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2010/10/28

【レビュー】ザ・タウン

ボストンの犯罪多発地区―。

『ダークナイト』のオープニングをも思わせる周到な銀行強盗から幕を開ける。ドクロのマスクを被った男たちは機敏にその場を征圧し、ひとりも犠牲者を出さぬまま巨大な金庫から大金をせしめ取る。そこでマスク越しに出逢った女性支店長と強盗団リーダーのダグ。彼らが街角で再会するとき、そこには仄かな愛情が芽生えはじめることに。

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と書くと、『ザ・タウン』がまるでロマンティック・コメディか何かだと思われてしまうかも。本作を観る前の筆者の懸念もそこにあった。きっと10年前くらいならベン・アフレック主演でそういうジャンルもあり得たのだろう。

だがこの触感、これまでと全く違うのだ。映画は冒頭から終盤まで常にストイックに駆け抜ける。男女のロマンティックな要素も身を切るように辛く、切ない。そして街に広く展開するアクションシーンはまるで『ヒート』を彷彿とさせるほど熱く渇いている。恐らく低温ヤケドとはこのことを言うのだろう。

同じく故郷ボストンを舞台にした『ゴーン・ベイビー・ゴーン』もそうだが、監督進出後のベン・アフレックにはある種の堅い決意が伺える。それは、知らないことはやらない、理解できないことはやらない、自分に嘘はつかない、ということだ。彼はかつて他の監督や製作者によってめちゃくちゃにされてしまった「俳優ベン・アフレック」の肖像を、ここで立て直し、見事に機能させてみせる。あの目の物悲しさ、想いをストレートには伝えられないもどかしさ、負の連鎖を止められない悔しさ。きっと誰もが彼の等身大の演技&骨太な演出に感銘を受けることだろう。

そして何よりも、この映画の主人公は、やはりひとつの“街”なのである。

このコンセプトが鮮明だからこそ本作はかくも素晴らしく仕上がった。なにしろベンは原作小説「強盗こそ、我らが宿命」(チャック・ホーガン著)の映画化にあたり、まるでドキュメンタリーでも作るみたいに、その土地の人間に話を聞き、犯罪に手を染める側、それを取り締まる側の苦悩と葛藤に耳を傾け、ストーリーは二の次だとでも言わんばかりに、その香り立つほどのリアリティが作品内に自ずとひとつの真実の砦を築いてく過程を見守った。そして『ゴーン・ベイビー・ゴーン』と同じく地元の俳優やエキストラたちを数多く起用し、彼らがほんとうに泣けてくるほど素朴で温かいリアルな呼吸を本作に吹き入れている。

それら故郷の街並みや人々の暮らしがまるで細胞のごとくうごめき、それぞれを支えあうことでひとつのキャラクター=タウンが立ちあがった。ブルックリンを舞台にした『クロッシング』(アントワン・フークア監督)もそうだが、映画は地元と一体化したとき、他では決してありえない異様な身体を獲得し、さらに進化・増殖することを辞めない。

これはまさしくベン・アフレックにしか描けなかった故郷へのラブレターであり、この不況期における力強い街興しでさえあるのだろう。全てにおいて新しい映画作りのかたちがここにはある。それを他でもないベン・アフレックが成立させてしまったことが嬉しくてならない。役者として一度はハリウッドから見放された男が、である。この逆襲はとても華麗で、なおかつ心から信用できる。なにしろ彼はいま、ありのまま、なのだから。

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