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2010/10/11

【レビュー】冬の小鳥

この映画を観たのは昨年の東京国際映画祭の折だった。プレス試写では上映後もシーンと静まりかえり、僕は劇場の入っている建物を這い出るようにして太陽を煽ぎ、ようやく同伴していた知人と共に「すごかったね」と声を揃えた。たった90分足らずの中に映画の魔法が存分に詰まっていた。まるで金縛りにあったように、あの少女の圧倒的な目力に魅せられていた。入り口を観察していると、その後も同じ上映に立ち会った人たちが続々と金縛りから解かれ、陽光の下で正気を取り戻す様子がうかがえた。

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『冬の小鳥』はひとりの少女の“瞳の移ろい”で綴られる。父親と束の間の親子水入らず。あんなにも瑞々しい笑顔ではしゃいでいた彼女。父は普段よりも優しく、これが永遠に続く幸福かと思われた矢先、少女は人里離れたところに建つ施設で突如別れを告げられる。そこは身寄りのない子供らが暮らす孤児院だった―。

少女はまず自分が捨てられた存在であることを自覚することから始めねばならない。これは「小公女」ではなく、誰も迎えには来てくれない。自分は何も特別な存在ではないのだ。子供ながらにこの過酷な事実を受け入れる過程が、言葉少なに、実に丹念に描かれていく。誰かが本作を絶望の映画と呼んだ。ある意味ではそうなのかもしれない。が、本作はその絶望によって吸い出され空っぽになった器の中を、窓から差し込む光に代表される“寡黙な美しさ”が丁寧に満たしていく。

ふと立ち止まって考えてみた。「あの光はどこから来るのか?」 僕は本作が『シークレット・サンシャイン』のイ・チャンドン監督のプロデュースであることから、それが“神の介在”を意味するものなのかと思っていた。だが、上映が終わって資料を紐解くと、あの少女のモデルがウニ・ルコント監督自身だったことが明かされていた。その瞬間から、とみにあの光源の正体はルコント監督自身の想いだったのではないかと考えるようになった。

孤児院を巣立ち、フランス人の家族に引き取られ、やがて映画監督としてこの映画でデビューするチャンスを掴むことになる彼女。

幼いころ、大好きな両親からも目を背けられたこの主人公のことを、誰よりも慈しみながら見つめていたのは、やがて成長してこの現場に立った彼女自身だった。そんな気がする。だからこそ『冬の小鳥』はこんなに残酷なのに、逆にこんなにまで愛情でいっぱいなのだ。

お互いの顔は見えないが、ふたりはしっかりと目線を交わしていた。だからこそ少女は中盤からはっと前を向き、安心して未来に向けて歩き始めたのではないだろうか。

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