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2012/12/24

【興行】北米週末TOP10 Dec.21-23

先週までの復習は各自こちらにて行ってください。

【Dec21-23 weekend 推計

01 The Hobbit An Unexpected Journey  $36.7M
02 Jack Reacher  $15.6M
03 This Is 40  $12.0M
 
04 Rise of the Guardians  $5.9M
05 Lincoln $5.6M
06 The Guilt Trip  $5.4M
07 Monsters Inc.3D $5.0M
08 007 Skyfall $4.7
M
09 Life of Pi $3.8M
10 The Twilight Saga: Breaking Dawn Part2  $2.6M

■クリスマス前のひととき、人々はプレゼント探しに必死で映画館の存在を頭の中からすっかり忘却してしまっているようだ。そんなわけで、今週も先週に引き続き『ホビット 思いがけない冒険』が興行成績NO.1の座を獲得。しかしながら先週末に比べて下落率が57パーセントに昇るなど、あらゆる世代に訴求力を持つ堅実な作品にしては落ち方もやや急傾斜であることに驚きかされる。本作のアメリカでの10日間興収は1億4990万ドルに昇るが、これを過去の『ロード・オブ・ザ・リング』3部作と比較すると以下のようになる。

・旅の仲間 10日間興収1億2973万ドル/最終興収3億1336万ドル 
・二つの塔 1億6810ドル/3億3979万ドル
・王の帰還 1億9080万ドル/3億7700万ドル

今作が3Dフォーマットであることを考えると、やや物足りない興行展開と言える。その分、世界興収にて十分な巻き返しを図っていきたいところだ。

■2位には初登場、トム・クルーズ主演の“ジャック・リーチャー”シリーズ第1弾として降臨した"Jack Reacher"(邦題は『アウトロー』)だ。昨年の同時期には『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』で一気にスパークしたトム・クルーズだが、今回の意欲作はオープニング3日間で興収1560万ドルしか計上できていない。この数字をどう読み解くかについてはスタジオ側にも様々な言い分が立つことだろう。しかしながら作品の評価は至って良好で、今後クチコミがどのように広がっていくかが成否の分かれ目となることだろう。まずは来週の下落率にて今後の展開を占いたいところだ。観客層は6割が男性、そして観客の実に76パーセントが25歳以上と、極めて年齢層は高い。

■3位は初登場コメディ"This Is 40"。監督はジャド・アパトゥー。週末の興収は1200万ドルにとどまり、観客層は57パーセントが女性とのこと。ポール・ラッドをはじめ、レスリー・マン、アルバート・ブルックス、ジョン・リスゴー、ミーガン・フォックス、ジェイソン・シーゲル、メリッサ・マッカーシーといった芸達者らが勢ぞろいする本作だが、勢いのないスタートとなってしまった。

■"Rise of the Guardians"は今週も4位にとどまった。オープニングこそ低調だったがその後は下げ止まり効果が広がっている本作。累計興収は7970万ドルに達している。スピルバーグ監督作"Lincoln"は累計興収を1億1680万ドルとした。

■6位の"The Guilt Trip"は、セス・ローゲン主演のコメディだが、こちらも芳しくない数字に終わった。監督は『あなたは私の婿になる』でサンドラ・ブロックを再度高みに押し上げたアン・フレッチャー。観客層は6割が女性、そして25歳以上の観客が82パーセントを占めている。

クリスマス前に笑い転げて楽しく過ごしたい人たち向けにリリースされたコメディが次々と撃沈している様子には、何か興行的にボタンを掛け違えているような印象さえ受ける。各作品ともに来週以降の巻き返しはありうるのか?

■7位に登場した3D版『モンスターズ・インク』もイマイチ煮え切らないスタートぶり。『ライオンキング』までは好調だった3D版シリーズもここにきてやや存在感を薄めているように思える。

■TOP10圏外に目を見けると、『シルク・ド・ソレイユ 彼方からの物語』が840館規模で封切られ、週末興行成績11位に付けている。キャスリン・ビグローが2度目のオスカー獲得を目指してぶち上げる意欲作"Zero Dark Thirty"は、まずは5館のみの限定公開で小手はじめ。1館あたりのアベレージ興収は8万ドルを超えており、これは現在公開中のあらゆる映画の中で最も高い値と言える。

