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2010/11/29

フィルメックス閉会式にて

東京フィルメックスで審査員特別賞を受賞した『独身男』のハオ・ジェ監督は、壇上に呼び出された瞬間からなんだか周囲に恐縮しまくりで、賞状をもらっては腰の位置までうやうやしくお辞儀し、トロフィーを手渡されてはまた腰の位置まで身体を沈ませた。その様子に観客は微笑ましさと可笑しさと「ちょっと不思議ちゃんなのかな?」という想像を頭の中で膨らませる。

受賞コメントを求められ、彼はマイクの前でまず「はあ~」と深いため息をついた。まるですべての魂がその場で抜け落ちてしまうかも、ってくらいに想いの丈が詰まった「はあ~」だった。映画祭ディレクター、審査員、観客、そして出演した村人への感謝の言葉が続いて、これで終わりなのかな、と誰もが思った。でも終わらなかった。

「とても個人的なことですが、私の父に感謝の言葉を捧げさせてください。実はこの映画の脚本は、最初、私と母と父とで構想しました。そして父は、この映画の製作中、2008年に亡くなりました。けれど私は、製作中も、いまこの瞬間も、父が全く別の世界から私を見守ってくれているのを感じています―」

彼の語り口が、これまたとても優しく、詩を味わうみたいにじっくりと胸に沁み込んでくる。

そして彼は、これまでの腰の低い、うやうやしい感じから目線をグッと持ち上げ、会場全体を仰ぎ見ながら、またあの優しい口調をこう響かせた。

「お父さん、あなたの息子は大丈夫です。これからも一緒にがんばっていきましょう」

これには通訳さんが喋れなくなってしまった。彼女は「ごめんなさい」という仕草を挟んでから、掠れ声で言葉を訳した。その様子を媒介にして、僕らもなんだか堰を切ったように胸が一杯になった。

ハオ・ジェ監督は29歳。これからどんな作品を手掛けていくのだろうか。

―お父さんと共に。

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