« 3D版「白雪姫」の主演決定 | トップページ | 『グリーン・ランタン』4分間フッテージ登場 »

2011/04/02

【レビュー】婚前特急

邦画を潤沢な資金と有名俳優を投入して全国シネコン展開、なおかつ全国ネットでTV告知を大量投下できるメジャー作品と、そうでない作品とに分けるとすると、本作は明らかに後者に属する。それにマーケティングをガッチリと固めてくる前者にくらべると、『婚前特急』の外見上の佇まいは少々飛っつきにくいものがあり、僕個人の主観を例に取ると、あたかもアジアの他国から届いた(“本国では大ヒット”と銘打たれた)ラブ・コメディのような温度差を感じていた。

そんな感じで、うがった角度で観はじめたものだから、「吉高由里子が、5人の男を手玉にとり、その中から本命の恋人を見つける・・・」といった情景にも、僕はやや失礼なリアクションを露わにしていたかもしれない。

いま考えると大変失礼なことをした。

というのも、映画が進むにつれて、だんだんと姿勢を正し始める自分に気付いたからだ。

これまで自分がこの映画について摂取していた表層はフェイクだった。ストーリーの力を超えて本作をリードする吉高由里子は、どんな高飛車なセリフもちょっと掠れ気味の、低音の効いたトーンで、自らの内部にナチュラルに血肉化させて吐き出していく。その一挙手一投足に引きずられる5人の男たちも素敵だ。攻める吉高。受ける男たち。攻める吉・・・。だが、この途上で思わぬ具合にその形勢が逆転する。5枚のカードの中から最もあり得ない男が吉高を追い込み、彼女に隠された怪物性を露わにさせていくのだ。

プロットだけを見れば「うぬぼれたヒロインが苦杯をなめる」という、ごくありふれたものに受け取られそうだが、実際には演出側の挑戦がふんだんに詰め込まれており、製作陣がこの若手監督と俳優らの才能に賭けようとした意気込みが伝わってくる。編集やCGなどでは決して誤魔化しようのない長回しを入念に仕掛け、そこで徐々に醸成されていく特殊な空気をナショナル・ジオグラフィックのカメラよろしく執念深く映し撮って提示してくる。まだいくか?まだカットの声をかけないのか?これは放置なのか?それとも計算なのか?

とりわけクライマックス、文字通りに壁をブチ破り、映画が閉塞感を突き抜ける瞬間、何とも言えない気持ちよさに包まれた。これは同時に「最近面白い邦画に出逢えないな…」と嘆いてきた自分の本音を突き破る開放感でもあった。

今後の作品で前田弘二監督がどんな演出を仕掛けてくるのか。長編第一作目でこれほど驚かさせてくれたのだから、次回作ではもっと凄いことになりそうだ。そしてあの吉高由里子の暴走に堂々と渡りあった浜野謙太(SAKEROCK)の神がかり的な存在感については、いまだにスクリーンで目にしたものがすべて夢ではなかったかと、俄かに信じられなくなるときがあるのだ。

この記事が参考になりましたら、クリックのほどお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

|

« 3D版「白雪姫」の主演決定 | トップページ | 『グリーン・ランタン』4分間フッテージ登場 »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/137483/51270178

この記事へのトラックバック一覧です: 【レビュー】婚前特急:

« 3D版「白雪姫」の主演決定 | トップページ | 『グリーン・ランタン』4分間フッテージ登場 »