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2012/03/19

【レビュー】現代版ホームズの活躍を描く「Sherlock シーズン2」、第1話

英国では今年の元旦より「第2シーズン」として3話分(90分×3)が放送され、いずれも高視聴率をマークしたBBCドラマ「Sherlock」。かの国のヒップスターたるホームズ&ワトソンも、現代版では捜査コンサルタント&アフガニスタン帰還兵(もちろん医療専門)として様変わり。コナン・ドイルの時代よりも複雑性の増した現代社会を、怪事件を渇望するギークな好奇心と人並み外れた脳内演算処理とで、軽妙に照らし出していく。

第1シーズンは昨夏、NHKにて放送済み。第2シーズンもいずれ同局で放送されることが予想されるが、それでは待ちきれないと言う人のために同シーズンでの展開を少しだけご紹介。知りたくない方は今すぐ目を伏せ、耳を覆い、すみやかにご退避願いたい。

Sherlock01
1話目の"A Scandal in Belgravia"(もちろん「ボヘミアの醜聞」をベースにしているは、クリフハンガー状態で幕を閉じた前シーズンから直結する形で宿敵モリアーティ(その肩書は“教授”では無く、犯罪コンサルタント)との奇妙な対決で幕を開ける。が、本作の関心事はそれではないのだとばかりに、いつしかストーリーの焦点は別の要注意人物へと移行。それはひとりの女性だった。やんごとなきお方のスキャンダラスな写真を手にした彼女の名はアイリーン・アドラー。兄マイクロフトを介して英国王室からホームズに託された使命は、その写真を奪うこと。

さっそくアドラーの住むロンドンの高級住宅地ベルグレイヴィアへと乗り込んでいったホームズ&ワトソンだったが、出迎えた彼女のファッションに動揺を隠せない。なんと全裸だったのだ。これまで人の身に付けたアイテムから多様な情報を読みとってきたホームズの脳内センサーが、表示したこともない答えを導き出す。「手掛かり“ゼロ”」。さすがの彼も全裸からは何も読みとれない。次第にアドラーに翻弄されていくホームズ。彼女は何をもってしてもホームズよりも一枚上手だった。アドラーはその懸案のスキャンダラスな写真について「保険のようなもの」と主張する。金銭を要求するためではない。ただ自分の身を守りたいだけなのだと。いつしかホームズはこの猟奇的な彼女の虜となっていた。

そんなある日、クリスマス・パーティーで華やぐベイカー街221Bにマイクロフトから一報が飛び込んでくる。「アイリーン・アドラーが死んだ」。遺体を確認しに安置所へ向かうホームズ。その心には大きな空虚感が湧き起こっていた。

しかしそれから、事態はさらなるツイストを経て、劇的な終盤へとなだれ込んでいくことに。

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すでに「シーズン2」を3話分すべて観終わった時点で、実はこの1話目がいちばん賑やかな仕上がりで、なおかつ多様な趣向を盛り込んでいて楽しめる。これまで「Sherlock」を知らなかった人、あるいは1年ぶりのご無沙汰の人でもすぐに取り込めるような門戸の広い作りというべきか。

脚本はすでに同作のクリエイターとしておなじみになったスティーヴン・モファット(彼はスピルバーグ監督作『タンタンの冒険』にも参加している)が担当。なんとも彼らしいごった煮感と、視聴者をめまぐるしい展開で揺さぶる弾丸ジェットなストーリー展開には息つく暇もない。それでいて彼の作風はどこかでふっと緩急を効かせ、胸に迫る場面を差し込んでくるのだから要注意。そして今回は原作ホームズでもお馴染みのファムファタール、アイリーン・アドラーまで招聘し、その翻弄ぶりは留まるところをしらない。何事も計算通りで理路整然としたホームズの脳内回路にバグが生じたかのように心象の波乱が続き、またホームズ&ワトソンの友情とも愛ともつかない関係もネタにされイジられるほどに人間描写も静かに熱を帯びる。彼はいつの間にか多くの仲間を得たようだ。逆に兄マイクロフトの方が寂しい存在のように思えてくる節もある。

携帯電話、テロリズム、CIA、マイクロフト、謎の旅客機。そして暗証コード。冒頭付近の取るに足らないと思われた事件の数々が見事に的確なる居場所を見出し、その場へ収まっていく終盤はとても爽快感がみなぎり、なおかつ携帯ロックを解除する方法には誰もが「なるほど!」と歓喜せずにはいられないだろう。

ちなみに「Sherlock」の多くのエピソードは『ギャングスターNO.1』や『Push』などの映画作品でもお馴染みのポール・マクギガンが演出を担当している。映画ではこのところヒット作のない彼だが、このシリーズで才気爆発。ホームズの脳内コンピューターを視覚化したかのようなカメラワークや、彼の意識と直結したテロップ表示、それに夢かうつつか分からない幻想的な場面を気の効いたアイディアで映像化するなど、ホームズの主観に潜り込み、ずば抜けた推理力の揮発点を探るのが巧い。

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