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2013/02/22

【予告編】マイケル・ウィンターボトム監督作"Everyday"

イギリスの劇場でマイケル・ウィンターボトム監督の"Everyday"という作品を観た。こちらの民放チャンネル4でオンエアされ、その後、イギリス各地や世界中にて劇場公開されるという不思議な順路をたどって浸透している作品だ。

今回のウィンターボトムは、かつて名タッグを組んでいたマイケル・ナイマンとのコラボレーションを復活させている。それは刑務所に収監された父親と、彼の家族が送る5年にも及ぶ物語。毎朝早起きして面会に行っては帰ってきて、ママはパブで働き、子供たちは学校で元気にはしゃぎ、そしてまた早起きしてバスや電車を乗り継ぎ、父の待つ刑務所に面会へ行っては「パパ、愛してる」と涙ぐむ。

毎日の暮らしのリズムをミニマルに刻んでいく。それがこの映画のスタイル。しかし実はこの映画、撮影にストーリーと同じ5年をかけており、子供たちの成長や親子の絆が劇映画とは割り切れない有機的な果実として現前している。そこにあのマイケル・ナイマンの音楽が加わると、単調な毎日が寄せては返す波のように味わい深いものとなって胸に迫ってくる。僕らもこの家族とともに、5年に及ぶ旅を続けているのだ。それは単調などでは決してなく、一日一日が尊い、エブリデイなのだった。

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2013/02/18

【興行】北米週末TOP10 Feb.15-17

先週までの復習は各自こちらにて行ってください。

【Feb.15-17 weekend 推計

01 A Good Day to Die Hard  $25.0M
02 Identity Thief  $23.4M
03 Safe Haven  $21.4M
 
04 Escape From Planet Earth  $16.0M
05 Warm Bodies $9.0M
06 Beautiful Creatures  $7.5M
07 Side Effects  $6.3M
08 Silver Linings Playbook  $6.0M
09 Hansel and Gretel: Witch Hunters  $3.4M
10 Zero Dark Thirty  $3.1M

私事で恐縮ですが、18日〜25日まで渡英しております。バレンタイン週末となった今回の興行、ご存知ジョン・マクレーンのコテコテアクション大作と女性に巨大なファン層を持つニコラス・スパークス原作映画の直接対決の行方は・・・。結果のみご覧ください。

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2013/02/17

【レビュー】世界にひとつのプレイブック

名匠デヴィッド・O・ラッセルの映画にいつも付き物なのは、ひとつのテーマをめぐる狂騒性と、そして役者どうしの予想もつかない化学変化だ。どんな大俳優であってもラッセル作に引きずり込まれたなら最後、ワークショップを重ねた劇団員のように他の出演者とがっちりスクラムを組まされ、ゴールに向けてのひとつの要素として身を捧げて仕事をこなす。そうやって立ち現れるチームプレーこそが、ラッセル作品の魅力なのだ。その意味で言うと、彼の映画はスポーツに似ているのかもしれない。

今回の『世界にひとつのプレイブック』でもその様子は伝わってくる。おそらく現場は、逆転に向けてヨッシャー!サー!イコー!と気合いを入れるアメフト部員のごとく、最高のテンションを落とさずして撮影が進められていったのだろう。

本作は精神疾患の男女が親交を温め合うという、一歩間違うと道徳的なテーマ性が前に出てしまいがちな題材を、驚くべきナチュラルな語り口でもって調理する。ふたつのパーソナリティの激しくも愛おしいぶつかり合いが、深刻さを撥ね除け、実に軽快に浮上していくのだ。

とはいえ、主役のふたりは奇妙なキャラクターだ。発汗性が良くなるからという理由でランニング時に真っ黒なビニル袋をかぶり、本の結末が気に入らないと深夜に近所迷惑になるほどわめき散らしたりしてしまうブラッドリー・クーパーと、旦那に死なれたことがきっかけで職場の男たちと見境なくベッドをともにしたという爆発女ジェニファー・ローレンス。

ふたりの掛け合いはひとつひとつの台詞がはたして相手の胸にどう突き刺さっているのか先読みを許さず、観ていて非常にスリリング。丁々発止という言葉でも表現しきれない、むしろ“噛み合なさ”が互いの率直すぎる物言いを許容し、逆走的に居心地の良さを醸成していく関係性だ。彼らがラストに向けてダンスを磨いていく過程は、想いが言葉ではなくアクションによって発露され昇華しいくひとつの見せ場として躍動感に富んでいる。

