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2012/03/25

【レビュー】トロール・ハンター

さあ、今から試写を始めようという矢先、場内入口からカランコロンという金音が聴こえ、いかにも山男風の、大きなリュックを抱えた男性が姿を現し、前口上を述べはじめた。明らかに先ほど受付付近で映画宣伝マンとして立ちまわっていたはずの彼は、試写場に集まったマスコミ関係者に対し「自分は日本トロール保安機関の代表です」と言って憚らなかった。この手のジャンル映画のお約束と言えばそれまでだが、観客は観客で、「こういう趣向、嫌いじゃないよ」といった風で彼の口上に逐一顔をほころばせた。

どうやら『トロール・ハンター』はここ日本でも、そうやって人から人へと伝染し、皆をひそかに巻き込んでいく、そんな映画のようだった。

Trollhunter
日本ではレイトショー扱い。ともすればDVDスルーにさえなり得たかもしれない『トロール・ハンター』だが、実はヨーロッパでは「ノルウェーから届いた怪作」として大絶賛で迎えられている。昨今、映画界の新たな才能が低予算の域から世界のメインステージへと這い上がってくるには2種類のパターンが見受けられる。ひとつはドキュメンタリー風にリアルさを追究したホラー(『パラノーマル・アクティビティ』『ブレアウィッチ・プロジェクト』『REC』など)、あるいはもうひとつはVFXアーティストが自ら緻密な特殊映像を築き上げて合成し、その予算規模からは想像もつかないスペクタクルを体感できるというパターン(『モンスターズ』『第9地区』『アイアン・スカイ』など)である。

そしてこの『トロール・ハンター』にはその両方が織りなされている。

Hunter 学生撮影隊が特ダネを追って密漁者風の男に接近する。最初はノリといい、映像の感触といい、『ブレアウィッチ・プロジェクト』を彷彿とさせる進行状況が続く。少しずつディテールを見せていき、決して全体像は明かさない。その動線と視界をコントロールすることによって観客を徐々にこの“状況”へと突き落としていくわけである。しかし男が森の奥深くで「トロール!!!」と絶叫した瞬間から脳天をスパーンと叩きつけられたように急展開が巻き起こる。この地点より本作は『ブレアウィッチ』なサナギ状態から『ゴジラ』級のモンスター・ムービーへと急転直下の孵化を遂げるのである。

そもそもトロールとは妖精なのだそうだ。お馴染みのムーミンもこのトロールに属する。ただしこの映画で出現するトロールは巨大で、奇怪で、獰猛で、なぜか宗教的な帰属性も嗅ぎ分けて襲いかかってくる。ノルウェー政府はすでに早くからこの存在を把握し、生息域を観察し、その枠を飛び出して人間に危害を与える恐れのあるトロールを「トロール・ハンター」の資格を持つ元特殊部隊出身者に始末させているという。この流れに、まったく違う特ダネを期待した大学生チームが合流してしまったことから、この目撃体験モキュメンタリーは想いもよらない映像記録を紡いでいくことになるわけだ。

Trollhunter2

このハンディカム映像という一点の穴から、ノルウェー奥深くの生態系、果てには政府レベルの極秘事項までも覗かせる手腕。そしてどんな窮地でもユニークさを忘れない作り手のサービス精神。そんなところに人々は心を緩ませ、この映画の虜になるのだろう。

果たしてこの映画の魅力は怪獣モノの本家本元たる日本でも通用するのか?その判断は劇場における目撃者ひとりひとりに委ねることにして、今はただ、日本トロール保安機関の今後のご活躍を祈るばかりだ。

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