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2010/10/27

【レビュー】心の棘 The Thorn in My Heart

手間さえ惜しまなければミシェル・ゴンドリーの創造性に手が届きそうな気がする。。。最近のゴンドリーは観客のそのような気持をあえて刺激しているかのようだ。この「手が届きそうな」と「実際」のあいだには大きな壁があるわけだが。「まずは一歩踏み出すことが重要」 彼はそう教えてくれてるのかもしれない。

東京国際映画祭はつづく。昨日は『エターナル・サンシャイン』や『僕らのミライへ逆回転』で名高いゴンドリーが自分の叔母さんの半生にカメラを向けた私的ドキュメンタリー『心の棘"The Thorn in my Heart"』を観た。

Lepinedanslecoeur
この叔母さん、何か特別な偉業を成し遂げたわけではない。長らく小学校教師として子供たちを見つめてきて、いま再び、カメラと共に懐かしき校舎を巡りゆく。。。といった体。懐かしき再会、子供たちとの交流、親族で囲む夕食。それらの心の旅路と撮りためられてきたゴンドリー家の記録映像の中で、常に凛とした叔母さんの口から、夫への、息子への秘められた想いが少しずつ語られていく。

まるでゴンドリーが親族のために作ったホームビデオのようだった。そこにはテレビや映画や書籍などにも増して自分に最も身近なストーリーがあり、ミステリーがある。それにシーンとシーンを繋ぐ列車ミニチュア、子供たちに手渡される透明マント、ドリー(横移動)撮影代わりに使われる車椅子。ドキュメンタリーといえどもミシェル・ゴンドリー流の手作り感が溢れる。『僕らのミライ~』に登場したジャズピアニストのそれみたいなファンシーさとはまた別種の趣だが。Thorn

私的ドキュメンタリーをスクリーンで垂れ流すなんて傲慢だ、という人もいるかもしれない。が、ゴンドリーがかねてより挑んでいるDIY精神、あるいは彼の書籍のタイトルを借りるならば"You'll Like This Film Because You're In It"の実践としてはこれまでにも増してその根幹の部分で真に迫っている。

つまり、映画づくりに聖域など存在しない。やろうと思えば誰だってやれる。自分のいちばん身近な、愛すべき大切な人を簡単に主役の座に据えられるし、彼女(あるいは彼)を全く知らない第三者にだって、まるでエッセイでも綴るみたいに、手軽に紹介することができる。映画スターなんて必要ないし、巨額の製作費もいらない。

2009年のカンヌで本作が発表されて久しいが、その後の時代の流れはどんどんそちらへと傾いている気がする。ヒーローやヒロインは要らない。いや、逆にいえば、見つめてくれる視線とカメラさえあれば、誰だってヒーローやヒロインになれる。そんな時代なのかもしれない。

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