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2011/01/17

グリーン・ホーネット

夜のしじまを突き破り、愛車“ブラック・ビューティー”のエンジン音と共に現れたヒーロー“グリーン・ホーネット”。彼の敵は新聞王だった亡き父の威光?オスカー俳優クリストフ・ヴァルツ演じる闇の帝王?いやいや、注目のメイン・ファイトはまた別のレベルで巻き起こっている。とどのつまりこれは、「作家性」と「大衆エンタテインメント性」とが凌ぎを削った結果、如何なる課題を今後に残したのかと、そういう検証映画といえるのではないだろうか。

Greenhornet
ミュージックビデオやCMから映画まで、デジタルとアナログの絶妙な隙間を縫って愛らしい創造性&作家性を発露させてきたミシェル・ゴンドリー。インディペンデントの映画製作で一定の成果を収めた彼が自らを次のレベルへと引き上げたいと考えたのは表現者の願望として当然のことだろう。そして自らの手の内を超えてアイディアを膨らますにはこれまでより遥かに大きなバジェットが必要となる。

その作品は限定された観客数ではなく、桁違いの世界の観客へ届けられるだろう。観客の目も厳しくなる。失敗した場合のリスクも半端ではない。それに第一、ビッグバジェットにはそれなりに回収見込みのある企画が必要だ。

これまでのゴンドリーの創造性にプラスして、何か企画の芯となる訴求力のあるもの。その二者を結びつけたものこそ「緑蜂」という1930年代より語り継がれてきた題材ということになるのだろう。そして追い打ちをかけるように、本作の3D製作までもが発表された。

このヒーローときたら、序盤から3D効果もあってか、実際よりもかなり太めに映る。スラッとした体型でなくデブッとだらしなく、悪に対する考え方も曖昧極まりない。なにしろ「悪に近づくためには、自分たちが悪を装えばいい」という横暴な論理を振りかざすのだ。

隣でフォローする“カトー”は、セス・グリーンとの丁丁発止のやり取りにも押しの弱さが目立つ。というよりもこれは僕がまだスクリーンでジェイ・チョウという俳優を見慣れておらず、彼の演技にどう反応していいのか決めかねているせいもあるだろう。(ちなみに台湾をはじめ中華圏では大人気で、中国でのキャンペーンでも主役や監督そっちのけでマイクをかっさらっていた。中国市場を目した時に彼の存在は計り知れない威力を発揮するのかもしれない。そして中国では旧正月に公開―)

そこに散りばめられた注目のゴンドリー・テイスト。僕らはまず、セス・ローゲンがピンチに陥った際にカトーの脳内で起動する“カトー・ビジョン”にてその真髄を垣間見る。戦闘モードに入った彼は通常の時間の速さを超える勢いでセンサーをめぐらし、どこをターゲットにして、どの順番で敵を撃破していくかをシミュレーションする。そして次の瞬間にはそれと寸分たがわぬ結果が3D映像で炸裂するというわけだ。(ん?これってどこか『シャーロック・ホームズ』の格闘シーンに似てないか?)

周囲がゆっくりとうごめく中、カトーだけが疾走し、くぐりぬけ、交わし、蹴り、ぶっ飛ばす、という一連の3D趣向。こいつがかなり斬新な仕上がりを見せている。さすがゴンドリー!!惜しむらくはこれがあっという間に終わってしまうのだ。もっと観ていたいのに。

もうひとつゴンドリーらしさを放つのは、「グリーン・ホーネットを殺せ!」という指令が人から人へネズミ算方式で拡がっていくのをスプリット・スクリーンで描く場面だ。どんどん画面が増殖してそれぞれに話が進行していく。これはいったいどのように撮られたのだろう?これこそゴンドリーがミュージック・クリップなどで描きそうなアイディアの炸裂。ファンは思わずほくそ笑んでしまうのではないか。

また、本作の脚本は主演のセス・ローゲンとエヴァン・ゴールドバーグのコンビが執筆を担当しているが、数々のコメディ作にてヒットを連発してきた彼だけに笑いの要素は強い。が、これを3D作として見せる以上、彼が前に出るよりは、あくまで“グリーン・ホーネット”が(もっと言えばアクションシーンが)前に出るべきだし、彼とカトーのセリフの応酬を我々があえて3Dで見なきゃいけない義務は存在しない。

パーツパーツには魅力が光るものの、いざそれを収拾、接合する段となってひとつの完成体になりきれていない、というのがゴンドリー映画のファンとしての正直な意見だ。本作はこれからも紡がれていくゴンドリー伝説におけるちょっとした変わり種として歴史に名を刻んでいく使命を宿しているのだろうか。

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