« 【予告編】Life of Pi | トップページ | 【NEWS】ヴェネツィア映画祭ラインナップ発表 »

2012/07/26

【レビュー】Jeff, Who Lives at Home

様々なところから「僕の大切な人と、そのクソガキ」の評判が聴こえてくる。日本では劇場公開されずDVDスルーとなった作品だが、その監督を務めたジェイ&マーク・デュプラス兄弟の2012年の最新作"Jeff, Who Lives at Home"という映画をロンドン往きの機内で観ることができた。これがコメディというジャンルに押しとどめておくのは勿体な魅力の詰まった作品だったのでご紹介しておきたい。

Jeffwholivesathomeposter_2 
この物語は仕事もせずにずっと自宅にいる中年男ジェフ(ジェイソン・シーゲル)が主人公だ。映画は彼のそうした性格を批判するどころか不思議な運命論を展開してみせる。ある日、彼のもとに一本の間違い電話がかかってくる。電話の相手は「ケヴィン」という名の男を求めていた。勘違いも甚だしかった。しかしジェフは何故だかこの電話の主が口にした「ケヴィン」という名のことが忘れられなかった。なにか運命的なものを感じたジェフは外へ出る。バスに乗る。すると前方の座席にジャージ姿の少年が座っていた。そこに刻まれた名はまたもや「ケヴィン」。ジェフはストーカーのように少年の後を追い、後に一緒にバスケットボールのチームを組むまでに打ち解ける。だが、後にジェフはその少年一味からボコボコにされて財布を取られる。しかし朦朧とするその意識で見つけたのは、またもや「ケヴィン」の文字―。

実はこの物語はジェフだけの物語ではない。『ハングオーバー』で一躍有名になったエド・ヘルムス(メガネで顔面タトゥーの男ですね)は人の意見を全く聞かない兄役。彼は自分の財布では払えもしない高額のポルシェを買ってしまって妻に愛想を尽かされる。どうやら兄も相当のゴーイング・マイ・ウェイな性格のようだった―。

Edhelms_jeff_who_lives_at_home_2 
母親も登場する。スーザン・サランドン演じるママは会社で仕事に打ち込んでいる最中に一通のメッセージを受け取る。「あなたのことをお慕いしております」 一体誰がこんなことを?返信するママはその後のやり取りの中でどうやら送り主が同じオフィスの人間らしいことを知る。胸のドキドキが止まらなくなる。冗談なのか、本気なのか。彼女は相手の正体が知りたくて思い切った行動に出るのだが―。

22107promo20120707_105827_jeffwholi
父はいない。遺されたこの家族3人がマイケル・アンドリューズの奏でる静かなる運命の到来を讃える音楽に導かれながら「答え」に向かってひた走っていく。

運命とは偶然なのか、必然なのか。それは誰にも分らない。しかしながら日々の生活に宿る何かしらの兆しを入念に辿っていけば、それが納得できる結果に結びつくかどうかはわからないが少なくとも軌跡(奇跡ではなく)が刻まれる。他人から見ればそれは実に馬鹿げた思い込みと捉えうるかもしれない。けれどその馬鹿げた物に意味を付与していくのは自分自身であり、そこに注ぎ込んだ情熱に他ならない。いちばん最低なのはその兆しがずっと気になりながらも視界からあえて遠ざけ、後で大きく後悔することだ。

この映画のラストシーンで、ジェフが立つのはスタートラインなのか、それともゴールなのか。彼がこの85分あまりの冒険の中で何を達成したのかもよくは分からない。ただしその最終地点がたとえ相変わらずの家の中だったとしても、それは始めと終わりとでは全く意味の異なった、何かの連続性のもとに繋がった<家の中>であることは間違いない。

今の時代、どんな局面でもどんな映画でも人々は口を揃えて「つながる」と言う。家族、パートナー、友人、それ以外の誰か。"Jeff, Who Lives at Home"はその概念をもっと靄で包み込んで幻想性の上に投影したファンタジックな日常コメディなのだった。

この記事が参考になりましたら、クリックのほどお願い致します。

TOP】【レビュー】【TWITTER

|

« 【予告編】Life of Pi | トップページ | 【NEWS】ヴェネツィア映画祭ラインナップ発表 »

【劇場未公開作】」カテゴリの記事

【家族でがんばる!】」カテゴリの記事

【生きるためのファンタジー】」カテゴリの記事