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2012/09/25

【レビュー】ハンガーゲーム

過去なのか未来なのか、はたまたパラレルワールドなのかは分からない。しかしその状況設定だけはリアリティに満ちている。どうやらその国はすでにアメリカ合衆国とは呼ばなくなって数十年が経過しており、新たな独裁国家が興隆した後、その繁栄を享受するキャピトルとその周辺の12の隷属地域とによって構成されているようだ。

この隷属地域とはすなわち過去に反乱を企てた経歴を持つエリア。国家は「過去を忘れるな」と言わんばかりに人民たちに過去の戦いの記憶を呼び覚まさせようとする。そのために毎年、12の地域から2人ずつの青少年たちを選出し、全国に生中継放送される中でサバイバル&殺し合いをさせるのだ―。

この特殊な状況をゲイリー・ロス監督はあくまで主人公カットニス・エバディーンの目線づたいに奏でていく。幼くして“ハンガーゲーム”に選出された妹をかばってこの殺し合いの祭典への参加を決めたエバディーン。その瞳に映りこむ景色は数多い。飢えに苦しむ隷属地域の現実。家族や恋人との別れ。列車がキャピトル内に乗り入れた瞬間から様変わりする車窓の風景。ハイテクノロジーで夜も眠らぬ狂騒的な都市を実現させた国家の中央部。『ウィンターズ・ボーン』でオスカー女優候補にもなったジェニファー・ローレンスはその若き日のジーナ・ローランズさえ思わせる強烈な目ヂカラを武器に、一滴の涙も見せずにこの圧倒的な状況に立ち向かっていく。そしてこの国家やスポンサー、観客、全国の視聴者などの声も密接に絡んでいくこのゲームにて、彼女はサポート役のスタッフの力を借りながら徐々に人気や支持を得始めて、サバイバルゲームを巧みに掌握しはじめていく。アクションシーンよりもその心理戦にこそカタルシスを覚える。

日本の『バトル・ロワイヤル』との近似性も言われているが、個人的にはアイディアは似ていてもストーリー的には似て非なるものと感じる。『バトル・ロワイヤル』はその取り巻く外部環境を全く描かずに登場人物を突如として虎の穴へと放り込むことで完結していたが、『ハンガーゲーム』はむしろその外部環境を詳述することで、ヒロインの針の眼のような目線と国家レベルの社会システムの両面をディテール深く連動させつつ世界を描く。そしてなおかつ、こちらは後半、“革命の物語”という側面をもにおわせながら展開していく。『ダークナイト・ライジング』や『レ・ミゼラブル』といった近作でもテーマのひとつとして描かれるこの要素は今後も価値観の大きく変容する同時代におけるひとつの象徴となっていきそうだ。

とはいえ、ここからは2作目、3作目の役目。第2弾"Catching Fire"ではフィリップ・シーモア・ホフマンが投入されることが決まっており、この先どのような展開が待ち受けているのか予想もつかない。

北米をはじめ全世界で原作小説がベストセラー入りする本作は、映画版としても『ハリー・ポッター』や『トワイライト』シリーズに続く若者たちを熱狂させる新シリーズとして今後もセンセーションを吹き荒らしていくこと確実とみられている。

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