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2012/04/28

【レビュー】ブライズメイズ

この不況期、ハリウッドが高リスクを避け、低リスク高リターンに舵を切っているのは見ての通りだが、その分、ハリウッドを覆う流行の回転スピードも速度を増している。良いものは下剋上的にのし上がり、ダメなものはたとえ一流であろうと一瞬にして廃れる。例としてエディ・マーフィ、ジム・キャリーといった一世を風靡したコメディ俳優は沈み、最近ではアダム・サンドラーも不調ぶりが顕著となってきた。

そう考えると、2011年のアメリカン・コメディとして最高の評価を手にした『ブライズメイズ』は、日本で劇場公開かDVDスルーかを悩んでいる場合などではなく、映画ファンが一時も速くその大ヒットの真価を見極めなくてはならない映画と言えるだろう。とりわけこの映画の脚本と主演を務めた「サタデー・ナイト・ライブ」出身のクリステン・ウィグは、今やTIME誌が「世界に最も影響を与える100人」として選出するほどの注目株。この映画を観ないことには、我々日本人はウィグが結果的にどの程度世界に影響を与えているのか判然としないままこの一年をやり過ごしてしまうことになる。

Bridsmaids
と、グッとハードルを上げたところで、この映画は女性版『ハングオーバー』と呼ばれているだけあり、親友の結婚準備をめぐる花嫁付添人(ブライズメイズ)たちの縦横無尽、やりたい放題の顛末を描いた物語だ。この付添人のまとめ役(ブライド・オブ・オーナー)に任命されるのが我らがウィグなのだが、このアラフォーな彼女は「素敵な式になるように、わたし精一杯がんばるわ!」と高らかに宣言しながらも、いつしか個性豊かすぎる"メイズ"たちの自己主張ゆえ、いやそれ以上に自分の胸の内にずっと抱えていた自信のなさがノイローゼ的に膨らんでいって、いつしかすべて「パーン!」と弾けてしまう。

Bridesmaidsmovieposter
コメディで最も大事なポイントは「笑えるか、笑えないか」に尽きるのだろう。しかしそれはあくまで観客個人個人の沸点の違いが生み出す結果だ。私の沸点があなたの沸点よりも正しい理由は一つも無いし、だからといって未定義の“正しさ”の基準を導きだす必要性も全くない。だからここでは客観を述べよう。本作には我々日本人がよく知るような有名俳優はほぼ皆無だし、女優たちの織りなすコメディといってもセレブ臭のプンプンする『セックス・アンド・ザ・シティ』などとは対極的なセンスを併せ持つ。それに『ハングオーバー』に似ているからと言って、あの映画のようにプロット重視で突っ走る無軌道ぶりは持ち合わせていない。

では何があるかと言うと、いかにも自信満々な牡鹿のごとき人々ばかりが息づくこのアメリカで、当の主人公は何だかひどく手痛い傷を負っていて、ふと立ち止まると、気負った仮面の隙間から小心者の小ダヌキが自信なさげに顔をヒョイとのぞかせるかのような本音が詰まっているのだ。

人間は誰もが弱い。仕切りの能力を完璧に備えた人なんて一握りに過ぎない。でもほかならぬ親友のためなら、何だってしてあげたい。そんな複雑な心理のせめぎ合いからくる感情の起伏を、この映画は観客とともに果敢に乗り越えようとする。

ときにR指定の笑いとお下劣さも炸裂する。試着室での阿鼻叫喚の地獄絵図はコメディ映画史に残る大惨事として後世にまで伝えられていくだろう。だがそれらは決してワザとらしいものではない。むしろ人生の五臓六腑から搾り取られた一瞬の岩清水のように濃厚かつ澄み切っている。

そして私は、そんなリアルで生々しい感情に到達しようとする女性たちの大胆さと繊細さ、強引さと優しさのどうしようもない相克に、心底惚れたのだった。

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