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2013/04/29

【興行】北米週末TOP10 Apr26-28

先週までの復習は各自こちらにて行ってください。

【Apr.26-28 weekend 推計

01 Pain and Gain  $20.0M
01 Oblivion  $17.4M
03 42  $10.7M
 
04 The Big Wedding  $7.5M
05 The Croods  $6.6
06 G.I.Joe: Retaliation  $3.6M
07 Scary Movie 5
 $3.5M
08 Olympus Has Fallen  $2.8M
09 The Place Beyond the Pines  $2.7M
10 Jurassic Park 3D  $2.3M

■話題の超大作がアメリカに先駆けて世界各地で封切りを迎えるケースが増えてる。トム・クルーズ主演の『オブリビオン』に続いては『アイアンマン3』もそのパターンを踏襲。すでに世界興収1億9530万ドルを稼ぎ出している中、全米での公開はあと1週、お預けとなる。

■その代わりに今週の首位を奪取したのは、『アルマゲドン』や『トランスフォーマー』で知られるマイケル・ベイ監督が手がけた、いつもに比べると比較的低予算(制作費2000万ドル)な一作"Pain and Gain"だ。主演はマーク・ウォルバーグと“ザ・ロック様”ことドウェイン・ジョンソン。ことジョンソンに関していえば、2013年は2月に"Snitch"、3月に"G.I.Joe 2"、4月に本作、そして5月には"Fast & Furious 6"こと『ワイルドスピード』最新作の米公開も待ち構えている。かなりの収穫の年といって良いだろう。 話が逸れたが"Pain and Gain"の話だ。出口調査によると49パーセントが女性。年齢別では25歳以上が63パーセントを占めている。ともあれ、マイケル・ベイにとっては『トランスフォーマー4』へと突入する前にやっておきたかった企画、ということになるのだろう。

■2位の"Oblivion"は先週末比53パーセント下落。累計興収は6500万ドルほどに達しているが、果たして最終的な数字が制作費の1億2000万ドルを越えられるか否かは見通しがついていない状況だ。 ■ベースボール映画"42"は依然としてやや下げ止まりが働き、下落率は40パーセント未満に留まっている。累計興収は7000万ドル越え間近。

■初登場のコメディ"The Big Wedding"は名優ロバート・デ・ニーロを擁しながらも振るわず。観客層は女性客が77パーセントと圧倒。また30パーセント以上が30歳以上、という数字も出ている。

■ジェラルド・バトラー主演の"Olympus Has Fallen"は、通常だと毎週末ごとに50パーセント下落→そのまた50パーセント下落といった具合にダウンしていくところを、常に下落ペースが30パーセント台をキープしている。累計興収は9300万ドル。1億ドルまで、あと一息。

■"The Place Beyond the Pines"は1位に比べて半分ほどの上映館数(1500館レベル)にも関わらずこの順位。制作費1500万ドルを僅かに越えて、現在までの累計興収は1600万ドル。

■11位には昨年のカンヌ映画祭のコンペ部門に出品された"Mud"が登場。作品のタイプからして徐々に拡げていくのかと思いきや、いきなり360館レベルで封切り。これからどこまで人気を伸ばして拡大公開を迎えていけるのか注視したいところだ。なお、今週最も1館あたりのアベレージが高かったのは"Kon-Tiki"の1万1千150ドル。こちらは全米2館のみで封切られている。 

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2013/04/23

【レビュー】リンカーン

 アカデミー賞授賞式前にこの映画を3度観ることができた。1度目は試写で、2度目は国際線の飛行機の中、3度目はイギリスの劇場で。そんなわけもあって『リンカーン』を観ながらなぜかシェイクスピアのことを考え、そしてやや変則的な迂回を経てアメリカという国に想いを馳せた。というのも、恐らくリンカーンはある意味、イギリスにおけるシェイクスピアのような地位にあるのではないかと思ったからだ。

Lincoln01  
 
イギリスで最も有名な言葉の引用といえば、文学作品、とりわけシェイクスピア作品を出典とすることが多い。それらの常套句を引っ張りだせば貫禄がつくし、威厳もたっぷり醸し出せる。それをアメリカに置き換えると? もちろん戯曲にも小説にも、それからハリウッド映画にだって有名な言葉は散りばめられているが、こと政治家たちの、とりわけこのリンカーンの口から発せられた「人民の、人民による、人民のための〜」ほどに有名な台詞は他に存在しないのではないか。

