした際、自分の判断は間違っていなかった、と感じたそうだ。

今秋開催のローマ映画祭の上映作品としても選出されている本作は、英国本国で来春公開予定。また、この苦難の歴史を実際に体験した人々を招いての上映会も企画されているという。英国人でなくとも少なからず衝撃を受ける近現代史の1ページ。これをめぐる本国、そして世界の反応に注目したいところだ。

この記事が参考になりましたら、クリックのほどお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

|

« 伝説監督の一作、解禁 | トップページ | スコセッシ演出のTVドラマ、好調な滑り出し »

NEWS」カテゴリの記事

【地域:英国発】」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/137483/49525649

この記事へのトラックバック一覧です: 巨匠の息子、英国史の暗部に迫る:

« 伝説監督の一作、解禁 | トップページ | スコセッシ演出のTVドラマ、好調な滑り出し »