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2011/09/25

【レビュー】ワイルド・スピード MEGA MAX

先日久しぶりに逢った米国在住の友人が「"Fast Five"が凄いことになっている」と興奮気味に話してくれた。この方、普段は滅多にこのようなド派手なアクション・エンタテインメント系は観ないのに、この『ワイルドスピード』最新作には大きな勇気を貰ったんだそうだ。その賞賛の言葉はまるで人生についての教訓のようでもあった。

「もうダメだ!限界だ!と思っても、まだ先がある。決して終わりじゃない。彼らはとんでもない方法で、追手の追跡やピンチを乗り越えてみせる」

この話を聞きながら僕はひとり、ゼノンのパラドックスのひとつ「アキレスと亀」に想いを馳せていた。亀を追いかける俊足のアキレスがどれだけ差を縮めようとも、縮めた距離と時間の分だけ亀は更なる遠くへと逃れており、計算上、アキレスは絶対に亀に追いつけない。

もちろん、現実には成立しない。ゆえに数学上の“パラドックス”として用いられる学説である。しかしそれを見事に証明してみせたのが計算式ではなく、他ならぬ“映画”、それも『ワイルド・スピード』であったとは、紀元前400年代に生きたゼノンもビックリである。

Fast_five
そんな“絶対にあきらめない映画”こと『ワイルド・スピード MEAGA MAX』。

ストーリーは前作のクライマックスから直結。囚人輸送のバスを大破させ、仲間を救出するところから幕を開け、次の瞬間、一味はブラジルのリオで潜伏生活を余儀なくされている。そこで舞い込んだ新たな仕事をきっかけにこの街を牛耳る権力者と敵対することに。時を同じくしてアメリカからは最高のFBI特別捜査官が強力チームを引き連れリオへと舞い降りる。果たして彼らは、このふたつの勢力の執拗な追跡から逃れられるのか!?

これがアメリカで封切られたとき、あらゆるメディアがこぞって驚きの声を上げた。「相変わらずスピード野郎の最新作なんだけど・・・なんだか様子が違う!最高に面白くなってる!」。そんな声に誘われるように次から次に観客が集まり、アメリカだけで興収2億ドル超えの大ヒット。秘訣は3つある。ひとつはそれぞれに技能を積んだ仲間が集まり、一丸となってヤマに挑むという『オーシャンズ11』的な新機軸の構成。

次に、アクション描写が従来のスピードぶっ飛ばし系にとどまらず、“フランチャイズ化”の名にふさわしいもっと多角的な構成へと移行していること。それによってバラエティに富んだアクションを繰り広げたあげく、そのすべての支流の合流地点であるかのようにメインディッシュの市街地カーチェイスが降臨する。その狂気じみた迫力ときたら筆舌に尽くしがたい。しかもここでは当事者のみならず、市民の目線をフィーチャーしたリアクション映像も数多く挿入され、目隠しされた馬たちによるトゥウィンクル・レースではなく、街の細部までをワイドに組み入れた有機的な仕上がりになっている。

そして3つめ。最大のポイントはやはり、この二人の対決にあるのだろう。

Vs
ヴィン・ディーゼルとドウェイン・ジョンソンのガチンコ対決である(ひとり2役じゃないよ!)。まるでWWEのメインマッチのような顔合わせ。逃げるディーゼル、追いかけるジョンソン。序盤、スラム街で繰り広げられる逃走劇にて、ふたりは一度、リングを思わせる四角い屋根の上で対峙する。一瞬、「おっ、やるのか?」という緊張に包まれるのは彼らだけでなく、観客も。たしかに彼らの肉弾戦はすごい迫力なのだろう。だがそれにも増して観客をドキドキさせるのは、彼らがひとたび相まみえれば、映画のビジュアル上、どちらがどちらなのかもはや判別がつかなくなることへの懸念ゆえである

ふたりをキャスティングした以上、対決は避けられない。それはどこかで必ず巻き起こる。ではどこで?どんなタイミングで?さあ、しっちゃかめっちゃかになる覚悟はいいだろうか。混乱する前に覚えておいたほうがいい。ヒゲのあるほうがドウェイン・ジョンソン、捜査官のほうだ。

ちなみに本作にはクライマックスにサプライズが仕掛けられているという。このことを知らされたとき、僕は反射的に「ヴィンとドウェインが、実は生き分かれた兄弟だったりして!?」と絶対にあってはならない筋書きを封じる意味で勝手に予測したのだが、安心していい、そいつは裏切られた。もっと別の、シリーズの今後の展開を思わせるくだりが、エンドクレジットのさなかに挟まれているのでお見逃しなく。

パラマウント、ディズニー、ワーナーがアメコミ映画との息長い多角展開を画策しているように、『ワイルド・スピード』はユニバーサルにとっての願ってもいない多角的なドル箱シリーズになり得ている。今後も彼らはどんどんスピード野郎の色調を変え、ド直球のアクション・エンタテインメントを目指していくとの情報もある(すでに始動し始めている6作目もまたおなじジャスティン・リン監督がメガホンを取る)。

それにしても僕が考える何よりの凄さというか、抜け目のなさは、本作が白人のみならず、黒人、南米、アジア系と、アメリカに暮らすあらゆる人種の構成要素に対して訴求力を発揮している点である。それに加えて、いまハリウッド映画が最も恩恵に預かる国のひとつ、好景気に沸くブラジルにスポットを当てるといった設定も巧い。となると、次回作のメイン舞台は中国か、あるいはロシアだろうか。

ともあれ、どんな展開に発展しようとも、本シリーズがある限り“ゼノンのパラドクス”は成立しつづけ、また、なにがあっても限界を乗り越えていく構成は、これからも友人をはじめ多くの人々の勇気をがむしゃらに奮い立たせていくのだろう。

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