 リンカーンや、ケネディや、キング牧師、それにバラク・オバマ。きっとこの国では政治家たちの力強い言葉がシェイクスピアの代わりを果たし、その言葉ひとつひとつが生命を持って後世に伝えられていくのだ。 

 ともあれ、エイブラハム・リンカーンについて描くという作業は、言わばよく知られた歌詞に独自のメロディーを付けるようなものだ。思えば現代の誰もが彼の肉声を知らない。リンカーンという誰もが知る言葉があったときに、その立体的な人物像を交響曲仕立てに作曲するのはスピルバーグと主演のダニエル・デイ・ルイスの仕事なのだ。 

 そのスピルバーグが、アメリカ国民に向け新たな教科書を編纂するかのような勢いで描く『リンカーン』は、米国史で最も名高い偉人が初めて顔を出す瞬間に際しても、観客をじらしながら、背後から、身体の部位からと、徐々に捉えていく。

Lincoln02  
 
ここは夜の北軍本陣。リンカーンのもとに兵士らが戦況報告に訪れ、その様子に穏やかに耳を傾けるリンカーンの姿がある。そして相手の発言が終わってから、ついにリンカーンの「声」が我々の前に降臨する。それは穏やかで、やや甲高い声色を持たせた声だった。この声色が『リンカーン』の基調となり2時間半を貫き通す。時には力強く、そして時には慈愛に満ちた響きと成って観客を包み込むのである。 

 だが思いがけない仕掛けもある。早くも冒頭で名セリフ「人民の、人民による、人民のための」が飛び出すとき、その言葉はリンカーン自身の口ではなく、なんと黒人兵士によって語られるのだ。 

 同様のことが後半にも起こる。リンカーンが党内の急進派を懐柔し、さらにはロビイストを使って民主党の落選議員たちに次の仕事を斡旋しながら票集めに奔走してなんとか勝ち取った「アメリカ合衆国憲法修正第13条」。実質上の奴隷制度廃止を決定づけたその原文を口に出して音読するのは、他でもない黒人の女性であった。

Lincoln03  
 
「語られる言葉」がそこにはあった。シェイクスピアと同じく、リンカーンは語られる言葉を数多く発した人であった。そしてこの題材を12年間も温め続けてきたスピルバーグは、かの有名な言葉を「語り手」の口ではなく、むしろ「受け手」の口に発せさせることによって、そこに鏡面性を生じさせたのだった。 

 言葉は「相手」が存在してこそ、初めて輝きを獲得する。そこには心を込めてしたためられた手紙が、その場でしっかりと相手に届いている構図が出現している。 

 『リンカーン』はスピルバーグが久々に放つ「大人のための映画」だと人は言う。しかし小難しい政治過程さえ差っ引けば、これは実に単純明快な話だ。それこそ小学生にでも分かる「誰かに想いを伝える」映画。そして受け取った人ひとりひとりに「そう、あなたこそが主人公なのですよ」と伝える映画なのだ。

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2013/04/22

【興行】北米週末TOP10 Apr19-21

先週までの復習は各自こちらにて行ってください。

【Apr.19-21 weekend 推計

01 Oblivion  $38.1M
01 42  $18.0M
03 The Croods  $9.5M

04 Scary Movie5  $6.3M
05 G.I. Joe: Retaliation  $5.8
06 The Place Beyond the Pines  $4.7M
07
Olympus Has Fallen  $4.5M
08 Evil Dead  $4.1M
09 Jurassic Park 3D  $4.0M
10 Oz The Great and  Powerful  $3.0M

■長かった一週間がようやく過ぎ去った。ボストンで発生した爆破テロ、肥料工場の大爆破、そして劇的なテロ容疑者の追跡劇に至るまで、まさに9.11以来となる激動と慟哭の日々が続いたアメリカ。映画があくまで“絵空事”として描いて来た事象が実際に目の前の現実として提示されると、それはただ単に嫌悪感に満ちた深傷であり、痛みであり、あるいは吐き気や嘔吐でしかないことに気づかされる。

■さて、ようやく平穏を取り戻しつつあるアメリカに新たな週末がやってきた。トム・クルーズ主演のSF超大作"Oblivion"が公開されることもあり、俳優としての価値が乱高下を繰り返すトムの新たな試金石ともあって注目されたボックスオフィス。やはりテロの影響もあってか前年の同時期に比べて全体の興収が19パーセント下落するという状況の中、"Oblivion"は楽々と初登場1位の座を獲得。そのオープニング3日間の累計興収は3820万ドルに昇った。