本作では『ザ・ファイター』に引き続き、家族の肖像が際立って描かれる。ボクシングをメインに据えた前作に対して、本作ではダンスとアメフトというふたつのスポーツが組み込まれるが、ひとつ興味深いのは、本作でアメフトの試合シーンが映し出されることは(多分一度も)ないことだ。

そのかわり本作では家族4人を核として、そこに多様な外部要素が組み込まれていくことによって、逐一そのフォーメーションを変え、彼ら自身がプレイブック(作戦図)のコマでもあるかのようにコロコロと有機的に表情を変えてクライマックスへとなだれ込んでいく。なにしろあのロバート・デ・ニーロでさえも、ここでは一選手として集団演技に身を捧げているのだ。

この映画では随所にアメフトの話題を振り撒きながらも、結果的にカメラは試合を映すかのようにしてあのダイナミックな家族の情景を写し取っていた。人生のゲームフィールドはここにあると言わんばかりに。

蛇足ながら、『ハッカビーズ』の頃にラッセル監督にインタビューする機会に恵まれたことがあった。彼は全ての質問に対してとても快活に答えてくれたが、途中でいきなり立ち上がってトイレに行ってしまうなど、本来ならばあり得ない予測不可能な行動を取る人でもあった(そのときに私は作品のプロデューサーとふたりだけで取り残されてしまい、相手も気まずそうだった)けれど、再び戻ってきた彼は、「ロスに来たら事務所に連絡しなよ」と電話番号を書き記してくれたり、またも気さくな一面を見せて場の空気を掴み、私の心をも鷲掴みにしていった。結果的に、その45分ほどの取材時間でさえも、何か台風にでも見舞われたような、ひとつのスポーツの試合がダイナミックに展開したかのようなめまぐるしさに満ちていたのだ。

そしておそらくこれがラッセルの魅力であり、その性格は作品のテイストにもよく現れている。ここ数年、彼の作品がアカデミー賞の常連となった理由には、あたかもスポーツ観戦を観ているかのようなその集団的な勢いこそがハリウッドの連中を魅了しているからであり、スタジオシステムが到達しえなかった新味だからなのだ。『世界にひとつのプレイブック』を観る際にはストーリーと共に、その演技部分にも注目してご覧頂きたい。

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2013/02/15

【レビュー】ゼロ・ダーク・サーティ

これまでの常識で考えれば、この題材、まずはテレビや新聞、ネットメディアの取材班か軍事ジャーナリストなどによる入念なる潜入ルポなどを経て、少しずつ広がり始める運命だったはずだ。しかし今回、何よりも早く真実へと足を踏み出したのは、ほかでもない“映画”だった。それも『ハート・ロッカー』でタッグを組んだ監督キャスリン・ビグローと脚本家マーク・ボールという最強の組み合わせ。

彼らはもともとオサマ・ビンラディン追跡作戦を題材にした作品を構想中だった。その矢先、ご存知のように、オバマ大統領による「ビンラディン殺害」の報が世界中にもたらされた。映画界はすぐさま彼らの動向に注目。ビグロー&ボールはこの機を逃すことなく、2001年9月11日から続いてきた悪夢の終焉を映画としてすべてを描き尽くしたいとして試行錯誤をはじめる。そして『告発のとき』や『ハート・ロッカー』の原作となった雑誌記事で名を馳せたジャーナリストでもあるマーク・ボールが関係者に執念深く取材を重ねたことで、この驚愕のストーリーがその輪郭を現し始めることになった。大統領選の折には共和党陣営から「機密情報のリークが行われたのではないか?」との糾弾の声があがるなど舞台裏でもヒートアップ。

そうしてようやく人前に曝け出された『ゼロ・ダーク・サーティ』は、その硬質な触感と共に、時にヒヤリと鋭利な刃物を突きつけるかのような緊張感を強いる異色作に仕上がった。『ハート・ロッカー』で評価を得た「限定された視座から見つめる戦場」の方程式をここでも大いに応用させ、そこにある“感情”を炎天下のフライパンでカラカラに干からびさせるほどに追い詰め、焦がしていく。

そこで知らされる、この作戦の裏側にひとりの女性分析官の存在があったという事実には衝撃が走る。最初は人権無視の事情聴取に目を背けて頼りなさそうにも見えたヒロインが、やがて仲間を失い、追随するテロを抑えきれず、時間ばかりが無意味に流れ行く中でどんどん焦燥し、目の奥にギラツキを覚え、男社会の中で上司にさえも恫喝しながら、ふいに手にしたほんの一筋の絹糸のごとき覚束ない手がかりを、10年の歳月を重ねながら執念深くたぐり寄せていく。

