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2011/01/19

バス・パラディウム(MyFFF)

1月14~29日開催のオンライン映画祭「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル」のコンペティション部門にて「バス・パラディウム」という作品を観た。本作は2010年のフランス映画祭にて日本でも公式上映されている。Palladium

80年代のパリを舞台に繰り広げられるバンド・ワゴン映画。幼なじみ5人で結成されたロック・バンド“Lust”は家族や仲間の助けを借りながら地道に人気を拡げていき、いつしか待望のレコード・デビューを果たすことに。真っ赤なワゴンにバンド名を刻みツアーに繰り出す彼らだったが、ひとりの女性をめぐって友情に亀裂が生じ、いつしか修復不可能なまでに溝を深めていく。若さゆえの感情のぶつかり合いを経て、はたして彼らが最後に辿りつく場所とは―?

自身も映画俳優として長いキャリアを持つクリストファー・トンプソン監督による監督デビュー作。今となってはノスタルジーさえ漂うストレートなロック・ミュージックに彩られ、若さに溢れた5人のそれぞれの個性が印象深く描かれていく。中でも興味深いのは、このバンド活動を自分の命とばかりに打ち込む者もいれば、これを束の間の冒険として他に人生の保険を掛けている者もいる。それぞれにとってバンドの重みや定義は全く異なる。

そんな具合だから、渦中にひとりの女性が飛び込んでくれば、これはもう破滅も同然。それは彼らに留まらず歴史上のあらゆる人気バンドが証明している顛末だ。ゆえにこの手のジャンルは「墜ちていく」ことを魅せる手腕が必要となる。その点、葬儀に始まり、葬儀に終わる本作はそこに青春を脱ぎ捨てる通過儀礼のような爽やかを付与し、ある一定のレベルをクリアしていると言えるのだろう。

ごくサラりとバンドメンバーの家庭環境をそれぞれに散りばめ、とくに練習スタジオ代わりの工場を営むユダヤ人おばあちゃんの描き方が微笑ましい。若さに沸騰する本作の良い中和剤といったところか。

ところで本作には驚くほど“父親の存在”が見えない。メインとなるメンバーふたりもどうやらシングルマザーに育てられている様子。この“不在”が意味するものは何なのだろうか。と同時に、フランスでは90年代半ばに廃止されたという徴兵制に戸惑う青年たちの姿が描かれているのも非常に興味深い。

●本作はmy French Film Festival開催期間中、こちらのページより有料視聴できます。

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