■ナオミ・ワッツとユアン・マクレガー、そして子役たちが懇親の演技を見せるリアリスティックな津波映画"The Impossible"は15館にて公開。こちらはアベレージ9000ドル台というまずまずの動員。また、今年のカンヌ最高賞受賞作、ミヒャエル・ハネケ監督作"Amour"も3館にて封切られ、こちらはアベレージを2万ドル台に乗せる高稼働を見せつけている。

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2012/12/19

【レビュー】愛について、ある土曜日の面会室

この女性監督おそるべし。本作『愛について、ある土曜日の面会室』を撮ったとき、レア・フェネール監督は弱冠28歳だったという。2009年の作品なので今は31歳となって、益々研ぎ澄まされた感性を身につけているに違いないが、まずは日本人としてこの初上陸する本作を受け止め、新しい才能の開花を遅ればせながら祝福しなければならない。

その語り口は時に老成した巨匠監督のような落ち着きと、初恋に落ちた少女のような感性とを併せ持つ。主人公は複数に及び、年代も性別も国籍もバラバラ。しかし誰もが切実な思いを抱えて、いま、刑務所の面会室の扉を押し開けようとする。その構成的に見ればアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(『バベル』『アモーレス・ペレス』)やポール・ハギス(『クラッシュ』)などの群像劇の名作を彷彿とする人も多いはず。個人的には『そして、全ては愛に帰る』のファティ・アキン作品などの記憶も蘇ってきたりした。

結論から言うと、この映画は最初と最後の場面が面会室で括られている。バラバラな人生を歩んできた主人公たちが、最後に同じ室内でそれぞれの面会時間を享受するのだ。綴られゆくエピソードはその瞬間に向けてのカウントダウンと見ても良いだろう。

今日も彼らは塀の向こう側に暮らす大切な人たちと再会を果たす。しかしながら最後の場面は序盤から幾度も繰り返されるルーティーン的な面会とはひと味違う。ここでは静かに、けれどダイナミックにドラマが動く。人生が動く。たかが30分、たった30分の面会時間に全てを賭けて臨む人たちの肖像がここに浮き彫りになってくる。このカメラの切り返しも難しい手狭な空間の中でいかにエピソードを集約させ、それぞれの人物たちを何らかの決着へと導いていこうとするドラマツルギーにはゆっくりと、しかし深く観客の鼓動を強めていく骨太さがある。

そしてエンディングで巻き起こるひとつの出来事を目撃することで観客の心は大きく動揺させられ、同時にこの面会室を境界線として構成される塀の向こう側とこちら側という二分律は何ら意味を持たず、むしろ「面会室」という装置は互いを鏡面的に映し出す鏡のような存在だったことに気づかされるのだ。

なるほど、そういえば我々はこの映画の中で一度たりとも牢獄の中を垣間見ることはなかった。と同時に観客は、塀のこちら側(お天道様に顔向けしている側)に暮らす登場人物たちの姿にも“人生という名の牢獄”と呼ぶにふさわしいそれぞれの悩み、慟哭、ジレンマが存在することを認識させられる。

何よりもあのラストシーンで、人々が面会を終えて世の中へと戻っていくその背中が忘れられない。本来ならば整列して牢獄へと帰っていく囚人の後ろ姿こそが似合う場面だったはずだ。しかしあの瞬間にあえてこちら側を映し出すという趣向。世界は“あの時”、スイッチしたわけではなかった。あちら側とこちら側とはまるで天秤にかけられたかのように同質で、あの時、観客はそのことに深く気づかされたのだ。

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2012/12/17

【興行】北米週末TOP10 Dec14-16

先週までの復習は各自こちらにて行ってください。

【Dec14-16 weekend 推計

01 The Hobbit An Unexpected Journey 84.7M
02 Rise of the Guardians $7.4M
03 Lincoln  $7.2M
 
04 007 Skyfall  $7.0M
05 Life of Pie $5.4M
06 The Twilight Saga Breaking Dawn Part2  $5.1M
07 Wreck It Ralph $3.27M
08 Playing for Keeps $3.24
M
09 Red Dawn $2.4M
10 Silver linings Playbook $2.0M

