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2011/09/11

【レビュー】グリーン・ランタン

Lantern 芸歴でいえば、多くのヒーローが彼のことを「ランタン先輩!」と呼ぶべきなのだろう。1940年にコミック初登場といわれるグリーン・ランタンは、38年組のスーパーマン、翌39年組のバットマンに続くDCヒーローの古株。ザ・フラッシュとは同期で、ワンダー・ウーマンは41年の後輩。所属事務所の違うマーベルでは41年にキャプテン・アメリカが登場し、映画でおなじみのX-Men、スパイダーマン、アイアンマン、マイティ・ソー、ハルクなどに至ってはみな60年代生まれで、ランタンとは親と子ほど年期が違う。「先輩」ではなく、むしろ「師匠!」と頭を垂れることも必要かもしれない。

マーベル陣営が所属事務所のタレントを大量に扱ったアイドル(?)・ユニット「アベンジャーズ」(2012年7月公開)を起動させる中、DC陣営も負けてはいられないとワーナー・ブラザーズのもとで「ジャスティス・リーグ」の映画化を構想中と聴く。そのためには現時点でノリにノッているバットマンに加え、スーパーマンを再び軌道に乗せ、さらにはランタン、ザ・フラッシュ、ワンダー・ウーマンを新たなソロ活動へと向かわせねばならない。

・・・これらの流れを観ていると、ほんとうに裏で秋元康が手を引いているのではと勘繰りたくもなる。

とにもかくにも、ランタン先輩を映画(ソロ)デビューさせることは所属事務所にとって悲願ともいうべき所業だった。が、どう贔屓目に見ても彼のヒーローとしての個性は現代の潮流から大きくハミ出ている。本来なら彼は他の作品と同様、映画化されるにあたって、“リアル”を合言葉にするような大胆な現代風アレンジを施されてしかるべきだった。今やこの手のジャンルはもはや偶像崇拝のレベルを越えて進化しており、ヒーローという“超日常”と我々の地に足ついた“日常”との連結部分(世界観)の創造こそが重要視されているからだ。

ランタン先輩の世界観はあまりに広大だ。宇宙にだって果敢に飛び出し、しかも先輩のごとく緑のコスチュームを身にまとった輩は宇宙全体におびただしい数存在する。また時おり、非常招集がかかっては中心となる惑星まで馳せ参じ、「ランタン!ランタン!」と団結心を表明しては新興宗教のごとく謎の光線を皆で照射させたりもする。警備隊のような役目を持つ彼らは日夜その特殊能力を駆使して悪を懲らしめ、宇宙の治安を守っているのだそうだ。そのキャラが人間のそれとは違った“動物タイプ”のもの(ある意味、ギニュー特戦隊)が多いのも我々がキャラに馴染めない理由なのかもしれない。またランタンに変身するハル・ジョーダンに関しては、他のDCやマーベル・ヒーローたちのように自らの存在論的命題に打ちひしがれるような心理的側面は一切見当たらない。

Greenlanterncorps
敵キャラに至ってはもっとすさんでいる。それはグリーン・ゴブリンやゾッド将軍、ジョーカー、ミスティークのようなキャラ立ちがハッキリとしたものではない。ひょんなことから頭部を肥大化させた研究員が暴走して人を襲ったり、あるいは宇宙からは姿カタチの定まらない、もはやひとつの“概念”とも呼ぶべき敵が舞い降りてくる。こんなものとどう戦えというのか。映画としてのケリの付け方がさっぱり予測できず、自分がただただ不安に苛まれていくのが感じられた。しかもランタン先輩の戦い方に至ってはこれらの敵と対峙するのにパンチやキックのみならず、最大級の「イマジネーション」を駆使するときたもんだ。うーん、いま書いてる俺の文章すら漠然としてきた…。ランタンめ!

かくも『グリーン・ランタン』は、現代のヒーロー復興の潮流からするとどこか漠然としすぎている。だが、一本の映画を、ひとりの人格を、取るに足らないと掃いて捨ててしまうのはいとも簡単なことなのだから、あえてその裏側にあるものを考えてみたい。なぜ1940年という時代にこんな突拍子もないヒーローが生まれたのか。しかも目の前に突きつけられた第二次大戦のきな臭さよりもそのもっともっと空高くにそびえる“漠然”に想いを馳せるようなこの世界観。しかもスーパーマン、バットマンに比べると、どこか主人公の暗さが払しょくされている。さらには国際連盟が機能不全に陥っていた時代、ここでは選挙を経た国家の代表者ではなく、「真の勇気を秘めた者」を惑星の代表として召還し、平和維持の連合体が形成されている―。

2011年に生まれた新芸人としてはからきし落第点だが、彼が芸歴71年目の師匠格であることにあらためて想いを馳せるとき、師匠の生きた激動の時代において人々がエンターテインメントに何を求めたのかという疑問への一筋の光、重要なサンプルを提供してくれることは、少なくとも意義あることのように思える。

【興収データ】2011年6月17日に米公開/初登場NO.1/製作費2億ドル/米国内興収1億1630万ドル/世界興収2億1450万ドル

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