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2010/12/18

モンガに散る

台湾映画によく見られる瑞々しい青春グラフィティを踏襲し、香港映画のノワールな質感を取り入れながら、どこか韓国映画を思わせる突き抜けた凶暴性をも宿した作品、それが『モンガに散る』だ。

舞台となるのは80年代の商業都市にして台北一の歓楽街モンガ。賑やかなれど、その裏側ではヤクザの縄張り争いが絶えず、大陸勢力の台頭もまた新たな火種を生んでいる。物語は同級生にいじめられる転校生“モスキート”が思わぬ不屈の精神を見せつける場面で早々に転機を迎える。

その光景を遠くから眺めていた同じ学校に通う4人組は「気にいった!」と意見を一致させ、彼を5人目の仲間へとスカウトする。ヤクザ親分のドラ息子を中心に集結した彼らは、高校生ながら誰もが恐れる軍団だった。仲間入りを決めたその瞬間から、モスキートは他の4人と厚い絆で結ばれた。仲間のためならたとえ火の中、海の中。この命だって差し出せる。やがてモスキートは高校を中退し、本格的に裏社会の道を歩み始めるのだが―。

Monga
宣伝文句にはジョン・ウーをはじめとするアジアの大物監督らによる賛辞が並ぶ。なおかつ5人組のひとりを演じるイーサン・ルアンが今年の金馬奨(台湾のアカデミー賞)にて主演男優賞を受賞。本作にはアジア各国の文化的な刺激にさらされた台湾の立ち位置が非常に顕著に表れており、その目まぐるしいまでの融合が“モンガ”というひとつの街=主人公を媒介に凄まじいエネルギーとして発露され、その本気度は、冒頭、街を上げての大暴動を何の特殊効果も無しにガチで撮影している無謀さからも充分伝わってくる。

資料を紐解くと今回のアクション監督に『オールド・ボーイ』のヤン・キルヨンが招聘された旨が記されてあった。なるほど、この肉弾戦とも言うべき、肉を切らせ骨を断つ闘い方が物語にもたらした影響は大きい。「突き抜けた凶暴性」はここから来ていたのか。このような思いがけない才能の起用からも、『モンガ』がいかに台湾映画の既定路線から外れた突然変異のシロモノであるか伝わってくる。

監督はもともと俳優出身のニウ・チェンザ―。ホウ・シャオシェン監督作をはじめ台湾ニューウェーヴと呼ばれる時代の代表作に何本も顔を出し、シャオシェンを師と仰ぎながらも、本作のインタビューにて「ホウ・シャオシェンのような映画だけは撮りたくなかった」と語っているのが興味深い。

なるほど、台湾ニューウェーヴ時代の作品群はその芸術性の高さから世界の名だたる映画祭で脚光を浴びながらも、台湾内では人気に欠け、エドワード・ヤン監督作『ヤンヤン 夏の思い出』に至っては劇場公開すらされていないという。

そんな映画界のジレンマを目の当たりにしてきた彼だからこそ、これまでと全く違う、エンタテインメント性と芸術性とがデッドヒートを繰り広げる壮絶な火花、いや花火のような2時間半を刻みたいと強く思ったのだろう。これ一本で、世界中の注目を台湾映画界へと集めることができる。そんな求心力に満ちた作品だった。

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