■アメリカをはじめ世界中で『ホビット』が時の声を上げた。北米興収では12月公開作品としては史上最高となる8478万ドルを記録。この数字を手放しで賞賛する人もいる一方、期待を超えるレベルではないと切り捨てる人もいるようだ。4000館を超える劇場数で封切られた本作は、あの『ロード・オブ・ザ・リング』3部作の前日譚。当初は『パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロが監督を務める予定だったが、制作会社MGMの財政再建に伴い製作が遅れに遅れてしまったことから作品を離脱。その後、今回はプロデューサーに徹するはずだった『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンが再び監督の座に返り咲くこととなった。さて、まず比較すべきは過去の3部作における数字だろう。各作の北米オープニング週末興収と累計興収は以下のようになる。

・旅の仲間 op4721万ドル/累計3億1336万ドル 
・二つの塔 6200万ドル/3億3979万ドル
・王の帰還 7263万ドル/3億7700万ドル

興収額だけを見れば好調のようにも見えるが、今回は3D作へとグレードアップしていることから、観客動員数(販売チケット枚数)でみると『二つの塔』を下回るようだ。なお、週末興行における3Dスクリーンのシェアは49パーセント。今回は通常の3Dとはまた一味違ったHFR(ハイフレームレイト)というフォーマットとなっており、映像の質感はこれまでの紙芝居タイプの3D体験から、まるで自分がファンタジー世界に身を投じているような臨場感へと激変している。これらの新たな試みもあって、映画ファンの中には市場の反応を観察した上で観るか観まいか決めようとする向きも相当多いものと思われる。

なお、『ホビット』の北米観客層は男性が57パーセント、25歳以上が58パーセント。この時期における公開作は爆発的なオープニング成績を刻むことは少なく、むしろクリスマスから年始にかけて徐々にギアを上げていくという興行推移も多い。これからクリスマスにかけるいかにファミリー層の動員を獲得していけるかが本作の興行明暗を分けるところだろう。

■2位には"Rise of the Guardians"週末興収は740万ドルとほとんど勢力を保っていない状態ではあるものの、他作品が軒並みランキング順位を落としていく中で下落率の低い本作がそのまま踏みとどまった状況だ。先週末に比べて下落率は29パーセントという驚異的な下げ止まりだ。もともと評価は高かったものの、イマイチ市場の良好な反応に恵まれなかった本作に今少しだけ光が当たってきたという状況か。現在までの累計興収は7140万ドル。この先、どれくらいまで足腰踏ん張れるのか注目したいところだ。

■3位はスピルバーグ監督作"Lincoln"。こちらも下落率は19パーセントという驚異的な下げ止まりを達成。先日発表されたゴールデン・グローブ賞の効果と見ることもできるだろう。累計興収は1億790万ドル。『007 スカイフォール』は累計興収を2億7240万ドルとした。アン・リー監督の3D大作"Life of Pi"は5位にとどまった。累計興収は6960万ドル。

■10位に再び浮上してきたのは"Silver Linings Playbook"(世界にひとつのプレイブック)。ゴールデン・グローブ賞候補作としても注目を集める本作は先週と変わらず370館レベルでの上映が続く。累計興収は1700万ドルほど。これからアカデミー賞の発表まで、長距離ランナーとしてどのような息継ぎで興行展開していけるのか配給&興行によるマーケティングと時勢を見計らってのスクリーン数の匙加減とが大きな鍵を握ってくることだろう。

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2012/12/10

【興行】北米週末TOP10 Dec07-09

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【Dec07-09 weekend 推計

01 007 Skyfall 11.0M
02 Rise of the Guardians  $10.5M
03 Twilight Saga: Breaking Dawn2  $9.2M
 
04 Lincoln  $9.1M
05 Life of Pi $8.3M
06 Playing for Keeps $6.0M
07 Wreck It Ralph $4.9M
08 Red Dawn $4.2M
09 Flight $3.1M
10 Killing Them Softly $2.7M

007■世界が『ホビット』の公開を待ちわびる中、米週末ボックスオフィスは嵐の前の静けさと化した(2012年で3番目の低調ぶりだそうだ)。全作品が数字の伸び悩みに陥る中、結果的に首位に収まったのは公開5週目となる『007 スカイフォール』だった。週末興収面ではもうほとんど余力が残っていないが、それでもトータル興収は2億6160万ドル(『アメイジング・スパイダーマン』の米興収とほぼ同じ額)にまで達しており、果たして3億ドルに達するのか否かがポイントとなることだろう。ちなみにダニエル・クレイグ版ボンド各作品の興収は以下のとおり。

