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2011/08/10

米俳優が英国民になる条件

米映画業界誌ハリウッド・リポーターが、イギリスへの居住に関する新たな枠組みについて紹介している。

イギリス政府は移民の流入を厳しく取り締まる一方、ハリウッドで活躍する映画人がイギリスの市民権を獲得するのを容易にする新たな条項を制定した。これによると、新たにアカデミー賞、ゴールデン・グローヴ賞、英国アカデミー賞、エミー賞などで受賞、あるいはノミネートされて5年以内の映画人は煩雑な手続きや審査を経ることなく、別口でイギリス居住を歓迎されるご身分となるようだ。もちろん就労ビザを手に入れる必要もなく、イギリス内での経済活動も自由に行える。雇い主がなくとも永住することさえ可能だ。

言うまでもなくイギリスでは数多くのハリウッド映画の撮影が行われている。これに伴い、毎年ハリウッドからも大勢の俳優が訪れる。その中の一握りくらいは、この国を愛し、ここに住みたいな、と感じてくれる人がいるかもしれない。あるいは映画界の頂点に輝いたハリウッドスターらが、更なる高みを求めて本場シェイクスピアに挑戦するのもキャリアの上では有効な道筋かもしれない。

たとえばケヴィン・スペイシーなどはアメリカ出身ながら、いまやロンドンにある劇場の芸術監督を務めてさえいる。彼は以前、現在の仕事を永く続けるために「条件さえ整えば市民権を獲得するかも」と発言したことさえある。彼ほど英国文化にコミットメントする存在になると、ほんとうに市民権を獲得してしまったほうが暮らしの上での支障が少なくなるのかもしれない(彼は2009年と2011年にゴールデングローブ候補となっているので、今回の新条件には合致する)。

しかし依然として問題は多い。ひとつは税金の問題。かつてローリング・ストーンズは70年代初頭、自分たちの稼ぎの多くがこの国の税金として徴収されていくのに耐えかね、隣国フランスへ移住したことがあった(その様子はドキュメンタリー映画『ストーンズ・イン・エグザイル~メイン・ストリートのならず者~』に詳しい)。ハリウッド・リポーターの同記事には「投資会社スカンディアによると、イギリス在住の億万長者の半数以上がその高額税率のために国外への移住を真剣に考えている」という記述まであるくらいだ。

もはやイギリスといえども、歴史と誇りある自国の文化にあぐらをかいている時ではないのかもしれない。奇しくもこの新たな枠組みが制定された8月9日、かのロンドン暴動は各地へ飛び火し、ソニーの巨大倉庫が燃え上がった。事態は根深く、混迷の一途をたどっている。

これは単にタイミングが悪かっただけなのか。それとも何か象徴的な意味合いを含んでいるのか。

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