■出口調査によると、男女比では男性が57パーセントとリード。また25歳以上の観客は全体の74パーセントを占めた。制作費は1億2000万ドル。

■2位には先週の覇者"42"。ベースボール映画として史上最高の出だしを飾った先週末に比べて下落率は34パーセント。これはかなりの下げ止まりと言える(通常は50パーセントほど落ちる)。10日間の累計興収は5400万ドルに達している。

■ドリームワークスのアニメ作品"The Croods"は相変わらず順調に推移を続け(先週比で僅か28パーセントの下落)、累計興収を1億5490万ドルとした。"Scary Movie5"は56パーセント下落で、累計は2290万ドル。

■"G.I. Joe: Retaliation"は累計を1億1120万ドルとした。アメリカ国外ではすでにこの2倍の興収を稼いでおり、海外売り上げに依存した興行展開となっている。制作費は1億3000万ドル。ちなみに第1作目の米興収は1億5000万ドルで、米と海外との興収比はほぼ同格だった(1億5000万ドル+1億5000万ドルで、世界興収は3億ドルほどに昇った)。

■ライアン・ゴズリングとブラッドリー・クーパー主演の"The Place Beyond the Pines"は先週末に比べて1000館以上をプラスして、1500館規模での興行展開に発展している。ランキングも先週の10位から6位にまで浮上。この先どうやって上位に攻め込んでいくのか期待がかかる。

■"Olympus Has Fallen"も相変わらず下げ幅少なめ(先週末比37.8パーセント減)に堅実な興行が続く。累計は8880万ドル。制作費は7000万ドル。

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2013/04/15

【興行】北米週末TOP10 Apr.12-14

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【Apr.12-14 weekend 推計

01 42 $27.3M
01 Scary Movie 5  $15.2M
03 The Croods  $13.2M
 
04 G.I. Joe: Retaliation  $10.8M
05 Evil Dead  $9.5
06 Jurassic Park 3D  $8.8M
07 Olympus Has Fallen $7.3M
08 Oz The Great and Powerful  $4.9M
09 Tyler Perry's Temptation  $4.5M
10 The Place Beyond the Pines  $4.0M

42 ■近代メジャーリーグが整備された後の初めての黒人選手として1940~50年代ブルックリン・ドジャースで活躍した伝説的選手ジャッキー・ロビンソンの半生に焦点を当てた映画"42"が登場。オープニング3日間の興収は推計2730万ドルに昇る。野球映画としてはブラッド・ピット主演の『マネーボール』が興収1950万ドル(最終的には7560万ドル)の出だしだったので、それと比較してもまさにバッドの芯を捉えた当たりと言える。

■ハリソン・フォードが顔を出している他は特に有名スターを擁しているわけでもなく(主演はTVドラマを中心に出演を重ねてきたチャドウィック・ボーズマン)、制作費も3800万ドルと比較的低予算ながらも口コミで高い評価が広がって、ポスターデザインでスライディングするロビンソンのごとく初登場1位の座を奪取(彼は過去2回、盗塁王にも輝いている)。言うまでもなくタイトルはロビンソンの背番号に由来。

■監督を務めるのは脚本家としても名高いブライアン・ヘルゲランド(『L.A.コンフィデンシャル』『マイ・ボディガード』『グリーンゾーン』『ミスティック・リバー』などの脚本)。監督としての登板は『ペイバック』『ROCK YOU!』『悪霊喰』に続く4作目か。出口調査によると、男女比では女性が52パーセントと若干のリード。年代別では25歳以上が84パーセントと圧倒的な差を見せつけている。

Scary_2  ■2位もまた新作である。お馴染みのコメディシリーズの最新作"Scary Movie 5"が降臨。とはいえ前作からは7年ぶりのご無沙汰。かつては大人気を誇ったこのパロディムービーもオープニング3日間の興収は1510万ドルとやや寂しい結果に(4作目に比べると37パーセントにしか満たない)

■3位はドリームワークスのアニメ映画"The Croods"が粘りを見せている。先週末に比べての下落率は36パーセント代。累計興収は制作費を1000万ドルほど上回り、1億4252万ドル。"G.I. Joe: Retaliation"は3週目にして1億ドルを突破。本作も撮り直しや3D変換などで費用を要しているがその制作費1億3000万ドルの回収は堅いところだろう。

