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2012/12/05

【レビュー】LOOPER

LOOPER、ルーパー。それはある職業のことを指し示す言葉だ。僕らが暮らす現代よりも少しだけ未来で、主人公はルーパーとして生計を立てて生きていた。ある決められた時間に、決められた場所に行く。そこで懐中時計と睨めっこ。時間がきた。懐中時計を閉じてラッパ銃を構える。すると決められた時間ちょうどに、その場に袋を被せられた人間が瞬間移動して現れる。と同時にラッパ銃もズドンと火を吹く。飛び散る血飛沫。下にはビニルシートが敷かれ、後始末も簡単だ。そのまま溶鉱炉に投げ入れるだけ…。

実はこの瞬間移動、30年後の未来から随時送られてくるものだった。裏社会の組織がこの世から抹消したい人間をタイムマシンで強制的に過去へ送り込み、そこで殺しを請け負ったLOOPERが手を下す。この連携プレーによって未来世界では何ら殺しの証拠が残らない。ターゲットはただ忽然と姿を消したことになるわけだ。

しかしながら、あらゆるハードボイルドにおいて、ルーティーンと化した日常はそれを意識した瞬間からいとも簡単に突き崩されていくもの。そのリズムの変異は突如舞い降りた。いつものように主人公が銃を構えていると、そこに現れたのはなんと30年後の自分自身だった。対峙するジョゼフ・ゴードン-レヴィットと見事に剥げ散らかしたブルース・ウィリス。まさに、俺がお前で、お前が俺で!?状態だ。その瞬間、未来の自分(ウィリス)が若かりし自分(レヴィット)に襲いかかり、そのまま逃亡を決め込んだことから、両者は揃って裏組織に追われる存在となる。果たして未来から現れし自分自身の目的とは?そしてこの物語の結末には一体どんな未来が待っているというのか?

Looper

監督のライアン・ジョンソンといえば、同じくゴードン-レヴィットを主人公に起用した『BRICK』で一躍注目を集めた俊英である。『BRICK』ではハードボイルドという重苦しいジャンルをあえて高校生活へとぶち込み、学園を舞台にメガネ姿で冴えない主人公(それでも喧嘩になるとめっぽう強い)が、死んだ恋人にまつわる謎をボロボロになるまで執念深く追い求めていく変わり種だった。

ジャンルのミクスチャーという意味ではルーパーも負けてはいない。今回は何よりもバジェットがデカイこともあり、『ブレードランナー』的なの都市造形に『ターミネーター』や『12モンキーズ』を思わせるタイムトラベル理論を掛け合わせ、なおかつ愛馬ではなく浮遊するバイクでの決闘、西部劇お馴染みの対峙しての撃ち合い、そして最終的には、ちょっと口にするのを控えておきたい更なるとんでもないジャンルが折り重なって融合して行く。

やがてダイナーで語らい始めた二人。ゴードン-レヴィットがウィリスにタイムトラベルについて訊ねる場面が印象的だ。その素朴な質問に対してウィリスは「あ〜!やめてくれ。タイムトラベルに関しては複雑すぎてどれだけ時間があっても足りないくらいだ!」と頭を抱えてしまう。まさにその通り。このレビューだって、粗筋だけでどれだけの文字数を使っているというのだ。その言葉を踏襲するかのように、ここでは複雑なパラドックスは起きないし、どうやら未来は絶対ではなく、自分の力で変えられるらしい。目の前に存在する未来の自分は、固定化された未来ではなく、一つの可能性に過ぎないのだ。

少しずつこんがらがってきたが、つまりはこの複雑な題材を楽しむかのようにライアン・ジョンソンはこの「現在」というフレーム上に「今」と「未来」という抽象的概念を擬人化して抽出し、彼らにとってそれぞれ何が大切なのかを選ばせようとする。二人は同一人物であっても、それぞれに自我を持っている。自分が現時点で経験した人生、そして価値観をフル動員して運命を選びとらなければならない。その巧みな設定には驚嘆すると共に、後半、エミリー・ブラントが登場してからは予想もしなかったツイストが加えられていくことになり、主人公らは未来のために積極的に英雄となることの決意と痛みを身につまされることになる。

このように『LOOPER』はストーリーや世界観を説明するだけでも一苦労だし、ようやく説明してれた時点でその人が興味を持ってくれるかどうかもよくわからない。

しかし私は紛れもなく「映画を観た」という、あなたにとっては未来の側からやってきた人間である。そんな自分のモルモット的な感想をあえてこっそり伝えておくならば、本作は過去に何処かで観たような記憶が混濁していく中に、強烈なオリジナリティでもって未来の可能性を突き付けてくる映画である。悪いこと言わないから、この映画だけはとりあえず見ておいて損はないはずだ、と2度目、3度目を観たであろう自分の分身が、それぞれ未来からそう告げているのが聞こえてくる。


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