ヒロインを演じるのは毎年のアカデミー賞の常連と化したジェシカ・チャステイン。彼女と同僚の女性分析官の女の友情がこのミッションに及ぼす精神的な着火の意味合いは非常に大きく、また翻るとこの『ゼロ・ダーク・サーティ』という映画自体が、主演のチャステイン、監督のキャスリン・ビグロー、それに億万長者の娘にして20代にして数々の作家性の強い映画監督たちの作品を支えるパトロン的存在にまでのし上がったミーガン・エリソンといった3人の女性たちによる強力な共闘関係によって織り成された果実であることも忘れてはならない。

また、ヒロインと併走し、バックアップする男優達も巧みな助演ぶりをみせる。その多くは適材適所といった形でチャステインの生息する現場に入れ替わり立ち替わり顔を出しては次にバトンをつなげていく。彼らが入れ替わることによってそれだけの歳月の過ぎ行く早さを表現し、その反面、ずっとそこに生息し続けるヒロインの「変わらなさ」を際立たせる。

サスペンス・アクションだからといって、爽快感などは存在しない。ニュースで聞き慣れた事件や背景であるにもかかわらず、終止何が起こるのか心臓が警戒しっぱなしだった。足が震えた。そしてカメラはラストの不気味な静寂をたたえる真っ白な建物へと、暗視スコープにて足を踏み入れていく。ここに至るまで、執念深く点と線をつないでいった彼女が挑む大博打。映画ゆえの脚色部分が幾らかある可能性を抱えつつも、とにかくニュースが伝えられなかった真実(そうは言っても、本当の意味での客観的な真実に辿り着ける者など誰もいないのだが)に近づける意味において、150分、観て損はないリアル・スリラーとして讃えていいだろう。

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2013/02/14

【レビュー】ダイ・ハード ラスト・デイ

ジョン・マクレーン警部、ロシアへ発つ。これまでアメリカ国内で、しかも捜査管轄外の州にて大事件と遭遇する機会の多かった彼だが、今回はシリーズ初となる海外進出。これは新機軸が望めそうだと誰もが期待に胸を膨らませたことだろう。もしくは観客の中にはそれぞれに「ダイ・ハードとはこうあるべきもの!」とする定義が出来上がっている。評論家や文化人がどうこう評価を下す以前に、誰もが自分の流儀でこの映画について語れる土壌がある。それは映画にとって極めて幸福なこと。でも逆に作り手にとってはプレッシャーでもある。そして本作は、どちらかというとその観客側の期待を違った意味で受け止めてしまったようだ。最も端的な例でいうと、上映時間は90分台。それゆえスナック感覚に終始し語るべきポイントが見つからないし、これまでのシリーズ各作と比較しようもなく、更には定番となる悪役もいない。

過去のシリーズにおける名シーンやプロットをデジャビュのように脚本に取り込んだはいいが、オリジナリティあふれる場面が一向に思い出せないのも問題だ。挙げ句の果てには、いくら80年代のシリーズ誕生時がアメリカ万歳の少々頭のネジの緩んだマッチョイズムの時代であったからといって(映画の潮流は現実世界を鏡面的に映し出すものだが)、本作がクライマックスに突入するステージは、いくら舞台がロシアだからといって、ちょっと冗談では済まされないレベルのものだ。

これを『ダイ・ハード』とは取らずにブルース・ウィリス主演のスナック映画と捉えたらいくらかまだ楽しめたかもしれない。だがこれは20世紀フォックスのファンファーレとともに列記とした商標を身にまとった代物なのであり、世界中に親子2世代、3世代レベルでファンを持つ『ダイ・ハード』なのだ。フレンチのディナーを望んでいるわけではない。夜景を楽しめる優雅なバーをリクエストしているわけでもない。せめて2時間食べ放題で次の日にも胸焼けが残るほどのグルメコースではあるべきだ。その点、本作は一食分パッキングされた機内食でもなく、小腹を満たすスナックの小パックだ。

ジョン・ムーアのアクション描写は勢いの良さを感じる部分もある。ヘリからの機銃掃射の弾道が見える趣向は『エネミーライン』を彷彿とさせる。しかしいかんせん、シークエンスが細切れ過ぎて、たとえばカーアクションでも何が起こっているのか判別しがたい。しかも主人公たち父子の大冒険のせいで多くの犠牲者が生まれているであろう気配が濃厚と伝わってくる。また、ご都合主義がシリーズの常だが、その前に“ご都合”を神の手、あるいは鈴の音とともに響き渡るクリスマス・キャロルのごとく有り難く享受したくなる絶体絶命のシチュエーションが適確に創出されなければ何ら意味を持たないもので終わってしまう。

