« 【NEWS】ジョブズ伝記の映画化権をめぐりソニーが交渉中 | トップページ | 【NEWS】トム・クルーズ、ライトノベル映画化の主演交渉中? »

2011/10/08

【レビュー】猿の惑星/創世記

各メディアで「泣ける!」「大感動!」との文字があまりに踊っているので、今回はこの二言を禁じてお届けしたい。が、それにしても本作について述べるとなれば、大方の文章はどれも似た書き出しとなるのだろう。

それは「誰もがこの最新作のヒットを予想だにしていなかった」ということだ。

Theriseoftheplanetoftheapesposter_2
当然、僕の中にも予告や宣伝を見るたびに嘲笑にも似た感情が芽生えていたことを告白せねばなるまい。また、BBCが伝えていたルパート・ワイアット監督への取材によると、今回の世界的な高評価に誰よりも彼自身が驚きを隠せないのだそうだ。いまだに戸惑いを引きずった彼は、ヒットの要因として「VFX技術をディテールに注いだこと」を挙げている。

それはつまり、ビッグバジェット映画にありがちな大規模カタルシス場面に技術を投入するのではなく、むしろ観客の体内に自然な形で入り込んでいくような場面にこそ手の込んだ作業を施しているということだ。たとえば我々は映画の中盤までくると、あのシーザーをはじめとする猿たちをひとつの個性、ひとつのキャラクターとして認識し、彼らの身体に流れる血潮や感情の起伏を一挙手一投足から読みとっている。これは『アバター』のモーションキャプチャー技術を応用して人間の俳優の顔面の動きまでをも猿の造型に投影したもの。かつてこれほど人間以外の外見をした生き物の感情に寄り添った映画体験があっただろうかと、映画が終わってから徐々に驚きが込み上げてくる。

また、今回の着眼点が我々の暮らしに、または現代社会の要素に深く通低していることも評価の要因だ。そもそも『猿の惑星』シリーズは、アメリカが公民権運動やベトナム戦争に揺れていた時代、当時の観客の意識を“虐げる者”から“虐げられる者”へと転換するのに画期的な役割を果たし、結果的に啓蒙を含んだエンタテインメントとしてその存在自体が時代と密接に結びつくに至った。ではこの現代においてふたたび「権利擁護」を掲げるのか?

いや、そうではない。本作では事の発端となる「アルツハイマーの特効薬」を糸口に、“老いていく生命“と“育ちゆく生命”とのベクトルの交錯点を身を切るほどの切なさで描ききっているのだ。

あの特殊技術で描かれた猿シーザー以上に、かつて怪優として鳴らしたジョン・リスゴーが思いもかけず要介護のおじいちゃん役で現われた瞬間、僕らはいったい何を感じるだろうか。僕は思わず「わー!」とか「ひゃー!」とか声にならない感嘆をあげそうになった。そして次の瞬間、同じような状況を自分の祖母と共に日々繰り返していることに思い至った。これは彼らの物語ではなく、私の物語であり、あなたの物語でもある。

その部分を旧シリーズのような衝撃を持って突きつけるのではなく、ゆっくりと提示して観客と共に価値観を共有しあっていく目線の在り方がとても心優しく思えたのだった。

かつて未来世界の黙示録を描いた『猿』はいま、観客と同じ風景と日常を見つめている。それはこの混沌とした時代を、憎しみ合いではなく慈しみ合いで乗り越えていこうとする作り手の意識の現われのような気がする。たとえ未来の結末がすでに(旧作によって)定められていようとも。

この記事が参考になりましたら、クリックのほどお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

|

« 【NEWS】ジョブズ伝記の映画化権をめぐりソニーが交渉中 | トップページ | 【NEWS】トム・クルーズ、ライトノベル映画化の主演交渉中? »