・カジノ・ロワイヤル1億6745万ドル
・慰めの報酬 1億6840万ドル

■2位にはこれまでイマイチ元気のなかったアニメーション作品"Rise of the Guardians"が3週目にして迫り上がってきた。現在までの累計興収は6190万ドル。先週末に比べて下落率が20%台というのはかなりの下げ止まりが働いている証拠。だが、国内だけで制作費の1億4500万ドルをカバーするのは無理難題か。

■3週連続1位をキープし続けてきた"Breaking Dawn Part2"は3位へ下落。累計興収は2億6800万ドル。制作費は1億2000万ドルとのこと。ちなみにこちらもシリーズ各作品の米興行をまとめるとこうなる。

・トワイライト 1億9277万ドル
・ニュームーン 2億9662万ドル
・エクリプス 3億ドル
・ブレーキング・ドーンPart1 2億8129万ドル

■スティーヴン・スピルバーグ監督が米国で最も名高い偉人の伝記に挑んだ"Lincoln"は4位となった。現在までの賞レースではダニエル・デイ・ルイスが男優賞を受賞するなどの健闘ぶりを見せている本作。累計興収は9730万ドル。スピルバーグ作品としてはかなり早いピッチでの1億ドル超えとになりそうだ。

■アン・リー監督の3D大作"Life of Pi"は5位に収まった。先週末からの下落率は32パーセント程度。トップ10作品の中で唯一スクリーン数を増やしており、興行側がいまだ潜在能力を推し量っているような状況か。何よりも本作はキャストをあえて無名の俳優らで網羅するなどの野心的な試みが際立っており、これらがどのように観客側へ浸透し、クオリティに見合った興収結果を実らせられるか注目したいところだ。今のところ専門家筋の作品評価は高く、これから始まる賞レースにて各部門に絡んでくれば、今後少しずつ興収を伸ばしていけるだろう。現在までの累計興収6092万ドル。制作費は1億2000万ドル。

なお、この『ライフ・オブ・パイ』は現在、アジアでの興行が順調で、特に中国では『ダークナイト・ライジング』や 『アメイジング・スパイダーマン』を超える6870万ドルを稼ぎ出しているとか。米興収と海外興収を合わせると、世界興収は1億6660万ドルとなる。

■5位には初登場、ジェラード・バトラー主演のロマンティック・コメディ"Playing for Keeps"。2837館の公開で週末興収は600万ドル。合格ラインとは言い難い数字だ。監督は『幸せのちから』や『7つの贈り物』で知られるガブリエレ・ムッチーノ。

■TOP10が低調な時にはむしろ圏外に注目ポイントがある。今週も相変わらずデヴィッド・O・ラッセル監督作"Silver Linings Playbook"(世界にひとつのプレイブック)が370館レベルでの公開ながらも11位につける健闘ぶりを見せている。アカデミー賞作品賞候補入りも確実視されている本作、おそらく2月後半まで興収推移も長期戦となってくることだろう。

Hyde ■圏外でもう一本、注目作がある。初登場の"Hyde Park on Hudson"だ。ビル・マーレイがルーズベルト大統領に扮する本作は、『英国王のスピーチ』でおなじみのジョージ6世とその妻エリザベスが、英国王としては史上初となる公式訪米を行った際の舞台裏を描いた物語だ。今のところ全米4館のみの限定公開だが、1館あたりのアベレージ興収は2万ドルを超えており、これは現在公開中の劇場作品中で最も高い数値となる。

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2012/12/09

【レビュー】ルビー・スパークス

『ルビー・スパークス』は人間の理想と現実とが持つアンビバンレントな関係性を寓話的、神話的に詰め込んだファンタジーと言えるだろう。新進気鋭にして2作目以降がなかなか書けない若手作家が、あるとき自分の夢に現れた理想の女性を想うあまり、それを文字としてタイプライターで打ち込むと、そこに打ち込んだ内容と全く同じ特性を備えた理想の彼女が立っている・・・という塩梅。

