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2010/10/28

【レビュー】ビューティフル・ボーイ

衝撃が走った。息子の通う大学で銃乱射事件が発生。死者はすでに20名を越え、史上最悪の大惨事に発展していた。ニュースを耳にした父母は幾度も息子に連絡を取ろうとするが、叶わず。やがて捜査官が玄関のチャイムを鳴らす。「亡くなりました」の言葉に絶望がよぎる。「続きがあります」と彼。この機に及んで何を付け加えるというのか?

「犯行は息子さんの手によるものでした―」

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TIFFコンペティション作品『ビューティフル・ボーイ』を観た。すでにトロントでも国際批評家連盟賞を受賞しているキャリア組。衝撃的事件を扱ってはいるが、犯行シーンなどの血なまぐささは微塵もなく、静謐な雰囲気を持続させながら、マイケル・シーンとマリア・ベロによる夫婦の心象に寄り添っていく。

遺された者たちには生涯克服できない重みが圧し掛かる。息子は何を考えていたのか?あのとき何を言おうとしていたのか?どうしてこんな目に逢わなきゃいけないのか?いったいなんてことしてくれたんだ?そのいずれの想いも、受け取り手はなく、ただ虚しく夫婦のもとに跳ね返ってくるだけ。

こういう映画を観ていると、ときどき、どうしてこんな苦しみを見つめなければいけないんだろう、と考えることがある。言うまでもなく世界にはとてつもない不幸や悲劇が満ち満ちているが、あえて映画でその苦しみを僕らが追体験する意義とはなんなのだろうか。

おそらくこの手の絶望は「もしも私がそうだったら。。。」という疑似体験を目指すものではない。その喪失感の深さによって逆にそれが存在したときの尊さこそを浮き彫りにしていくものなのだろう。

と考えたときに、この夫婦間が醸し出す魂の彷徨に、2時間のドラマを越えていく長い長い旅路を感じたのだった。一朝一夕では成しえない魂の共振。登場人物として、役者として、彼らがいかに各々の精神力をキープしつつこの物語を築き上げてきたか。その創造性の作業に圧倒される。とりわけモーテルでの一発撮りシークエンスには感情の呻きが見事ななまでに刻み込まれていた。そして辿りついたひとつの想いが、あまりに崇高で、美しく、切なかった。

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