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2011/07/28

【レビュー】赤い靴

なぜこの映画を知らずに生きてきたんだろう。自分を激しく恥じるとともに、逆にだからこそ現代の文脈においてこの映画と顔を合わせられる幸運に、湧きあがる興奮を抑えられなかった。マイケル・パウウェルとエメリック・ブレスバーガーが1948年に共同で監督を務めたこの奇跡のような136分。しかも今回の上映は、この映画の大ファンでもあるマーティン・スコセッシ監督の監修により、ファースト・カットから身を仰け反るほどの美しい画面に生まれ変わっている。そこに生える鮮烈な赤。そして芸術家どうしの激しい想い。まるで3D映画を思わせるほど立体的で幻想的なカメラの動き。

Theredshoes_2 

バレエ映画?クラシック?アンデルセン童話?

それらの先入観はもうこの場で捨ててほしい。ここにあるのは新進気鋭の若き作曲家と、プリマを夢見るバレリーナ、そして変わり者として知られるバレエ団の座長とが、三者それぞれの見つめる方向性に向かって束の間の併走を繰り広げ、驚くべき幻想性と狂気とが入り混じった「赤い靴」公演を築き上げていく物語だ。

見せ場となるのは約16分間に及ぶこの公演シーン。舞台の全景を捉えていたカメラは、徐々に興奮を抑えきれずにその内部へと入り込んでいき、いつしか狭い舞台空間に宇宙を見出したかのように、果ての見えない創造世界をあの手この手の表現手段を駆使しながら獲得していく。

この映画の誕生から今日まで、このシーンに触発されて後の映画作りに生かしてきた人がどれくらいいることだろう。マーティン・スコセッシもそうだし、そして『ブラック・スワン』を大ヒットさせたダーレン・アロノフスキーが本作をかなり意識しているであろうことはすでに多くの人によって語られていること。だから、ということではない。たとえそれをきっかけに観たとしても、この“オリジナル”はあまりにパワフル。それらの血を分けた映画の遺伝子たちを軽く凌駕する破格のバイタリティに満ちている。

彼女は今なお、憑りつかれたようにあの赤い靴のステップをやめていないのではないか。そして劇場でこの映画を体感する者も、その瞬間から心のうちで赤い靴のステップが止まらなくなる。

その意味で、『赤い靴』は時間の止まった過去の写真ではなく、今なお躍動を続け進化を続ける、あくまで個人的な賞賛の言葉として言わせてもらえば、つまり踊る赤いバケモノのような存在なのだ。

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確かにDVDも発売されているんだけれど(スコセッシ監修版ではない)、このレビューはあくまでスクリーン観賞に関するものです。

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