■2週目の"Evil Dead"はジャンル物の悲しい宿命として先週末に比べて63パーセントのダウン。それでも制作費1700万ドルに対して累計興収は4100万ドルに達している。4週目の"Olympus Has Fallen"は常々口コミの広がりが指摘されており、数字だけ見ても先週末比28パーセントと下げ止まりが効いている。累計興収は8189万ドル。制作費の7000万ドルを越えて、1億ドルの大台を狙えるか。8位の"OZ"も公開6週目にして制作費の2億1500万ドルを米国だけで回収することに成功。

Pines ■10位にはライアン・ゴズリングとブラッドリー・クーパー競演の"The Place Beyond the Pines"が競り上がってきた。先週末に比べて劇場数が500館近く増加され、これまで様子見だった興行が今後どのように展開していくのか気になるところだ。同作は『ブルー・バレンタイン』の主演&監督が再びタッグを組んだ極めて意欲的なヒューマンドラマに仕上がっている。

■さて今週末には米国でも"Oblivion"が封切られる。トム・クルーズ主演のSF超大作という触れ込みは未だ国内で訴求力を持つのかどうか。作品自体は評価を得ながらも興行的に不発に終わった"Jack Reacher"の悪夢も残る中、トムの真価が問われる作品となりそうだ。

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2013/04/08

【興行】北米週末TOP10 Apr05-07

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【Apr.05-07 weekend 推計

01 Evil Dead  $26.0M
01 G.I.Joe: Retaliation  $21.1M
03 The Croods  $21.1M
 
04 Jurassic Park 3D  $18.2M
05 Olympus Has Fallen  $10.0M
06 Tyler Perry's Temptation  $10.0M
07 Oz The Great and Powerful  $8.1M
08 The Host  $5.2M
09 The Call  $3.5M
10 Admission  $2.0M

Evil_dead ■"OZ The Great and Powerful"も好調なサム・ライミ監督による伝説的作品『死霊のはらわた』が2013年にリメイクして再降臨。その新作"Evil Dead"が初登場NO.1にてデビューを果たした。制作費1700万ドルという低予算ながら、オープニング3日間だけで興収は2600万ドルを突破。極めて効率的な稼ぎ方をしている。

今作ではサム・ライミとブルース・キャンベルはプロデューサーとして参加し、弱冠23歳の南米出身フェデ・アルバレスが監督を手がけている。観客層を紐解くと、56パーセントが男性、そして同じく56パーセントが25歳以上とのこと。

ちなみにアルバレス監督は自身の手がけた5分間の短編作をYouTubeに投稿したところ大絶賛された経歴の持ち主。それがこちらの動画だ。

結局はこれをきっかけに彼はリメイク監督への抜擢、全米NO.1の獲得にまでリンクしていったわけだから、まさにサム・ライミが80年代当時に手にしたようなサクセス・ストーリーを現代流に成し遂げてきたことになる。

■さて、2位と3位は今のところ(推計段階では)"The Croods"と"G.I.Joe"が接戦にもつれ込んでいるようだ。詳しい数字、そして最終的な順位のほどは現地時間の月曜日以降に明らかになる。ちなみに2週目となる"G.I.Joe"は通常ならば大作アクション映画の常として50パーセント以上の下げ幅を記録してもおかしくないはずなので、48パーセント程度に下げ止まっている。同作は現在までに8670万ドルを売り上げており、来週の今頃には1億ドルを突破していることが期待される。"The Croods"の下げ止まり方も目を見張るものがある。なんと先週末に比べて21パーセント減。累計興収は1億2580万ドルに達している。

■4位にはあのスピルバーグ監督が90年代に映像革命を巻き起こした『ジュラシックパーク』が20年の時の流れを祝福して3Dカムバック。初日3日間の興収は1820万ドルほど。そのうちIMAXシアターの興収は32パーセントに昇る。観客層は男性が55パーセント。25パーセント以上が54パーセントとなった。2014年の夏には『ジュラシックパーク4』の公開が予定されており、こちらも期待が高まるところだ。

■5位は公開3週目となるホワイトハウス占拠ムービー"Olympus Has Fallen"。この作品も先週末に比べてたった29パーセントしか下落しておらず、強靭な下げ止まりが働いている。累計興収は制作費とほぼ同額の7100万ドル。

