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2012/07/20

【レビュー】Chronicle

この映画の出現に多くの観客は度肝を抜かれ、そして多くのSFファンは新しい才能の誕生だと大いに湧いた。弱冠27歳のジョシュ・トランク監督のデビュー作にして懇親の一作"Chronicle"だ。

Chroniclefilm
物語は唐突なるスイッチの起動ともに幕を開ける。デイン・デハーン演じる高校生の主人公アンドリューは言う。「これから起こるすべてのことを映像として記録することに決めた」。下の階からは父親の怒鳴り声、母はチューブに繋がれて健康状態がよろしくない様子だ。学校ではいじめっ子にカメラを取り上げられ散々に小突き回され、それでも彼は宣言通りカメラを回し続けることをやめない。かくしてこの映画はアンドリューの目線を借りたカメラ映像で綴られていくことになる。制作費1200万ドルという低予算で革新的なショウケースを打ち立てるにはこの手法はまさにうってつけと言える。

その理由は3つ。1つは主観に入り込みやすいこと、 2つ目は映像の粗さに正当性を持たせることができること、そして3つ目はここからはじまる思いがけない展開で炸裂する特殊効果を映像としっくりとなじませることができるのである。

やがてアンドリューはマット、スティーヴという友人とともに不思議な現象に遭遇する。あたり一面でいったい何が起こったのか、突如出現した深い穴を見つけ、これはスクープだとばかりにカメラを持ったまま穴を下る。そこには不可思議な発光体が待ち構えていた。すると次の瞬間から、彼ら3人は特殊能力者と化している。どんな攻撃にさらされてもビクともしない。空だって飛べる。念じれば物もフワフワ動かせる。

彼らはひとしきり悪戯に興じたあと、この力のあり方をめぐって少しずつ方向性をことにしていく。そして家庭内で問題を抱えたアンドリューは特にこのスーパーパワーの入手をきっかけに少しずつ心のバランスを崩していく。そして彼の心がついに悲しみの叫び声をあげるとき、街はとんでもない大惨事に見舞われることに―。

Chronicle
90分あまりの本作は『第9地区』のような映像技術と発想力とを併せ持っており、ストーリーとしてはスーパーヒーローのアイデンティティを探るエピソード1的な様相も秘めている。高校生の青春群像ながらもその暮らしは深刻なダメージに彩られており、だからこそパワーを手にした喜びを無邪気に体現する年相応の表情はとても眩しく、そこから急転直下、ダークサイドへ落ちていく姿は哀しみに満ちている。このギャップと相克を経るからこそ観客の心もまたふたつに引き裂かれそうなほど翻弄されるのだろう。

そしてクライマックスに巻き起こる市街戦ではビデオカメラ映像という状況をフルに活用したVFXアクション・シークエンスが展開。観客としてのボルテージは振り切れ、もはや目の前の事態に自分が嘆いているのか興奮しているのか測定不能となる。口を半開きにして、ただ呆然と見つめていた、というのが正直なところだ。とにかくこの境地は映画を体験した者だけが共有できる凄みに満ちている。

ちなみにオファーが殺到中のジョシュ・トランク監督は次回作として『ファンタスティック・フォー』のリブートを手がけるとのこと。彼の手の内から果たしてどんな装いも新たなヒーローが起動するのか楽しみに待ちたいものだ。もうひとつ付け加えるならば、"Chronicle"を観たあとに真っ先に思い出したのがほかでもない『AKIRA』だった。同作のハリウッド映画化は現在棚上げ状態に陥っているが、ジョシュ・トランクという存在を知ってしまった以上、いっそ彼の手に委ねてみるのはどうだろうか。何よりも精神性の面で深くつながっていると思うのだ。

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