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2012/03/08

【取材】メリル・ストリープ来日会見

同時代に生きる最強の女優、メリル・ストリープが最新主演作『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(3月16日公開)を引っ提げて来日した。彼女はこの役でアカデミー賞主演女優賞を獲得。これは『クレイマー、クレイマー』(79)の助演女優賞、『ソフィーの選択』(82)の主演女優賞に続く3度目のオスカーを意味する。

『マーガレット・サッチャー』は80年代、景気低迷、組合スト、IRAテロ、フォークランド紛争といった数々の難題に立ち向かい剛腕を振るった英国の女性首相の人生を、今現在の老いた彼女の脳裏に浮かぶ泡沫のような記憶として照射した、一風変わった伝記映画だ。

今回共に来日した女性監督フィリダ・ロイドは、ストリープと『マンマ・ミーア!』でも組んだ間柄。まさに互いの才能を知り尽くし、隠れた可能性を十二分に引き出し合える仲のふたりは、この英国現代史のターニング・ポイントにどのように立ち向かっていったのだろうか。

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「英国の人々にとって(米国人の)私はアウトサイダーです。そんな自分がいかにして英国史上多くに愛され、そして憎まれもしたサッチャー女史を演じるのか、それが大きなハードルでした。それに加えて、今回私は彼女の中年期と、歳を重ねた今現在の姿も演じています。その二者をいかに滑らかに融合させていくかというのも課題でした」

会見でそう口にしたストリープ。なにしろ本作で彼女は特殊メイクを駆使して御歳90近くになるであろうサッチャー女史をも演じきる。高齢によるアルツハイマーにも侵されているとも言われるサッチャーだが、この映画ではそんな彼女の意識の放浪に寄り添って現在と過去を自由自在に行き来し、イメージ豊かに彼女の心象パッチワークを刻んでいく。そんなチャレンジングな作風に挑む傍ら、カメラの前で演じるストリープにとってはどのカットがどう繋がっていくのか全体像を掴むのに一苦労だったようだ。

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「おそらくメリルにとっていちばん大変だったのは、最初の3日間だったでしょうね。本作は撮影日数が極度に限られており、まずはいちばん難しいシーンを最初に撮り上げたんです」とロイド監督が打ち明けると、ストリープも「ええ、とくに二日目ですね」と応じた。

「サッチャーが徐々に議会や内閣を掌握できなくなっていくシーンです。そして側近中の側近を罵倒し、どんどん孤立していってしまう…。とても重要なシーンではありましたが、この映画は女史の現在と過去とが交互に揺れ動いて構成されていくので、どれだけ演技に一貫性を持たせれば良いのか、どこまでいったらやり過ぎなのか、さじ加減がとても難しかったですね」

なるほど、さすがに名女優ともなると、そのシーンごとの瞬発的な演技のみならず、全体像を見渡しての位置づけというビジョンにも手抜かりなくコントロールが及んでいるのだ。また今回の役作りについて彼女はこうも語る。

「サッチャー女史に関しては今も立派にご健在でいらっしゃいますから、私にはもう一つ責任が付与されたことになります。それは実際の彼女に忠実でなければならないということ。イマジネーションは控えめに、ご本人の生き方に重ね合わせられるような役作りを行っていく。そんな部分に気を配りました」

これらの言葉から、彼女の身体の中に経験則的に叩きこまれた演技論を垣間見たような想いがした。

ときどき「フフッ!」と甲高く笑う。それ以外は、とくに芸達者ぶりをアピールするわけでもなく、質問への答えに熱がこもってついつい長くなってしまうこともない。だが、実に気品にあふれ、安定した存在感に覆われている。

この人の身体を媒介に、いったいどれほど多くのバラエティに富んだキャラクターたちの人生が語られてきたことだろう。実物のメリル・ストリープは、どこか“透明な器”というイメージを彷彿とさせた。注ぎこまれる役柄によって多彩に色を変える。しかしそこに漂う気品だけは変わらない。それが彼女を「最強の女優」たらしめている最大の理由、とまでは言わないが、少なくともその中の一端であることは間違いない。

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