■サム・ライミの"OZ"は7位に落ち着いた。累計興収は2億1200万ドル。制作費の2億1500万ドルをようやく米興収だけで捕まえた格好だ。

Trance■ トップ10圏外では3作品に注目したい。まずは先週の4館からプラス26館の拡大上映を迎えたライアン・ゴズリング&ブラッドリー・クーパー主演の"The Place Beyond the Pines"が13位に上がってきた。これくらいの公開規模だとまだまだトップ10作品(3000=4000館規模)とは比べられないが、1館あたりのアベレージとしては2万3千ドルを上回るなど依然として高稼働を見せている。今週末には450館へと更なる拡大公開が予定されている。 またロバート・レッドフォード監督、主演によるサスペンス"The Company You Keep"が全米5館にて封切られ、こちらは1館あたりのアベレージが3万ドルに迫る勢いを見せている。 そしてオリンピック開会式を経て今や英国が誇る映画監督としての座を揺るぎないものとしたダニー・ボイルの最新作"Trance"が登場。まずは小手始めとなる全米4館の限定公開で、アベレージ3万4千ドルに達している。

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2013/04/05

【レビュー】アントン・コービン 伝説のロック・フォトグラファーの光と影

つい1ヶ月ほど前に英国を訪れた際に、街角のCDショップでオススメDVDとしてピックアップされていたのがこの作品『アントン・コービン 伝説のロック・フォトグラファーの光と影』だった。 このチョイスに、ああ、さすがU2やデペッシュモードのお膝元なだけあって、彼らの伝説造成に大きく寄与した写真家アントン・コービンの存在はこの国で揺るぎないものがあるのだなと感じたものだった。もちろん、コービンといえば『コントロール』や『ラスト・ターゲット』という映画作品でもお馴染み。最近ではジョン・ル・カレ原作の"The Most Wanted Man"の映画化に取り組んでいるとの報も聞かれている。

Anton01
本作はひとりのドキュメンタリストがオランダ出身のこの稀代のロック・フォトグラファーとの4年間に渡る交遊のなかで密着して撮り上げたドキュメンタリーだ。84分に及ぶ上映時間にはその関係性の積み重ねを強調するシーンがこれ見よがしに刻まれているわけではなく、冒頭に映し出されるソファに寝転ぶコービンに代表されるように、そのゆったりとした雰囲気の中で醸成されていくアートへ真向かう意識と、一瞬の心の閃光を見逃さずにキャッチしようとする求道精神とを、あくまで自然体で汲み取った作品だった。

U2のボノは語る。

「我々は究極的に同じなんだ。常に“光”を追い求めている。やり方が違うだけだ。僕らは音楽で、アントンは写真で・・・」

光という言葉には宗教的な側面がつきまとう。ボノの一言がまるでコービンの求道者としての側面をフォローアップしていくかのようだった。コービンは一カ所に留まることなく、常に国から国へと移動しつづけ、旅先では写真に最適の構図やすべてが完璧に調和した光を求めて放浪し続ける。基本的に寡黙で、自我を露にすることに何ら興味がなさそうな彼の姿は、巡礼者のようにも思える瞬間がある。

Anton04
これまであまり語られなかったコービンの過去が興味深い。彼はオランダの牧師の息子として生まれた。両親は常に世界中のあらゆる隣人たちの不幸を背負い込むかのように多忙に追われていたという。その時の思い出について「嫌だった」と語る彼。それはそうだろう。両親の愛情を独占したい時期に、両親の目には全ての隣人たちが平等だったのだから。しかしそれゆえに、コービンは徐々に自分の世界に閉じこもり、自分なりのやり方で世界を見つめる術を習得していったようだ。それが今の彼の成功を形作る原点となった。

すでに名声を獲得したコービンがかつて亡き父に尋ねた質問が印象的だ。

「父さんは僕の仕事のことをどう思ってる」と訊くと、父は「おまえたちみんなのことを誇りに思っているよ」と答えたという。このエピソードを明かしてコービンはちょっと空を見つめる。

この表情をどう受け取るかはひとによって異なるだろう。 僕は、きっとこのときコービンは、父親に褒めてほしかったんだと思う。「良くやったな」とか「お前を誇りに思うよ」とか、そんな言葉だけで充分だった。自分のことを見て欲しかったんだと思う。けれど父は究極的に「おまえたちみんな」として、決して特別視することはなかったのではないだろうか。