Rubysparks_2 
これは表面的に観ると、ある種の古より受け継がれてきた伝統工芸的なストーリーラインをなぞるものとしてジャンル分けできるのだろうし、はたまたこの映画の主演が実生活でも恋人どうしのポール・ダノ&ゾーイ・カザンによるものだと聞くと、何やら映画俳優らの私生活を覗き込むようで、興味半分、下世話感半分で妙に後ろめたい気持ちを抱え込んでしまう自分がいる。

しかしながら事態はより複雑だ。この物語は彼氏(ポール・ダノ)側が書き手として「理想の彼女」を創造し、またこの映画の脚本自体を彼女(ゾーイ・カザン)本人が執筆しているという点で、もうひとひねりのスウィッチ構造が働いていると言えよう。つまりはこの映画の神様は誰かと問われたときに、それが男性か女性かでは随分と印象が異なってくると思うのだ。この映画では結局、ポール・ダノが映画というステージ上で右往左往するのをゾーイ・カザンが手のひらでコロコロ転がしている図式が成立する。そういう虚構性の中に遊べる創造的な余裕こそが実生活のダノ&カザンの関係性ということか。

ちなみに『ルビー・スパークス』を見ながら『500日のサマー』を思い出す人も多いだろう。こちらは究極的に男性目線の映画だった。『ルビー・スパークス』が理想の彼女像を紡ぎ出すのに対して、『500日のサマー』はまずどこからともなく理想の彼女が舞い降り、去っていき、究極的に彼女が何者だったのかという恋愛の謎を、すべてが過ぎ去った時点から後付けで述懐するという構成。

『ルビー』は創造、『サマー』は述懐。と書けば両者は対立するもののようにも聞こえるが、実は述懐も身に起こったことをそのまま物語ることではなく、そこにはある種の創造性のフィルターが生じていることを忘れてはならない。実際にはサマーも列記とした人間性を持ち合わせたキャラクターであるにもかかわらず、主人公(語り手)の主観フィルター=創造性が働くことによってあえて宇宙人的な女の子として、ガラガラとシャッターを下ろすかのように、何を考えているのか理解できない人物として描かれているわけだ。

話がサマーに偏ってきた。これはあくまでルビーのレビューなのだ。ええと・・・、ルビー、ルビー。このように『ルビー・スパークス』を観ていると、彼氏と彼女、あるいは妻と夫といった愛情関係における理想と現実について視点が集中しがちだ。

けれど、冷静に考えてみて僕らはこの映画の客席に座るにあたって、何よりもあの『リトル・ミス・サンシャイン』のジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス監督が6年ぶりに世に送り出す新作映画という点にこそ期待に胸をふくらませていたはず。僕らの“サンシャイン”となり得たあの少女アビゲイル・ブレスリンもすっかり大きくなり、映画女優としてもどんどん成長して貫禄が備わってきた。しかしながら、ことデイトン&ファリスふたりに関して言えば、6年間も次なる作品が生み出せずにいたことになる。

映画の主人公はここにもいた。初監督作があれほど世界で絶賛されたが故に、次の一歩を踏み出すことに慎重になり過ぎてしまった創り手がここにも存在した。ポール・ダノ演じる若手作家は彼らの分身とも言えるはずだ。

そして『ルビー・スパークス』はデイトン&ヴァレリーの映画監督としての決意表明としても受け取れる。つまり彼らは、自分の創作欲を満たすかのような作品づくりは決してしないのである。創造が先であれ、書くのが先であれ、何か魅力的な題材やキャラクターはあちら側からやってきてくれる。決して赤い靴を履きつぶすまで踊り狂うような真似はしない。主人公とヒロインとが最後に交わす穏やかな邂逅こそが、彼らの映画作りの原点といえるのかもしれない。これまでも、これからも。

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2012/12/06

【NEWS】デップが現代版ドンキホーテをプロデュース

Deadlineによると、ジョニー・デップが現代版ドン・キホーテとも言うべき新作映画を製作すべく、ディズニーと契約を結んだようだ。本作は「オフロでGO!! タイムマシンはジェット式」などで組んだスティーヴ・ピンクとジェフ・モリスが脚本を手がける。ストーリーの全貌はまだ明らかになっていないが、果たしてデップ自身も主演として乗り出すのかどうか気になるところだ。

