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2011/02/25

RED

時代はめぐる。かつて肉体派の俳優たちが想像を絶するアクションを自力で体現していた時代があり、やがてCGIが彼らの奮闘にとって代わり自由自在に劇画的な描写を施せる時代が訪れた。そして観客がそれらのギミックに飽き始めると、今度はこの手のジャンルとは階級そのものが違うと思われていた当代きってのいぶし銀名優たちが、背後に漂うオーラと、歌舞伎の見栄のごとき所作だけでアクションに挑む新時代がやってきたのである。

その代表格と言えるのがこの『RED』ということになるのだろう。

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物語は仕事をリタイアしたばかりの中年男の日常からスタート。家族はおらず、自宅にひとりぼっち。ヒマを持て余し、年金受給のホットラインに電話しては、いつものオペレーターの女性に愚痴を聴いてもらう。そんな日々が続く、はずだった。黒づくめの特殊部隊が彼の自宅を襲撃し木端微塵に破壊するまでは…。しかし冒頭10分で彼の素顔が判明する。あまりにあっけなく敵を粉砕し、全員を返り撃ちにした挙句、相手が次にどんな手に出るのかも素早く読みこみ、迅速に行動へ移す。そう、現役時代の彼は世界が恐れるCIAの凄腕エージェントだったのだ。しかしそんな彼でもなぜ自分の生命が狙われたのか見当がつかない。彼は唯一の頼れる存在を求めて、今では全米に散らばって生活するかつての仲間たちをロードムービーよろしく、ひとり、またひとりと訪れ、共に真相を解き明かそうとするのだが・・・。

まず、見ていて、実に爽快。なにがって、原作がDCコミックなだけあり、劇画をもとにしたアクションのカット割りが小気味良いのは当然として、チームを組むことになる名優陣の“所作”がとにかく魅せるのである。もちろんモーガン・フリーマン、ジョン・マルコヴィッチ、ヘレン・ミレンといったオスカー常連俳優たちが取っ組み合いの格闘など出来るわけがない。彼らは実質的にはセリフの応酬、軽妙なやり取り、表情の変化という、いつもながらのメソッドを踏襲しているに過ぎず、そこにせいぜい、銃を構え、撃つ、という行為が加わったくらいなのだが、しかしそこではキャラと所作とが連動した強烈な個性が刻印される。彼らは特殊スーツや仮面などを用いなくとも、もはやそのままの姿でヒーロー映画のキャラクター然とした存在感を香らせ、他者を圧倒しうるのだ。

とりわけ“撃つ”で象徴的なのは、終盤のヘレン・ミレンだろう。『クィーン』ではタイトル・ロールのエリザベス女王を演じて主演女優オスカーを手にした彼女が、真っ白いドレスにブーツを履き込み、沈着冷静に機銃を構えて一心不乱に敵を粉砕してかかる。その光景はまるで女王が御自ら戦場へご出陣あそばしたかのような衝撃を伴うものだ。

翻っていうなれば、ここに集いし超ベテラン俳優陣は、誰もが所属事務所などからの依頼を受けてこれまでおびただしい数のミッションを遂行してきた者たちなのである。その存在感は変幻自在、なおかつ瞬時に大人数の心を掴み取ったり粉砕する特殊能力は、まるで本作で描かれるスペシャリストとかなり近似した職務と言っていい。

ひとり、またひとりと現場から去っていく。生命を散らしフェイドアウトする者もいる。そして次なるミッションでも再び火花の下を掻い潜る者もいる。彼らは再び同じ現場で出逢うこともあるかもしれないし、もう二度と再会しない可能性だってある。過去に敵だった者が今は仲間ってことも大いにあり得る。

劇中では言及されないものの、この辺にオーバーラップを禁じえない自分がいた。俳優とはかくも特殊な職務領域である。『RED』はその延長線上にぶちまけられたアクションだからこそ、演じる俳優たちのキャリアも含めて、極めて楽しく嬉々として映えるのだろう。

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