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2012/06/13

【レビュー】アベンジャーズ

すべては『アベンジャーズ』に向けての周到な計画だった。『アイアンマン』、『インクレディブル・ハルク』のエンドクレジットで控え目に描かれてきたクロスオーバーの試みは、『マイティ・ソー』や『キャプテン・アメリカ』ではもはやその核となる部分までもが軌道を同じくして描かれ、あの青白く照射された光の矛先は今ついに一本の映画にて像を結ぶ。

冒頭から観客は渦中へと突き落とされる。地球の安全を守る特殊機関シールド本部が木っ端みじんに破壊され、謎の解明が待たれていた“キューブ”が研究者もろとも『マイティ・ソー』の宿敵ロキによって奪われてしまう。どうやら彼の背後には異次元に巣食う闇の勢力が存在するらしい。時空に穴を空けるほどの強大な力を持つキューブを、いったい何に利用しようとしているのか。少なくともこれから起こりうる事態は手負いのシールドでは到底太刀打ちできないものだ。シールド長官ニック・フューリーは決意を胸に、これまで自身がチョイ役出演して地道な種を撒き続けてきた各映画の主演ヒーローたちに、いよいよ本格招集をかけるのだが―。

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アイアンマン、マイティ・ソー、ハルク、キャプテン・アメリカに加えて、彼らほどの超人というわけでもないホーク・アイやブラック・ウィドウ。皆、驚くほどマイペースなヒーロー揃いで、協調性は低い。パトリオット精神に溢れるキャプテン・アメリカでさえ、「史上初の政府認定ヒーロー」であるがゆえに考え方が古く、軍隊的な目線で命令を下すなど、皆とは波長が合わないことが多い。

これまで各々のルールだからこそ巧くやれてきたオレ様キャラたちにとって、共闘とは無理難題に等しいのだろうか?

しかしながら映画『アベンジャーズ』の魅力としては、これがスケールの大きなアクション大作であるのみならず、ついに顔を合わせる個性豊かなキャラクターたちがそれぞれに対して批評的であるということが挙げられる。

そもそも現代はヒーローを必要としない時代とよく言われてきた。正義の意味合いは多様化し、世界を見回しても傑出した個の存在は大衆の結束力の前に影をひそめる。その潮流に関してヒーローたちも自覚的だ。だからこそ彼らは大義名分ではなくあくまで個人の理由のもとで闘い続けようとする。

それゆえ、彼らは今ここで“結束”を余儀なくされることに躊躇し、ことあるごとに互いに辛辣な相互批評をはじめる。ソーに対して「シェイクスピア劇か何かか?」とか、キャプテンに対して「年寄り」だとか。さすが同業者なだけにそれらすべての批評は的を得たものばかりで、だからこそ相手を余計にカチンとさせることに不自由しない。

それでも意外だったのは、彼らにも増して見事な批評眼を持っていたのがなんのスーパーパワーにも恵まれないエージェント・コールソンだったことだ。いつもヒーローたちをサポートし続けてきた彼が、宿敵ロキのキャラクター性に対して手痛い批評をかますのだ。あの時のロキほどの動揺した表情はめったにお目にかかれないものだ。

また本作は「理由はともあれ、ヒーローが結束するには“きっかけ”が必要」とするプロットに関して出演者たちがとても自覚的である点が面白い。なるほど、彼らはスーパーパワーで百戦錬磨の勇者たちであるのみならず、見方によっては数々の“ドラマ”を繰り広げ、自己演出し、自分の物語を盛り上げてきたドラマツルギーのスペシャリストたちでもあるわけだ。彼らが“きっかけ”を意識しないはずがない。

ちなみに今回ハルク役として初参加するマーク・ラファロが、人のよさそうな皺だらけのジャケット姿から一転して怒りの権化へと変わりゆく姿もきっかけの一端を担う。いったん豹変すると敵も味方も見境なく突進してしまう無軌道ぶりも、アベンジャーズの内側に予定不調和という最大の武器を搭載しえたことを物語っている。

かつて『インクレディブル・ハルク』で主演を務めたエドワード・ノートンは、製作過程でいろいろと衝突しすぎたため、シリーズ復帰することは無かった。結果的にラファロというこれまでになかったヨレヨレのヒーロー像を盛り込むことで、アベンジャーズはより多様な個性の集合体として魅力を放つようになったとみていい。

この辺の演出感覚、そして随所に挿入されるちょっとしたユーモア感覚が、脚本も手掛けたジョシュ・ウェドン監督のとびきりの巧さと言えるだろう。

とくにメンバーが最高のワンフレームに納まっているラストは、彼らの言葉要らずして通じ合えるコンビネーション、そして集団としての空気感を絶妙に讃えたベストショットだ。早々に席を立って見逃さないようにご注意を。

蛇足ながら、ヒーロー映画とはそもそも世界の投影でもある。こうしているうちにも現実世界では問題が山積だ。日本では民主と自民とが意地を張り合い、国連ではシリア内戦への対処に向けて各国の足並みが揃わず、またEUにおいてもギリシア、スペイン救済に向けてなかなか出口が見えてこない。

『アベンジャーズ』は単なるヒーロー映画というのみならず、価値観や主義主張の多様化した時代において連合体の採るべき方向性を指し示してくれる指針のような存在だ。

為政者たちも正義とは何かに行き詰った時には『アベンジャーズ』でも観て、自らの信じる可能性についてもう一度熟考してみてはどうだろうか。

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