ロシアで発見された息子との対面はどうなのだろうか。いやその前に、これまでの関係性がどうだったのだろうかよく分からず、あまりに省略している部分が多すぎる。他スタジオが次々に目論んでいるフランチャイズ・スタイルの事業展開のことを考えると、『ダイ・ハード』もその新機軸として息子へとバトンタッチによる多層的ユニバースの形成を狙っているとしか思えない節がある。

とはいえ、僕は観客にこの映画を観るなとは言わない。むしろこの映画をしっかりと観ることによって、我々が『ダイ・ハード』シリーズについて無関心になりつつある潮流を意識しなければと思う。本作に大満足な人もいるだろう。それはそれで良いと思う。でも仮に本作に違和感を覚えたならば、我々は『ダイ・ハード』について、ジョン・マクレーンについてもっと意識的に考えて行くべきなのだ。つまりは我々がこのシリーズに何を望んできたのか、これから何を望むべきなのか、ということについて。その辺をクリアにしておかなければ今後もシリーズはどんどん一口サイズのスナック化されていくに違いない。そしてもしも「何を望むか」の部分が尽きたなら、その時はストーリーの完結など関係なく、それはシリーズの自然死を意味するのだ。

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2013/02/11

【興行】北米週末TOP10 Feb.08-10

先週までの復習は各自こちらにて行ってください。

【Feb.08-10 weekend 推計

01 Identity Thief  $36.6M
02 Warm Bodies  $11.5M
03 Side Effects  $10.0M

04 Silver Linings Playbook  $6.9M
05 Hansel and Gretel: Witch Hunters $5.7M
06 Mama  $4.3M
07 Zero Dark Thirty $4.0M
08 Argo  $2.5M
09 Django Unchained $2.29M
10 Bullet to the Head  $1.98M

■アメリカの北部に嵐が吹き荒れた週末、もちろん全体的なボックスオフィス興行収入は昨年の同時期に比べると50パーセント近くも減少するという、こちらも惨事を迎えた。しかしその中でも首位を獲得した"Identity Thief"に至っては悪天候をものともせず、オープニング3日間で3660万ドルを稼ぎだす好スタート。"Bridesmaids"のメリッサ・マッカーシー主演のこのコメディは"Four Christmases"や"Horrible Bosses"のセス・ゴードン監督にしてもキャリア最高のスタートとなった。もちろんマッカーシーにとっても"Bridesmaids"のオープニング興収2620万ドルを越えるキャリア最高スタート。R指定コメディとしては"Ted"以来となる目覚ましいヒットと言えそうだ。観客層別にみると、58パーセントが女性客、57パーセントが30歳以上とのこと。制作費は3500万ドル。

■先週首位だった"Warm Bodies"は先週末に比べて44パーセント減の1150万ドルにとどまった。10日間の累計興収は3670万ドル。3位にはスティーヴン・ソダーバーグ監督によるサイコロジカル・スリラー"Side Effects"が収まった。これまで米興収で負け知らずと言われてきたチャニング・テイタムだったが、遂に泥がつく結果に。観客層は63パーセントが女性、25歳以上が85パーセントを占めたとのこと。

■4位の"Silver Linings Playbook"はついに累計興収が9000万ドルに達した。オスカー授賞式までに1億ドル突破なるか。

■8位には再び"Argo"が上がってきた。そろそろアメリカではDVDも発売されようとしている本作だが、その宣伝効果を狙ってか、あるいはオスカー戦線に向けてのダメ押しの一手か、劇場数は1405館に増加され、累計興行収入は1億2370万ドルに達している。

■また今週は"Top Gun 3D"なども封切られているが、ランキング的には11位どまりだった。劇場数的には300館を擁立しており、1館あたりのアベレージは6333ドルとなかなかの高稼働を見せている。

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2013/02/04

【興行】北米週末TOP10 Feb01-03

先週までの復習は各自こちらにて行ってください。

【Feb.01-03 weekend 推計

01 Warm Bodies $19.5M
02 Hansel and Gretel: Witch Hunters $9.2M
03 Silver Linings Playbook  $8.1M

04 Mama  $6.7M
05 Zero Dark Thirty $5.3M
06 Bullet to the Head  $4.5M
07 Parker $3.2M
08 Django Unchained $3.0
M
09 Les Miserables $2.44M
10 Lincoln  $2.41M

