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2011/01/29

トルコ人の頭(MyFFF)

フランス発オンライン映画祭「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル」のコンペティション作品「Tete de Turc(トルコ人の頭)」を観た。

Tetodeturc_2

ここはどこのスラム街なのか。冒頭から緊迫した状況が続く。突入する警官。反発する住民たち。衝突の中をカメラがうごめき、また同時に、この危険地帯で医療行為を施すひとりの希少な医師の姿を映し出す。

と、そこで事件が勃発した。若者グループは医師の乗りこんだ車に「よそ者は出ていけ!」と投石をはじめ、そのとどめとしてごく純朴なトルコ人の移民少年が勢いに任せて火炎瓶を投げこんだ。立ち昇る噴煙。だが医師は逃げ出さない。彼は車中で気を失っている。それに気づいた少年は衝動的に火を振り払って渦中へ飛びこみ、こん睡状態の医師を車外へ救いだし、その場を後にする。

数日後、意識を回復させた医師は命の恩人を探してほしいと言う。事件多発地帯にかくも勇敢な若者が存在したとは。自治体も「これは表彰モノだ」と治安アップのキャンペーンに利用したい様子。彼らはその恩人が、一度は火炎瓶を投げ医師を死の淵にまで追いやった人物だとは想像だにしていない。やがて警察はその犯人を追いはじめ、トルコ人の少年は名乗りたくても名乗れない窮地に追い込まれていく。

スタート地点からこの街で巻き起こっている異常事態を手際よく描いていく手法が見事に決まっている。感情をむき出しにする人々からメインとなる人物たちをすっと浮かび上がらせ、それぞれの所属する社会的組織、それをもっと細分化した家族という単位、そして個人というレベルに向けて一枚一枚表層を剥ぎ取っていくドライな描写が観る者を惹きつけてやまない。とりわけその中心に立つトルコ人少年の透明感は、相反する人々の反射鏡のようでもあり、彼、すばわち“トルコ人の頭”をめぐる3すくみの状況が色濃く浮き彫りにされていく。

勢いはなかなか衰えない。終盤にかけても非常に良い緊張感が持続する。そしてクライマックス、さあ後は画竜点睛を待つのみ!という段になって、やや力が及ばなかった。観客はあと一歩ダイナミックな物語のうねりを期待したはず。登場人物たちに自らの運命を力強く切り開いて進みゆくような、何かが欲しかった。惜しい。ほんとうに、あと一歩なのに。とどのつまり、この監督(彼は医師役も演じる)の次回作は注目だと言うことだ。

●本作はmy French Film Festival開催期間中、こちらのページより有料視聴できます。

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