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2012/02/02

【レビュー】NINIFUNI

昨年、一本の中編映画がレイトショー公開された。それを目撃した人々の中には配給関係者もいて、この映画が放つどうしようもなく不可解な魅力に突き動かされるように配給を決めたという。

NINIFUNIと書いてニニフニと読む。それは何か?マントラか?それとも呪いの言葉か?どれも違った。それは仏教用語なのだと言う。「二つであって二つではない」という意味だそうだ。が、そんなことはどうでもいいのだ。恐らくこの42分足らずの中編を受けとめたその後に、我々の体内では言葉にならない奇妙な想いがゾワゾワと侵食をはじめる。それは人をして「毒」と言わしめるかもしれない。はたまた「感動」とか「衝撃」と呼ぶ人もいるだろう。だが、筆者は思うのだ。その十人十色のリアルな感触こそ、それぞれの「ニニフニ」ではなかったかと。

Ninifuni
本作は絶望的なまでの自然光に満ちている。ふたりの男が歩みを進める。そこに一台の車が過ぎる。瞬発的に走り出すふたり。そして事務所の裏口で、彼らは運転手の男を襲う。ここまで書けばハードボイルドな映画かと思われるかもしれない。

だがカメラはいつしかひとりの男の放浪に密着し、先ほど犯行に及んだこの若者に眩い光が降り注ぐ様を延々と追い続ける。

彼が何をしようとしているのか。目的地はどこなのか。なにも分からない。

が、どことなく死の予感が満ちていることだけは自ずと伺える。一瞬、アッバス・キアロスタミの『桜桃の味』のワンシーンが頭をよぎった。死を待つ男のロードムービー。もしやこの若者も同じ末路を望もうとする儚い存在なのか―。

と、そこで我々は信じられないワンシーンを目の当たりにする。音楽用語で言えば「転調」と呼ぶのだろか。あるいはこれまで日本の土壌に照準を向けていたカメラが、一瞬のうちに地球の真反対のブラジルにまで到達したかのような時空の超越。それくらいの衝撃が全身を貫き、思考回路をショートさせ、そのヒリヒリした傷跡に海の潮風を惜しみなく塗りたくり、ギェー!と悲鳴を上げたくなるほどのクライマックスが静かに待ち構えていた。

それは我々が運命的に避けては通れない“ひとつの固定ショット”だった。まるで火と水、生と死、戦争と平和、天国と地獄、絶望と希望、貧困と富裕。かくもこの世に存在するあらゆる究極の相対する観念が荘厳なまでに同時降臨する光景だった。

映画なんて儚いものだ。この文章も、この映画のストーリーだっていつの日か容易く忘却されてしまうだろう。しかしこの鮮烈なワン・ショットだけは、きっと生涯、胸のどこかに引っかかり続けるはずだ。「2011年」というあまりに忘れがたい年の記憶と共に。

監督を務めるのは劇場デビュー作『イエロー・キッド』が「『タクシー・ドライバー』の再来」とまで絶賛された真利子哲也。絶望的なまでに美しい映像の中に痛々しいほどのリアルな空気を活写する撮影監督には『パビリオン山椒魚』や『キツツキと雨』で知られる月永雄太。主演は宮崎将、山中崇、そして、アイドルグループ“ももいろクローバー”がとてつもない役目を背負って出演しているのも注目だ。

いまふと、宮崎将が今から10年前、その妹と共に『EUREKA(ユリイカ)』なる作品に主演して脚光を浴びたことを思い出した。そうだ、『NINIFUNI』はまさにその語感や感触が輪廻するかのように生まれ落ちた映画界の突然変異なのだ。この10年間、悟った(=ユリイカ)ことなど何もなかった。あるのはただ日常の並置だけだった。これから10年もきっとそのまま変わらないだろう。それは絶望か、それとも夜明け前の混沌たる暗闇か。相変わらず答えなど出ない。でもその状況こそを、私はニニフニと呼びたい。

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