« 北米興行成績Aug.19-21 | トップページ | 【レビュー】 インシディアス »

2011/08/23

【レビュー】 キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー

コミックスでは1941年に初登場を果たした、マーベルの中でも最古参ヒーローのひとり。この全身を星条旗であしらったかのようなコスチューム・デザインを一目見るや、なぜ彼がマーベル映画の世界戦略において最後の最後まで“出し渋り”されていたのか理解できるというものだ。

Ca
アメリカがまだある程度、世界のリーダーとしての余力を保っていた時代に彼がお目見えしたなら、それは世界中の反感を買ったことだろう。今だから許される。すっかり弱体化してしまったこの国に星条旗男の映画が産み落とされたとして、それはアメリカ万歳という発想には直結しない。むしろ生じるのは古き良き“ノスタルジー”。それを、あのロケットボーイズたちの挑戦劇『遠い空の向こうに』の名匠ジョー・ジョンストンが描くのだとするなら、そこで立ち現われてくるほろ苦い空気を観賞前の我々がイメージするのはそう難しいことではない。

主人公は小柄な体格で幾つもの持病もちの青年スティーヴ・ロジャース。1940年代、アンクル・サムが"I Want You!"と指をさして若者たちの戦意を高揚させていたころ、彼は幾度となく兵役検査に引っ掛かり入隊を断られていた。しかし彼ときたら、おそらくマーベル・コミックのヒーローたちの中でも1、2位を争うくらいに真っ直ぐな人間。映画の中でいくつも重ねられていく善人エピソードの数々。そうしていつの日か、彼にチャンスが訪れる。軍が進めるスーパーソルジャー計画の被験者となってもらいたいとスカウトされるのだ。二つ返事で承諾した吹けば飛ぶようなヒョロヒョロな彼は、装置に入って出てくるや筋骨隆々のたくましい男へと様変わりしていた。

Captainamericamoviephoto05550x366
時は満ちた。このとびきりのパワーを使って彼はナチス・ドイツ極秘計画の粉砕にいざ向かう!!

などと、すんなりとはいかないのだ。

ページをめくると彼はステージ上のヒーローとして全国行脚しながら観客に戦時国債の重要性をミュージカル調でアピールしている。今や彼はアンクル・サムと同じ位置に収まった。もちろんスーパーパワーは持ち腐れ。それは彼を深い葛藤へと追い込んでいく。そして仲間の部隊が敵陣に囚われたとの情報を耳にしたとき、彼の中で決意が奮い立つ。ステージ上のキャプテン・アメリカは遂に現実のスーパーヒーローとなって、いま、最も危険なエリアへたった一人での突入劇を敢行しようとしていた―。

Captain_americamainchris_evanstommy
長い!ここまでが長い!ヒーロー映画というよりは、ひとりの男の苦悩を綴ったドラマがひたすら続く。しかしそれが駄作であるというでは毛頭ない。だからこそ面白い!ドラマ最高!ビバ!ノスタルジー!まるで『遠い空の向こうに』の青年たちが、たったひとつのロケットを空に高く打ち出すべく胸熱くなる人間ドラマを醸成していったように、ここでもスティーヴ・ロジャースがヒーローとして起つまでをひたすら根気強く、丁寧に映像化していく。

とりわけジョンストン作品で幾度も描かれる“父子の関係”がここでもポイントとなる。そもそもロジャースには父親がいない。でもだからこそ、彼の長所を最初に見抜いたナチスからの亡命博士(スタンリー・トゥッチ)との間に堅い絆が香る瞬間がある。そして博士亡き後の軍隊生活ではトミー・リー・ジョーンズ演じる気難しい大佐にも武骨な背中が見え隠れする。彼らの一方通行のやり取りがまるで分かりあえない父子のようでなんとユニークなことか。彼らトゥッチとジョーンズのキャラがふたつ合体すると、理想的なロジャースの父親像ができあがってくるかのようだ。

Captain
また、もうひとつの鍵となるのが次回作(2012年夏公開)となるマーベル・ヒーロー大集合ムービー『アベンジャーズ』への数々の布石である。『アイアンマン』、『マイティ・ソー』を次回作へと招聘すべく、人物、アイテムなど、これらとの結節部となるものがたびたび登場。どんどん世界が密接に絡まり合っていく様を、過去の視点から追体験することができる。

そして訪れるラスト、『アベンジャーズ』と時代背景を合わせるべく、キャプテンは現代へと降臨を果たす。その過程はしかと本編で確認していただくとして、そのクライマックスが切ない。こんなんでヒーロー映画と呼べるのかってくらい切なすぎる。試写が終わって感想を口にする人たちから幾度も「せつねー!」という声がもれきこえてきた。とくにロジャースの最後のセリフにほろっと泣かされる。

この余韻に浸りながら、今日、もう何度目だろう、またもや『遠い空の向こうに』のキュンキュンくる感触のことを思い出していた。そして帰り路のあいだ中、今日は早く戻って、あの名作のDVDを蔵出し再見しようと心に決めていた。僕の中で『キャプテン・アメリカ』はマーベル映画でありながら、かくもやはりジョー・ジョンストン印の、何かが噴射して空高く上昇していく映画なのだった。

この記事が参考になりましたら、クリックのほどお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

|

« 北米興行成績Aug.19-21 | トップページ | 【レビュー】 インシディアス »

【Hero】」カテゴリの記事