ロックミュージック界において伝説的イコンともされるアントン・コービンの作品群が生み出された裏側には、そのような精神性の遍歴があったのだ。

Anton03
U2のボノはこうも語る。

「アントン・コービンによって撮られた自分の写真を見て、アーティストは皆、こんな自分になりたい、と思うんだ」

それはまるで父親がこどもに目指すべき人間像を指し示してくれているかのようでもある。もちろん、コービンにそんな大それた意図などからきし無いのだが、単なる結果論であったとしても、彼の写しとるポートレートにはそんな魔法が、そして光が宿っているのだった。

Anton02
なお、本作には、彼が突如すべての仕事をキャンセルして自分だけの時間を持つ(その間の映像が撮られていないので、恐らくカメラも追い出したんだろう)というくだりが添えられている。

その後、撮影を再開したとき、彼は少しだけ変わっている。これまでずっと孤独を抱えてきたが、これからは少しずつ絆を温め、根を張った関係性を構築して行きたいんだと口にする。これまで自分の外側に光を求めていた彼が、いつしか自分の内側にこそ光を見出さねばと、放浪をやめてその場に立とうとしていた

何が彼をそう変えたのかは分からない(このドキュメンタリーの存在はその答えの一片を担うのだろう)。これから彼の新たな人生のチャプターが幕を開ける。そんな予感に満ちた清々しい表情が印象的だった。

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2013/04/03

【レビュー】ザ・マスター

ポール・トーマス・アンダーソンの映画にヒーローは登場しない。誰もが自分の人生にもがき、格闘し、挙げ句の果てに人間の姿をした怪物へと変貌していく・・・いや、もしかすると“怪物”には至らないのかもしれない。だからこそ僕らはそこに息づくどの人間の生き様にも、あくまで実生活に根ざした人間的尺度のうちに、深く圧倒されてしまうのだろう。

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面白いことに、今作『ザ・マスター』に対して多くの人が「混乱した」と語っている。それは決してネガティブな意味ではなく、賞賛の意味を込めての感想のようだ。

「アンダーソンの新作は、宗教団体サイエントロジーの物語」という噂が流れたのはもう何年前のことだろうか。果たして彼は、トム・クルーズやジョン・トラヴォルタさえも従えるこの伝説的な教祖を、否定して描くのか、それとも慈愛に満ちた救世主として描くのか。完成までにはかなりの困難を要した。資金面の救世主が現れるまでに相当な月日を要した。ようやく完成した本作のふたを開けてみると、確かに宗教的な話ではありながら、一方で荘厳なる驚きが確かな混乱を引き起こした。教祖と信者。従属と支配。集団と個。救済と拒絶。そこに描かれているテーマは誰の人生にも起こりうる実に普遍的なものだった。 しかもその話の流れと来たら、何ら物語的なカタルシスを持つものではない。ふたつの巨大な魂のかたまりが、時に交錯したり距離を近づけたりしながら、最終的には並走を続けそのままフェイドアウトしてしまうという、どこまでいってもふたつの“焦点”なるものに辿り着くことのない位置関係、そして状況こそを提示している。

それゆえ観客の多くが「混乱した」と語るのも無理はない。確かに僕も大いに混乱した。この映画をどう受け止めていいのかわからなかった。でも一方で、誰もが心のどこかで、この映画を見事に着地させているのだ。たとえ「混乱した」という予定不調和的な着地スタイルであったとしても。

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おそらく同じ所業を他の無名監督が行ったならこんな反応は得られなかったろう。そこには恐らく僕らが、ポール・トーマス・アンダーソンという若き巨匠とともにこの混沌とした90年代、00年代を越えて、10年代を生きていることに理由がある。多くの映画ファンは90年代、00年代がそうであったように、10年代も彼と共に生きたいと願っている。彼はそれほどまでに観客による信託を受けた監督。それゆえ「混乱」など許容範囲のうちなのだ。いや、この混沌とした時代にわかりやすい物語など要らない。もっと正直に。もっと混乱させてほしい。それが観客の切実な願いなのではないか。

そしてこれと同じく、アンビバレントな精神を抱えるのが本作の主人公であるふたりだ。自分のテリトリーに異物を抱え込むというスリル。スリルを抱えることによってこそ安定がもたらされ、それはいつしか快楽へと変わっていく。