ジョニー・デップといえば、かつてテリー・ギリアムと共に進めていたドン・キホーテ映画が数々の難問に見舞われ撤退を余儀なくされた経験を持つ。今回の企画に限っていえばテリー・ギリアムはまったくの無関係。

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【NEWS】ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞発表

ナショナル・ボード・オブ・レビューの各賞が発表され、先日のニューヨーク映画批評家協会賞に続きキャスリン・ビグロー監督による『ゼロ・ダーク・サーティ』が作品賞を勝ちとった。まだまだ賞レースは始まったばかりだが、果たしてこの先、ビグローにとって『ハートロッカー』に続くオスカー受賞への道が開けて行くのかどうか注目したいところだ。そして監督賞に関してもニューヨーク批評家協会賞と同じくビグローが受賞。そしてジェシカ・チャステインが主演女優賞を受賞している。同作はネイビーシールズによるオサマビンラディンの追跡計画を描いたもので、ビンラディンの殺害のニュースを受けた後に急遽内容を変え、その最期の瞬間までをも盛り込んだ作品へと方向転換を遂げたことでも話題を呼んだ。そして大統領選の時期においては共和党陣営から政府に対して「この映画の製作にあたって、重大な秘密漏洩が行われているのではないか」と調査を求める声も上がっていたほど内外を騒がせている作品でもある(製作者らはこの疑いについてはっきりと否定している)。米公開は今月の19日。

他部門にも触れておこう。デヴィッド・O・ラッセル監督作 Silver Linings Playbookからはブラッドリー・クーパーが主演男優賞、またラッセル監督自身が脚色賞を獲得。クエンティン・タランティーノ監督作Django Unchainedからは人生初の悪役に挑んだレオナルド・ディカプリオが助演男優賞に輝き、助演女優賞にはこれまであまり評判が聞こえてこなかったComplianceのアン・ドウドが選出されている。

オリジナル脚本賞には『LOOPER』のライアン・ジョンソン(監督/脚本)、長編アニメーション作品賞にはディズニーのWreck It Ralph、映画製作における目覚しい達成を讃えて贈られるSpecial Achielement in Filmmakingにはベン・アフレック監督作『アルゴ』が輝き、外国語映画賞にはミヒャエル・ハネケ監督作『アムール』、新人男優賞にはThe Impossibleのトム・ホランド、新人女優賞にはBeasts of the Southern Wildのクヴェンザネ・ワリス、新人監督賞にも〜Beastsのベン・ザイトリンが選ばれた。

なお、同賞では「今年のトップ・フィルムズ」と称して優秀作品10本も発表されている。リスト入りした作品はこちら。Argo, Beasts of the Southern Wild, Django Unchained, Les Miserables, Lincoln, Looper,The Perks of Being Wallflower,  Promised Land,  Silver Lining Playbook


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2012/12/05

【NEWS】クルーニー監督作にマット・デイモンも仲間入り

『スーパー・チューズデー』にて映画監督としての力量を改めて評価されたジョージ・クルーニー。そんな彼が新たに企画中の主演&監督作"The Monuments Men"に、気心の知れた仲間でもあるマット・デイモンが出演交渉入りしているとDeadlineが伝えている。

本作は第2次大戦中にナチス・ドイツによって略奪されたヨーロッパの歴史的美術品の数々を回収すべく立ち上がった美術品専門家チームの面々の戦いを描いた実話モノ。ほかの兵士たちが命懸けで銃を構える中、彼らはほかでもない美術品の鑑定にこそ命をかけるのである。

キャストは続々と決まっている。現在までに仮確定しているのは、ダニエル・クレイグ、ジャン・デュジャルダン、ケイト・ブランシェット、ビル・マーレイ、ジョン・グッドマン、ヒュー・ボナヴィル、ボブ・バラバンといった面々だ。原作はロバート・M・エドゼル著「ナチ略奪美術品を救え―特殊部隊モニュメンツ・メンの戦争」。脚本はクルーニーと、盟友グラント・へスロヴが手がける。

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【NEWS】アラン・チューリング伝記映画の監督決定

もともとはワーナー・ブラザーズによる製作で、レオナルド・ディカプリオが主演する予定だった"The Imitation Game"の企画がリセットされて数ヶ月。一から出直しとなったこの英国の数学者にして暗号解読者アラン・チューリングの伝記モノに、新たな監督がセットされたようだ。Deadlineによるとその抜擢された人物とは、北欧映画『ヘッドハンター』で世界を驚愕させたモーティン・ティルダムとのこと。

