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2012/05/17

【レビュー】ダーク・シャドウ

ティム・バートンとジョニー・デップがタッグを組むのは8度目だという。言うまでもなく、そのひとつひとつはシリーズ物などではない独立した個性を持っているわけで、彼らは同じことを8度繰り返してきたのではなく、その回数分だけ関係性を更新させてきたのだと言える。要は彼らだって変化する生き物なのだ。

最近のバートン&デップ作品からはあのドギツサが無くなった。奇才たちは人の子だった立場から、いつしか人の親となった。その子らもだんだん成長して親父の仕事ぶりが理解できるようになってくる。『スリーピー・ホロウ』や『スウィーニー・トッド』のような最もダークな作風を呈していた時代を乗り越え、彼らの『チャーリーとチョコレート工場』、『アリス・イン・ワンダーランド』は、もはや家庭サービスのお父さん的な視点へと振りきれている。あんな映画を手がける父親を子供たちはさぞや鼻高く想った事だろう。

そこに連なる今回の『ダーク・シャドウ』は、ちょっとだけ血の気も回復しているが、それでもどちらかというと未だ家族向けであることに変わりはない。いまのところバートン作品としては珍しく賛否両論が目立つが、でもいちばん大事なのは、あなたの心にはどう映ったのかということに尽きる。

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物語は18世紀のリバプールから始まる。いかにもジャック・スパロウが顔を出しそうな船のアングルで幕を開ける本作は、オープニング・シークエンスでコリンズ家の歴史を丹念に謳う。遥かに目指した新大陸。そこで始めた水産業。港はコリンズポートと名付けらるまでに発展するが、そこで彼らは魔女のつけ込む隙を与えてしまう。使用人にまぎれていたアンジェリークは、ジョニー・デップ演じるバーナバス・コリンズの寵愛を勝ち取れぬと分ると反旗を翻し、彼の両親や恋人の生命を奪い、果てには無残にも彼を吸血鬼へと変貌させてしまう。町の住民たちは化け物と化した彼を追い詰め、棺桶に閉じ込め、生き埋めに。それから200年が経ち―。

と、ここまで雰囲気たっぷりにゴシック・ホラーが描かれてきたかと思うと、次の瞬間にカラーは一変。ノスタルジーたっぷりのカラートーンと懐かしの歌謡ナンバーに乗せてムセかえるような70年代の風が観客の顔をなでる。

ははん、なるほど。この映画は確かにティム・バートンとジョニー・デップのコラボレーションを祝福するものだ。しかしながら今回はまたもう一人の仲間が新規加入を果たしている。彼の名はセス・グレアム=スミス。「高慢と偏見とゾンビ」という小説でジェーン・オースティンの文体にゾンビカルチャーを華麗にミックスし、とんでもない合体文学を作り上げてしまった俊英である。今後もティムール・ベクマンベトフ監督の『リンカーン/秘密の書』の原作&脚本を務めるなど注目の高まる彼だが、彼の作風は持ち味はこの「要素と要素を掛け合わせ」にあり、時に“ハイブリッド文学”と呼ばれることもある。

ゴシックホラーからの急転直下、劇中ではしっとりと、かつ力強いカーペンターズ、Tレックス、アリス・クーパーの歌声が濃厚に響く。オープニング・クレジットに映し出される列車が延々と続く様は、運命が200年もの年月をものともせず、何かに向かって一直線に延びている、そのひたむきさを象徴するかのようだ。

そして眠りから覚醒した御先祖様バーナバスは、今ではすっかり没落した子孫たちと遭遇し、なんとかコリンズ家を立て直したいと思いめぐらす。

と、ここでバートンの変容に改めて驚かされた。いつの間にかティム・バートン作品ではアウトサイダーたる主人公が孤独の星の住人というわけではなくなっている。『アリス』でも仲間は力を合わせて立ち上がり、また本作でもバーナバスは「誓ってもいい。家族の血は絶対に吸わない」とか「家族のために闘う!」などと宣言し、やがて家族の協力を取りつけて共に魔女アンジェリークへと精一杯立ち向かっていこうとする。

その滑稽にも思えるデコボコ家族の奮闘ぶりが、やはりバートン&デップが天涯孤独ではなく、もはや実生活でも家族の一員であり、アウトサイダーが強力な仲間を得たことを如実に投影している気がするのだ。

そんな(ある意味)真っ正直な作品のことを、僕は決して嫌いにはなれない。

*ティム・バートンの次回作は自身の短編をリメイクした『フランケンウィニー』。予告編は、こちらからどうぞ。

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