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『ザ・マスター』はそのタイトルと反転するかのように、でっぷりと太った中年教祖ではなく、むしろ彼に仕えたり仕えなかったりする太平洋戦争帰りの帰還兵ホアキン・フェニックスこそが主人公だ。 彼は戦争中に何らかのトラウマを抱えた様子でもないが、常時アルコールに浸り、暴発しそうなほどの性欲を持て余し、ちゃぶ台をひっくり返す行為が付随サービスでもあるかのように自らの獰猛性を制御する術を見失っている。 それでいて結婚を約束した若い娘に対して連絡を絶つという人間的に不成熟ながらも、意外と共感できなくもない側面さえ併せ持つ。

きっと僕らの「混乱」の要因の8割は、彼の予定不調和ぶりに起因するのだろう。彼のことを無茶苦茶な人間だと思いながらも、一方で、その願望と行動とがどんどん乖離していく人間性を、なぜだか僕らは自分の事のように共感できてしまう。この衝撃によって混乱はことのほか増幅していく。


なおかつアンダーソンは教祖と獰猛な信徒の関係性をラブストーリーのごとく描く(同性愛ではなく、もっと広い人間的な愛の物語という意味で)。ホアキンが調合する危険なアルコールの力も少しは手伝ったのだろう。教祖は彼という異端分子を手元に置きたいと願っている。どうにかして彼を精神的混乱から救い出したいと思っている。ホアキンはホアキンで、目の前にアットホームな集団生活をチラ付かされ、もしかすると婚約して手に入れていた可能性も1ミリほどはあったかもしれない「家族」という幻想に心揺れる。

両者は本能的に相思相愛な仲だ。けれどそうであるがゆえに、最終的に融合することはなく、並走する運命を選んでしまう。ホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンというふたりの怪優らも、結局のところ相手を凌駕し自分色に染めようと激しい演技対決の火花を散らしながらも、最終的にはどちらも微塵も染まることは無く、唯一無二のカラーを寸分たりとも濁すことなく自分の道を歩んでいく。

我々はこの物語にまたもや混乱する。それはこれまで観てきたどのストーリーラインにも集約されないふたりの道程のリアリティを描いているからだ。アンダーソンはこの脚本を少しずつ少しずつ温めていったという。彼は決してプロット先行型ではない。結論など全く想定しないままに、ふたつの対立軸をチェスの駒のように動かして物語を動かしていった。

思えば『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』でも狂信的な牧師と怪物的な主人公の対決は描かれていた。もしかするとふたつの自我の物語は、あのときから既に起動していたのかもしれない。 けれど『ザ・マスター』において両者は肉体的な対決すらも、生命の奪い合いも行わない。そうして作品自体がむしろ、獰猛さと緩慢さと独特のぬめりを帯びた爬虫類的な生き物となり、その特殊な生態を充分にさらけ出したあと、劇的な終幕を迎えぬまま不意に長い舌をヒュルリと延ばし、身を翻して暗闇へとフェイドアウトしていってしまう。その饗宴の中、カメラだけは常に荘厳なまでに冷静な視線を保っているのも特徴的だ

Themaster03

混乱の原因はまだある。物語が進むにつれ、どちらが“マスター”で、どちらが“信者”なのかわからなくなるところだ。互いは互いを強く必要としている。誰かに従属することとはつまり、相手に支配されることでもあり、また同時にその関係性のうちに相手を組み込むことによって逆に支配することでもある。そうやって互いに求め合う作用によって関係性はより強化されていく。そして最終的にここに描かれる男たちは、その関係性を断つという最も強靭な選択肢を採ることになる。そうすることで“あり得たかもしれない未来”を、より重圧の増した心のクサビとして延々と引きずっていくことになると知りながらも。

これはどこにでもある物語で、人は日々、小さな混乱と大きな混乱とに身をさらしながら生きている。気づけばまたあの波が、そして大海を掻き分け進みゆく船がもたらす水のしぶきが60ミリフィルムで撮られた映像を轟音と共に埋め尽くす。人類の史上、幾度も繰り返されてきた混乱と、従属と、支配。その残骸を掻き分けて船が進む。