そもそもアラン・チューリングといえば、第2次大戦中、ナチスドイツが展開する暗号機エニグマを打ち破る解読機を発明して、連合国の勝利に大きく貢献した人物。しかしながらその後は同性愛の罪で逮捕され、強制的にホルモン療法を受けるなどの仕打ちを受け、結果的に1954年、青酸カリを塗った毒リンゴを口にして自死したとされている。

2009年にはブラウン首相が、チューリングへの政府の対応を公式に謝罪したことが話題となった。しかしながら彼の功績はむしろ、現在のコンピューターの基礎とも言われる理論を生み出したことに集約されるのだろう。そのこともあって、2012年の6月にはチューリングの生誕100周年を祝してgoogleの検索窓がチューリング仕様にデザイニングされたことが記憶に新しい。またスティーヴ・ジョブズが自社をアップル社と名付けたのも、このチューリングにちなんでのことだったとの説もあるほどだ。

そんな英国の現代史にも、またコンピューターの歴史としても重要な人物について北欧監督がメガホンを取るという流れは、先ごろ英国のお家芸とも言われるスパイ文学「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」を北欧出身のトーマス・アルフレッドソン監督が『裏切りのスパイ』として映画化して絶賛されたことにも共通するものがある。何においても外からの目というものは大切だ。

果たしてティルダム監督はブラックリスト(ハリウッドが注目する未制作の優秀脚本リスト)入りを果たしたこの"The Imitation Game"の脚本をどう作品へと練り上げていくのだろうか。その手腕に期待したい。

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【レビュー】LOOPER

LOOPER、ルーパー。それはある職業のことを指し示す言葉だ。僕らが暮らす現代よりも少しだけ未来で、主人公はルーパーとして生計を立てて生きていた。ある決められた時間に、決められた場所に行く。そこで懐中時計と睨めっこ。時間がきた。懐中時計を閉じてラッパ銃を構える。すると決められた時間ちょうどに、その場に袋を被せられた人間が瞬間移動して現れる。と同時にラッパ銃もズドンと火を吹く。飛び散る血飛沫。下にはビニルシートが敷かれ、後始末も簡単だ。そのまま溶鉱炉に投げ入れるだけ…。

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2012/12/04

【NEWS】ニューヨーク映画批評家賞決定

ニューヨーク映画批評家協会賞が発表され、『ハートロッカー』でオスカー受賞したキャスリン・ビグロー監督の最新作『ゼロ・ダーク・サーティ』が作品賞に輝いた。同作はオサマビンラディンを追跡するネイビーシールズの奮闘を描いたもの。もともとは失敗に終わった作戦の詳細について描く予定だったが、ビンラディン殺害の報を受けてその最後の瞬間までをも盛り込んだ作品へと軌道修正されていった。同作はビグローが監督賞を、クレイグ・フレイザーが撮影賞を受賞している。

また、男優賞にはスピルバーグ監督作『リンカーン』にてタイトルロールを演じたダニエル・デイ=ルイス、女優賞にはThe Deep Blue Seaのレイチェル・ワイズ、助演男優賞にはMagic Mikeのマシュー・マコノヒー、助演女優賞には『リンカーン』のサリー・フィールド。アニメーション作品賞にはティム・バートン監督作『フランケンウィニー』、外国語映画賞にはカンヌ最高賞受賞作でもあるミヒャエル・ハネケ監督作『愛、アムール』。ドキュメンタリー作品賞にはThe Central Park Five、初監督作品賞にはデヴィッド・フランス監督作How to Survive a Plagueがそれぞれ輝いている。


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【NEWS】スパイダーマン2にデーン・デハーン参戦決定

マーク・ウェブが監督を務める『アメイジング・スパイダーマン』の続編に、若手俳優のデーン・デハーンがハリー・オズボーン役で出演することが正式に決まった。この役はサム・ライミ版ではジェームズ・フランコが演じたもの。前シリーズとは大幅に様相を異とする『アメイジング〜』でどんなオズボーンが見られるのかに注目が集まるところだ。