■アメリカにおける一大イベント「スーパーボール」にあたる週末は、例年ひとびとがテレビの試合中継に釘づけになり映画興収が激減することで知られている。この時期を支えるのはむしろ女性客。男性がスポーツに夢中になっている間、女性陣はそんなムードに嫌気がさして甘いムードあふれる映画を求めて劇場へと導かれる・・・そんな潮流はいまだ健在なのか、それともとうに都市伝説の域に達しているのか。

ともあれ、週末ボックスオフィスで初登場1位を獲得したのは"Warm Bodies"だった。週末3日間の興収は1950万ドル。これに木曜深夜のスクリーニング興収を足して、累計は2000万ドルをちょっと超えた地点。

Warmbodies
本作の主演は『アバウト・ア・ボーイ』の強烈な子役で知られるニコラス・ホルト。あんなブチャムクレだった彼も『シングルマン』をきっかけに注目株へと成長。今年はブライアン・シンガー監督による超大作『ジャックと天空の巨人』の公開が控えている。ゾンビが美しい少女と恋に落ちる・・・というストーリーラインは、見方によっては『トワイライト』シリーズ好みの女性陣の感性アンテナを意識しているとも思われ、はたまた、もしかすると神以上にロメロを信仰するゾンビ映画の歴史家(単なるゾンビ映画好きの男子っていう意味ですけれど)たちをもターゲットにした内容なのか。

その二つの勢力が劇場で相まみえることほどおぞましい光景はないが、少なくとも数字の上では6割が女性客、そして年齢層においても65パーセントが25歳以下という結果が出ている。監督は『50/50』のジョナサン・レヴィン。

■先週首位の"Hansel and Gretel"は2位へ。先週末に比べての下落率は53パーセントほど。大作系にしてはまずまずの下げ止まりと言えそうだ(それほど高評価のレビューは見かけないのだが)。10日間の累計興収は3450万ドル。制作費5000万ドルまで届くかどうか。

■3位にはいまだ好調ぶりが続く"Silver Linings Playbook"。今年のオスカー有力作でもある本作は先週末に比べて下げ幅がたったの14パーセントという強さを見せつけた。累計興収は8000万ドルに到達している。制作費は2100万ドル。

■ジェシカ・チャステインが主演を張る2作はなおもチャートに悠然と踏みとどまっている。制作費1500万ドル規模の低予算ホラー"Mama"は累計5630万ドルにまで歩を進めた。公開7週目のオスカー候補作"Zero Dark Thirty"は累計7780万ドルに達した。この勢いだと、授賞式に向けてまだまだその先の風景が見れそうだ。制作費は4000万ドル。

■さて、つい先日にはシュワルツェネッガーが久々に単独主演に返り咲いたアクション映画"The Last Stand"が不発に終わって人々を大いに動揺させたばかりだが、今度はシルヴェスタ・スタローンまでもがピンチにはまった模様。かれの新作アクション"Bullet to the Head"は週末3日間で450万ドルしか興収が上げられなかった。本作の観客層は6割が男性、そして25歳以上が81パーセントに昇るとのこと。

オスカー候補という泊のついた作品がひしめき合うこのシーズン、シュワやスタや"Parker"のジェイソン・ステイサムら、いわゆる「消耗品(Expendables)」の称号を持つ申し子たちの純然たるアクション映画は市場からお呼びではないと烙印を押されたかの印象だ。

■その肝心の「オスカー候補」組だが、タランティーノの"Django"が累計1億5千万ドルを突破。日本でも大ヒットを遂げた"Les Miserables"も累計1億4千万ドルを突破。またスピルバーグ監督作にして今あらゆる意味において一番オスカーに近いとも言われる"Lincoln"も1億7千万ドルに達している。

■忘れてはいけないべん・アフレック監督主演作"Argo"は先週の18位から11位へと再びせり上がってきた。累計興収は1億2千万ドルを超えている。

■ちなみに制作費の面では"Django"が1億ドル。『レミゼ』と『リンカーン』は共に6千万ドル級。そして『アルゴ』に至っては4500万ドルというレベル。つまりは映画制作に1億ドル規模の予算をかけるよりは、4千万ドル~6千万ドル(このレベルでも日本映画の基準とは比較にならないくらい巨額だが)にて上質なドラマを描いた方がよっぽど堅実なビジネス展開が可能となるわけだ。少なくとも現時点のアメリカのボックスオフィスにおいては。

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