未来をぼんやりと見つめるかのように、砂の女しか抱けなかったホアキンはうつろな表情を浮かべている。これは一度観た夢なのか、それとも単なる回想なのか。砂場は彼にとっての心のサンクチュアリ。そこから一歩踏み出して、外の世界に触れれば良いじゃないかと歯がゆさが募る。けれど、これはポール・トーマス・アンダーソンが奏でる物語。踏み出すことは彼の担う役目ではない。むしろ観客である我々に委ねられた役目。だからこそ僕らは、不意に突きつけられたホアキン・フェニックスのうつろな目線に、やはり、またしても、どうしようもなく混乱するのだった。

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2013/04/01

【興行】北米週末TOP10 Mar29-31

先週までの復習は各自こちらにて行ってください。

【Mar29-31 weekend 推計

01 G.I.Joe:Retaliation  $41.2M
02 The Croods  $26.5M
03 Tyler Perry's Temptation
$22.3M 
04 Olympus Has Fallen  $14.0M
05 Oz The Great and Powerful  $11.6M
06 The Host  $11.0M
07 The Call  $4.8M
08 Admission  $3.25M
09 Spring Breakers  $2.75M
10 The Incredible Burt Wonderstone  $1.3M

■イースター(復活祭)の到来と共に"G.I. Joe"が帰ってきた。2009年公開の第一作目では世間の酷評を食らったものの、興行的には米国内だけで1億5千万ドルを売り上げ(この時の制作費は1億7500万ドルだった)、なんとか面目を保った本シリーズだが、さすがに世界に名を轟かす有名子供玩具が原作なだけあり、このままでは引き下がれないとしぶとく第2弾が発表となった。

もともとは昨年の6月に公開されるはずだった"G.I. Joe:Retaliation"。スタジオ側の突然の決定により9ヶ月も後退してしまった背後には「テスト試写の反応が良くなかったのでは?」などの声もささやかれたが、紆余曲折を経てようやくのお目見え。週末3日間の興収は4120万ドル。初日となる木曜日の興行分を加えると累計は5170万ドルとなる。観客層は68パーセントが男性、59パーセントが25歳以上。3Dスクリーンのシェアは45パーセントとなった。

■2位にはドリームワークスのアニメーション"The Croods"。興収は先週末よりも39パーセント下落して2650万ドル。累計興収は8860万ドルに達している。

■3位には米黒人層に絶大なる固定ファンを持つタイラー・ペリー監督作"Tyler Perry's Temptation: Confessions of a Marriage Counselor"が登場。興収は2230万ドル。いまどき、ファミリー向けでも鳴りもの入り映画でもシリーズ物でもない作品が2000万ドルを越えてくるのは極めて珍しいことだ。観客層は7割が女性で、8割近くが25歳以上。つまりは今回もペリーの固定ファンが大きく動いたということだ。

■4位には"Olympus Has Fallen"。興収は先週末のデビューに比べて54パーセント下落の1400万ドル。累計は5470万ドルとなった。口コミではなかなかの骨太なクオリティとの評価が浸透している本作だが、1億ドルの壁を突破できるかどうかは微妙なところだ。

■5位にはサム・ライミ監督作"Oz The Great and Powerful"。興収1160万ドルを計上し、これまでの累計を1億9830万ドルとした。今週の早い段階で2億ドルの壁を越えるのは確実。ちなみにそれが叶えば今年初の2億ドル映画ということになる。

■6位には"The Host"が初登場。オープニング興収は1100万ドルにしか満たなかった。原作が「トワイライト」シリーズのステファニー・メイヤーなだけあり、5作品にまたがって大ヒットを飛ばした映画シリーズ同様、今回の新機軸にも期待が高まっていたが、結果的に好ポジションは得られなかった。観客層は78パーセントが女性、25歳以下が6割を占めた。ここのところ同様のティーンエージャー中心の動員を狙った"Beautiful Creatures"なども不発に終わっており、同ジャンルのパワーダウンが囁かれている。

■ハーモニー・コリンの新機軸"Spring Breakers"は3ランクダウンの9位に落ち着いた。先週よりも劇場数は増えているが、興収は43パーセント減。これまでの累計はちょうど1000万ドルを超えたあたり。制作費500万ドルのちょうど2倍にあたる。

■ランク外ではライアン・ゴズリングが『ブルー・バレンタイン』の監督と再びタッグを組んだ"The Place Beyond the Pines"が登場。今のところ全米で4館のみの限定上映ながら、1館あたりのアベレージは6万7千ドルを超えている。これは現在公開中のあらゆる映画の中で単独トップの数字。

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