ちなみにデハーンは昨年、低予算で作られた『クロニクル』で一躍脚光を浴びた。ごく普通のティーンエイジャー達がふとした弾みに特殊能力を手にし、とりわけデハーンのキャラクターはダークサイドにはまり込んでいく。こちらでは背中がゾワゾワすりほどの怪演を見せつけた彼だけに、このキャスティングに間違いはないはず。

『アメイジング・スパイダーマン2』は来年の初頭より撮影が始まる。2014年5月2日に米公開予定。今度のメインの敵キャラは、ジェイミー・フォックス演じるエレクトロとなる模様。

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2012/12/03

【興行】北米週末TOP10 Nov30-Dec02

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【Nov30-Dec02 weekend 推計

01 Twilight Saga: Breaking Dawn2 17.4M
02 007 Skyfall $17.0M
03 Lincoln $13.5M
 
04 Rise of the Guardians $13.5M
05 Life of Pi $12.0M
06 Wreck-It Ralph $7.0M
07 Killing Them Softly $7.0M
08 Red Dawn $6.5M
09 Flight $4.5M
10 The Collection $3.4M

Bd2_2  ■感謝祭も過ぎ去り、北米ボックスオフィスは休肝日を迎えているかのようにトーン・ダウン。新作以外はほぼ先週と同じ順序でタイトルが並んだ。ということで、今週も"Breaking Dawn Part2"が首位キープ。先週末に比べて下落率は60パーセントと大きいが、もともとの数字がデカいのでまだまだ余力は残っているようだ。累計興収は2億5460万ドル。製作費は1億2000万ドル。

007 ■公開4週目となる『007 スカイフォール』は2位。下落率は52パーセントとまずまずの下げ止まり感を維持している。こちらは累計2億4600万ドル。このままいけば、最終的には3億ドル突破が目指せるか?いよいよ日本でも封切られた本作だが、みなさんは満足されました?製作費は2億ドル。

■3位のスティーヴン・スピルバーグ監督作"Lincoln"は累計興収8370万ドル。これまでのスピルバーグ作品に比べてかなり堅実な興収推移と言える。本作はオスカー戦線での活躍も期待されていることから、そちらの盛り上がりと共にいずれもうひと波、観客が押し寄せてくることが予想される。製作費は6500万ドル。

■アニメーション"Rise of the Guardians"は先週末に比べて下落率43パーセント。累計は4890万ドル。作品のクオリティ的には批評家受けもよい作品なのだが、どこかターゲットとなるファミリー層をつかみ切れていないような印象も受ける。製作費は1億4500万ドル。これは海外興行でカバーするしか術はない。

■アン・リー監督にる3D大作"Life of Pi"は下落率47パーセント。累計興収は4840万ドル。こちらも批評家受けはかなりのものなのに、米興行的には沈んでしまっている。アジア系俳優ばかりを配したキャスティングによりあまり触手が動いていないのだろうか。しかしながら本作はそれがアン・リーの目論見でもある。「あえて無名のキャストを揃えて、この奇跡の物語を紡ぎたい」として、当初予定されていたトビー・マグワイアの出演も取りやめてしまったといういきさつがある。日本での公開は来年1月。さて、どのような興行展開になるのだろうか。製作費は1億2000万ドル。

■6位の"Wreck It Ralph"(邦題『シュガー・ラッシュ』日本では3月公開)は累計興収1億5800万ドル。製作費1億6500万ドルまであとワン・ダッシュ!

■7位には初登場"Killing Them Softly"。主演ブラッド・ピット、監督アンドリュー・ドミニクという『ジェシー・ジェームズの暗殺』コンビが再び。興行的にはあまり芳しいスタートが迎えられなかった。2400館規模の展開で、興収は700万ドルに留まっている。製作費は1500万ドル。

■8位の"Red Dawn"は下落率54パーセントで累計興収は3100万ドル。製作費は6500万ドルとまだまだ遠い。9位の"Flight"は今週も下落率を40パーセント台に抑えて推移。累計は8100万ドルに達している。製作費は3100万ドル。もう金食い虫のロバート・ゼメキスとは誰からも言われないだろう。実写を手掛ければこれだけ利益が上げられるのだから。

■10位には初登場のR指定スリラー"The Collection"。1400館規模の公開で興収は340万ドルとなった。

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